高校教科「情報」シンポジウム2016 ジョーンめ~えき
パネルディスカッション 「これからの情報入試への期待」 ~教科「情報」の新しいステージに向かって
◆コーディネータ
辰己丈夫先生(放送大学)
◆パネリスト
奥村晴彦先生(三重大学)
加藤和幸先生(金城学院中学校高等学校)
中西渉先生(名古屋高等学校)
角田博保先生(情報処理学会情報入試委員会委員長)
○辰己先生(司会):このパネルディスカッションでは、情報処理学会情報入試委員会委員長の角田先生と奥村先生、高校から加藤先生と中西先生にパネリストとして議論していただきます。高校の現場のお話や、情報入試全国模擬試験の拡大の苦労ということをいろいろな方向からお話ししていただきます。
情報入試全国模試作成はセンター試験がお手本
〇奥村先生:私は、情報入試研究会の全国模試問題の査読的なことをしておりました。
情報入試全国模試の作り方のお手本になっているのが、センター試験の「情報関係基礎」ですが、毎年500~600人ぐらいしか受験しません。これはある意味当然であって、普通科の一般教科「情報」に対応したものではなく、職業高校向きの「情報」の試験です。将来的には、一般教科「情報」に対応したセンター試験ができればとは思っているわけですが。
センター試験の作題、どんな人達が作っているかというのは全く秘密ですが、聞くところによると第一委員会というのが20人ぐらいで、だいたい月に1回、3日ぐらい集まって一生懸命やっておられるといううわさです。次の段階が5人ほどの第二委員会でチェックし、さらに第三委員会などがチェックするらしいですが、とにかくお互い誰がやっているかわからない、アノニマスなレフェリーが多方面から検討し、修正をかけるというのがモデルとなっています。
情報入試研究会の全国模試問題については、もう試験が終わったから、話していいと思いますが(笑)、第一委員会の方が作られた問題が私の方に回って来るので、「これでは答えが複数ある」とかあれこれ文句を言うわけです。センター試験の場合は、それに対していろいろコメントが返ってくるらしいですが、こちらの場合はコメントが返ってこないで、第2回目も全く同じ問題が来るというようなことがあり、本当にフィードバックになっているかどうか、心配だという点がありました。そのあたり、もう少し考えた方がいいのではないかと思いました。
教科情報でぜひ扱いたい数学の課題
〇加藤先生:私の学校は、中高一貫の女子高です。私は2003年度から10年以上「情報」を指導してきました。今年からは中学の担当で、高校の教科「情報」は受け持っておらず、中3でタブレットを使った数学教育に取り組んでいます。
今回は、昨年までの高校の教科「情報」について、定期試験を含めていろいろ苦労した点とそこから感じた「情報入試」の課題についてお話しします。内容としては、n進法の話、整数問題、論理演算、それから最後に中学入試問題についても少し触れてみたいと思います。
まずn進法ですが、本校では高校2年生の「情報」で2進数、10進数を学習していますが、今年のセンター試験の「数ⅠA」に出ているように、数学ではもうn進法は一般化されたもので学習しているのです。
やはり情報で学習させたいのは、16進と2進です。16進は数学ではまず扱いませんし、2進もビット列での扱いが重要です。京都産業大のAO入試では補数を扱っていて、良い問題だと思いました。2進の負の数というのは数学ではやりません。補数の考え方、桁上がり無視なんていうのも数学ではありえない話なので、生徒には新鮮です。
これも今年のセンター試験です。「不定方程式92x+197y=1を満たす整数x、yを求めよ」。数学的な解法では、互除法で197を92で割って、その余りを利用していきますが、こういう問題で生徒が必ずやるのは、xに1を代入する、2を代入、3、4…を代入というものですね。
情報の時間でせっかくプログラミングを学習したので利用したらと生徒にアドバイスし、-1000から1000までx、yをループさせました。実際、92x+197yというのは代入するやり方では求められないので、このようなプログラムを使ってみせると「すごい!」ということになります。
次に論理演算と論理回路です。「1+1=1である」という論理和の話をすると、生徒は「1+1は10(イチゼロ)じゃないですか」と質問してきます。2進数の計算と論理和の話が混乱しているのです。このあたりはていねいに学習させるべきだったと反省しています。
このような0と1問題は、もっと掘り下げると良いと思います。昨年のSFCの参考問題にも良質な論理和・論理積の問題が出題されていて、興味深く思いました。
最後に中学入試に少し触れます。こちらが今の中3生が小6のとき受験した時の本校の中学入試問題です。階段を上る時に、1段ずつ上がるか、2段ずつ上がるか、または1段ずつと2段ずつを混ぜて上がるかという方法があるとしますと。4段目まで上がるには、何通りありますか。4段目まで1、1、1、1で上るのか、2、2で上がるのか、1、2、1で上がるのか…。小6での算数の問題ですから、4段目まではひとつひとつ数えます。これが7段になったらどうするか、というのは考える手順や仕組みからルールを見つけて求めることになります。
実際は、1段目までは1通り、2段目までが2通り、3段目以降は、n段目まで上がるのであれば、n-2段目から2段で最後上がるか、n-1段目から1段で上がるかのどちらかなので順番に足していけばいい。これは「フィボナッチ数列」といって、高2ぐらいで何とかやれると思います。ただこのような題材では、問い方を変えるとアルゴリズムの問題になるのかなと思います。答えだけを計算で出させるのではなくて考え方を問います。数列に関する問題は、先ほど離散数学の話が出ましたが、漸化式のようなものも含めて全て「情報」でのアルゴリズムの問題に置き換えられると思います。
まとめです。やはり「情報」で数理的な考え方の深まりを持たせたい。そのためには「数学」でできないことを情報科学的なアプローチで探したいと思っています。そのためには、よい教材がたくさん必要だと思います。そして将来、「数学」「物理」「情報」の合教科のようなものができていくのではないかと期待しています。
情報で「偏差値60」のイメージはつけられるのか
〇中西先生:本校は私立の男子校です。1学年が12クラス、理系と文系がだいたい7:5の比率で、「情報の科学」を高2で2単位行っています。だいたい教科書に沿って進めていますが、プログラミングだけは自分が好きなので、教科書から外れたことをしています。
情報模試は、昨年の第3回は、学年末テストが終わって2時間空いたので、高2全員にやらせました。今回第4回は、希望者のみにしたら逃げられてしまいました(笑)。ですので、今日は第3回の話をします。
本校は、1学期に「コンピュータとネットワーク」、2学期に「情報社会と問題解決」、そして3学期にプログラミングをやっています。生徒からよく「情報って毎学期やることが全然違うので、試験の時何を勉強していいのかわからなくて困る」などと言われますが、大事なことがいろいろあるのを1つの科目に詰め込んであるので仕方ないと伝えています。
第3回模試と、各学期の定期テストの結果を比較してみましたが、見事に相関がありませんでした。唯一、3学期のプログラミングのところの期末テストと、Aセット第2問の「情報の科学」のプログラミングの内容についてはちょっと相関があるかな、というところですが、散布図を見てもぼんやりしています。
第3問の「社会と情報」の問題で相関が全く出なかったのは、本校が「情報の科学」しかやっていないからと思います。教えたことに関しては差が出るけども、教えなかったことに関しては、知っている範囲で答えているので、あまり差が出なかったのですね。「社会と情報」を教えている学校で、そのあたりがどうだったのかというお話があれば聞きたいと思います。
定期テストでは、彼らは3学期に試験をする頃には、1学期・2学期の内容は正直言って忘れています。ですから、1・2学期にやった内容は相関がなくても当然かもしれません。
受験者の平均を出して、偏差値を一応出してみましたが、数学や英語で偏差値が60といったらどんなことができるかというイメージはありますが、情報に関しては偏差値60がどのくらいの力なのか、ピンと来ないというのが正直なところです。
ですから、模試を受けさせるにしても、一定時間拘束されて解くというのは緊張感があっていいのですが、それ以外のメリットはあるのかというので、勧めにくいというのも正直なところでした。
情報入試全国模試~マークシート方式を導入
〇角田先生:今まで情報入試研究会では、4回模試を作りましたが、ボランティアでこれ以上続けるのは厳しいかなというので、今回組織を変えて委員会にしました。
全国模試を作った時は、1回の模試あたりだいたい1泊2日の合宿を5回くらいして、2日間朝から晩までかかりました。最初は問題出しです。十数人が、「情報の科学」か「社会と情報」から1問、共通部分の小問を1問くらい作って来て、朝から晩まで各自解きながら一問一問じっくり見ていきます。すぐ決めないので、二つか三つ候補に挙げて、だんだん固めていって最終的な形になります。
それを、先ほど奥村先生がお話しされた、いわゆる第二委員会にお渡し、意見をフィードバックしてもらいます。それを次の合宿で順番に見て検討します。さらにそれをもう1回直して、年内には試験の形が完成します。
今回第4回模試では、マークシートを採用しました。それまでは全部手書きの解答でした。例えば2月22日に実施したとすると、この日に受験した100人くらいのデータを基にして、採点基準を作り、それを明文化した後、団体受験の学校にお送りし、採点は学校の方で行ってもらっていました。
どういう解答をしたかというデータが欲しいので、実際の生徒の答案のコピーを送ってもらい、入力していました。マークシートにしてからは、採点の作業はかなり楽になりました。
プログラミングに難易度レベルをつけることの難しさ
〇辰己先生:それでは、最初にパネリスト同士で少しディスカッションをして、フロアで聞いていらっしゃる方々のためにネタ出しをしていただきたいと思います。
〇奥村先生:試験問題を作る上で一つ考えなければいけないのは、どの程度の深さの問題を出すかということです。僕も若い頃14年間高校の数学の教員をしましたが、最初は生徒の考える力を問う問題ばかり出して失敗しました。そういう問題は、試験勉強をしてもしなくてもほとんど点数が変わらないので、生徒の意欲がなくなって、この授業はやってもやらなくても同じだろうとなってしまうのです。前の晩だけでもいいので、ちゃんと教科書を勉強しておけば解ける問題を出せば、確実に勉強時間と成績が比例し、生徒にもやる気も出てきて勉強するようになりました。一方で、入試問題は、本来は一夜漬けの問題ではなく、根源的な能力を見るのが目的だとは思いますが、そのあたりのバランスはよく考えなければなりません。
〇加藤先生:情報での問題は、基本情報処理試験の過去問、そしてセンター試験の「情報関係基礎」に多く存在します。このあたりの問題を新カリキュラムの「情報I」「情報II」に落とし込んで、ドリルみたいな形でやらせるというのがよいと思います。それにプラスして「モデル化とシミュレーション」では、問題解決を探らせるような今までの科目にはない問題を考えたいです。プログラミングは、今後小・中あたりで力を入れると文科省からも出されています。そうなると、関東や関西の有名私立中学の入試の算数で、アルゴリズムを問う問題が出てくるかもしれません。今後ますます世の中でのプログラミングに対する見方が変わってくるでしょう。
〇中西先生:正直「情報」は他の教科に遠慮するところがあって、情報の授業時間内で完結したいと思ってしまいます。だから、家に持ち帰って勉強しなくていいから、その代わり授業中は集中してということにしているわけです。しかし、結局覚えていなくて、試験前にゼロの状態から勉強を始めるようなところがあって、それが辛いですね。
〇角田先生:今のお話ですが、時間内に収まるようにしていると、プログラムを苦労して考えて、ああこうやって動くんだと実感させるのは難しいですよね。本来は、授業中でも家でもずっと考えて、「あ、こうすればいいんだ」って手順を自分で思いつく。それによって初めて、プログラム面白いっていうことになるのが理想ですよね。先ほど奥村先生も言っておられたように、一夜漬けで解けるような問題ばかりだとあまり面白くないので、やはり力がついているかどうかを聞きたい。だから、やはりプログラミングの試験をするというのが、理想なのですが。
全国模試でプログラミングの問題を出す時、どのような形にするかを相当喧々諤々やりました。穴を選択肢から選んで埋める形では、いい加減にやったり、何もわからなくても適当に埋めたりすればできてしまうからダメだ。そこで、「使える単語はこれだけとして、それらをつないでプログラムを構成しなさい」というものを考えました。本当は全部書かせればよいのですが、3000人が自由に書いたプログラムを採点するのは不可能です。選択肢は限られたものだけど、それを組み合わせてどういう手順にしたらよいか頭を使ってよく考えたことがわかる、そこがわれわれは欲しいわけです。そういう能力を見るために、実際に出題した問題の形になりました。
プログラミングはレベルを付けるのがものすごく難しい。「あなたは2までできているよ。3に上がるためにはこの部分をトレーニングすればいいんだよ」と言えればいいのですが、これは今後の研究課題です。
「何を・どこまで出題するのか」の前に「高校ではどこまできちんと学んでいるのか」
〇辰己先生:フロアの皆さんから質問をお受けします。
〇質問者1:情報入試研究会のプログラミングの問題は、1行ずつ分けた選択肢が特徴です。先ほど「プログラムの問題はやったことがなかったけど、やってみたら楽しかった」というお話がありましたが、普通の穴埋めのプログラミングの問題だったら、やったことがなければちんぷんかんぷんで、でたらめに選んだりして、やってみたら楽しいという感想は絶対出なかったと思います。それと比べて、その場で解いているうちにわかってくる、楽しみながら解けるというのは、すごく価値があるだと思います。その辺りについて、現場の先生方はどのように感じられたでしょうか。
〇質問者2:例えば、プログラミングは教科書に載っている以外のことは出せないと言われても、プログラミングというのは、ベーシックな基本ルールを学び、それをいろいろ組み合わせたら基本的には何でもできるわけですよね。だから、教科書にそのものずばりが載っていない問題を出しても許されるように思うのですが、それはダメですか、というのが一つ。それから、プログラムは問題や選択肢を読むのに相当時間がかかると思いますが、記憶だけで20点取れるような問題と、プログラミングのように時間使っても20点しか取れない問題というのは不公平ではないかと思うのですね。配点の時、そういった配慮はされているのでしょうか。プログラミングは、授業の時間だけで理解できる性格のものではないという気がするのですが。
〇質問者3:先ほど今回の模試の問題で、「社会と情報」のある問題の結果が他と違う傾向が出てきて、なぜだろう、という話があったと思います。この模試の作問に関して、「社会と情報」で扱っているような分野の専門の方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
〇質問者4:私は今は大学におりますが、ついこのあいだまで高校の教員をしていました。今大学で1回生を教えてみて、「君、本当に『情報』を受けてきたの」という学生さんによく出会います。
高校までで土台としてどこまできちんと教えて大学に送るのか、あるいは大学に行かない子に対して土台としてのものをどう作るのか。さらにそれからの発展性というところのバランスをどう考えるか。パネリストに高校の先生と大学の先生が2人ずついらっしゃるので、その連携も含めてご意見をいただければと思います。
〇辰己先生:今、いろいろなご質問が来ました。準備はよろしいですか。
〇角田先生:どこまで高校でやるかについては、やはり学習指導要領に従うことになります。学習指導要領に従い、本当にそこまで全部やってきているとすれば、大学はその続きから教えればいいのですが、現実は全然やっていないから問題ですね。
大学が本当に真面目にやるとすれば、アドミッションポリシーで「うちの大学はここまでやってないのは採りません」としっかり宣言し、そういう入試をすればいいのです。現状は、高校で何もやってないという前提で、アドミッションポリシーに情報のことは書かれていない大学がある。だから、高校でどこまで学ぶかというのは、大学がどんなアドミッションポリシーを示すかに拠るのではないかと思います。
「社会と情報」の問題を作る方は、情報処理学会の会員です。社会学の先生ではなく、高校の情報の教科書を書いておられる先生です。社会学の先生に依頼するアイデアはなかったですが、そういう先生でなければ問題を作れないようなものでもないとは思います。
〇辰己先生:プログラミングの配点や時間割り当てについてはいかがでしょう。
〇角田先生:プログラミングの入っているセットAで言えば、第1問、第2問、第3問ほぼ均等で、30点、35点、35点だったと思います。昨年の第3回はプログラムが難しくて、実施後のアンケートでは、かなりの受験者がプログラミングにかけた時間が全体の4割くらいと答えていました。今回は改善して、ほとんど均等になっているようです。作問時には、かかると思われる時間分だけの配点をしようと配慮し、結果的にかなり改善されました。
〇奥村先生:「社会と情報」のセットAの第3問はデータから読み取る問題でしたが、数学のセンター試験などを見ますと、データサイエンス分野が非常に幅をきかせていて、ページ数の半分以上がグラフというような問題が出ていました。そのあたりの分野の人との協力が今後の課題と思います。
大学に来るまでに身に付けてほしいことについては、高校の進路指導にかなり大きな問題がある場合もあると思います。情報科学で何を学ぶかをちゃんと教えていただければ、仮にレベル差があっても、大学に入ってからでも何とか吸収できると思います。とにかく興味さえ持っていただければと考えます。
〇辰己先生:今度は、先ほどの質問の中で高校の教員向けのものにご回答をお願いします。
〇中西先生:高校でどこまでやっておくかは、指導要領に従うのはもちろんであって、教科書を使って授業をする以上、当然だと思います。私が思っているのは、オフィスソフトをどこまで身に付けさせるかはっきりした目安があったらいいなということです。オフィスソフトは、卒業後どんな進路であってもある程度求められますが、授業でそればかりやっているところもあれば、全く扱っていないところもあります。私自身が全然使わないので、どこまでが世間的に困らないレベルなのかが、全然、分からないんですね。
授業でやったことがなかったけど解いてみたら楽しかったという話は、去年の模試でデータベースの問題が出ていましたが、私の授業ではデータベースは教えませんでした。しかし、解いていくとわかってくるようで、それが「楽しんでやれた」ということにつながったと思います。
〇辰己先生:プログラミングは穴埋めではなく短冊の並べ替えでしたが、楽しめていたようでしたか。
〇中西先生:短冊の並べ替えはあの問題が初対面でしたが、結構悩んで書いていました。穴埋めは適当に埋めれば何%かの確率で当たりが出てきますが、短冊ではそれができないので、それなりに考えていたように思います。
〇加藤先生:プログラミングの問題で僕が出題しているのはVBAですが、プログラムを書かせるためには、どうしても短冊か穴埋めになりますね。そのキモになるところのループや、条件分岐のところを出題します。これで理解できているかどうかは評価できると思います。
プログラミングの楽しさについては自分の好きな作品を作るということで体感させます。うちは女子校なので、VBAで「占いゲーム」を作らせています。作っていくうちに、「これを押したときにこう動かしたい」、「これが出たらすぐこれを消したい」など要求が出てきて、その都度「こういう方法があるよ」「こうしたらもっと面白いよ」ということを指導し、できればそれが楽しい、うれしいということになります。
授業の後半で「作品を作る上で、学習していない命令やロジックを使ったらプラス点を付ける」と言うと、生徒は本やネットを使いながら調べ、いろいろ試します。自分の思い通りの動きをするものが完成すれば、生徒は大満足です。
情報での基礎・基本事項が何かということについては、大変難しいと思います。一つの原因は、数学には「親学問」がある程度は高校側にもみえます。例えば「ここで指数関数や対数関数やっておかないと、薬学部や工学部では絶対困る、実験レポートを書けなくなる」などと言えます。情報は「親学問」がクリアに見えないので、私のように情報系の出身でない高校教員には、何が基礎・基本事項がわからないということになります。
小学校のプログラミング必修化、CBT…情報科への高まる期待を受けて
〇辰己先生:最後にパネリストの人からひと言ずついただきます。
〇角田先生:プログラミングは大事なので、どういう問題出せばいいか、どう教えればいいかというのは、問題が山積みです。レベルも、小・中・高といろいろあるので、やることはいっぱいです。皆さん、頑張ってやりましょう。
〇奥村先生:模試と定期試験の比較など、実は教育分野で因果関係の研究というのは、ほとんどきちんとされていません。他の分野では、エビデンス・ベースドな研究が進められているのに、なぜ教育だけがこのような状況なのか、非常に嘆かわしいと思います。ぜひ若い方には、教育の研究をしていただき、情報処理学会では「コンピュータと教育」という査読誌を出しておりますので、投稿していただければと思います。
〇中西先生:情報の授業時間が足らなかったら、授業の枠を超えてやるかやらないかという話です。中には家でやってくる子もいて、その中で一番多いのはプログラミングです。IF、IF、IFの連続でネスト6回とか、やたら汚いプログラム書くんですけども、それで結構楽しんでいます。ただ、うまく指導できていませんが、というところです。
〇加藤先生:教科「情報」は一時もう単なる選択教科で終わるしかないのかという時代がありましたが、最近は様子が変わっています。小・中のプログラミング、新学習指導要領の内容も追い風ですし、新しいテストをCBTでやろうなどとなってくると、情報が一気にメインの教科になるチャンスが訪れたと思います。
将来、プログラム・アルゴリズム学習必修が定着し、大きく入試に入り込んできて、数学と同様な教科まで成長できるのではないかと期待しています。2020年、2023年あたりでもう一度花が咲く時期が来るのかなと期待しています。