report 「Edu×Tech Fes2013」

ITの力で日本の教育を変える!


グローバル、エンターテイメント、リアル各領域の最高峰が集う


中高生のためのITキャンプを中心に、教育界に変革をもたらしつつあるLife is Tech!(代表:水野雄介氏)が、経済界、大学界、現場の先生、そして現役高校生など豪華著名人を招いて「Edu×Tech Fes2013」開催した(2013年5月26日、東京大学本郷キャンパスにて)。

 

今年度のテーマは、「グローバル」、「エンターテイメント」、「リアル」。これら3つの観点から、IT教育の未来を探るイベントだった。経済界からは、ITを牽引している古川享氏(元マイクロソフト初代会長)が登壇。世界的なIT教育の実践者、荻原伸郎氏らも実践を報告。最後には、主催者代表の水野雄介氏から「ITで日本の教育を変えたい」と力強いメッセージが発信された。会場には、ITや教育に関心を持つ社会人、大学生、そして中高生が足を運び、同会場の隣接スペースでは、小中学生がLife is Tech!スタッフのサポート受けながらIT教育の実践を行った。

【第一部:グローバル×Edu×Tech】
古川享 氏 × 外村仁 氏 「脅威のテクノロジー× エデュケーション」
飯吉透 氏        「ウェブで学ぶ-オープンエデュケーションと知の革命」
北川拓也 氏 × Tehu氏  「ハーバード大学卒の天才× 現役灘高校生の天才」

グローバル部門でまず登壇したのは、古川享氏(元マイクロソフト初代会長)、外村仁氏(Evernote Japan会長)。古川氏と外村氏の対談では、グローバルな視点から現在の日本の教育や考え方について言及。大切なのは、プログラミングなどのスキルそれ自体ではなく、それを使ってどんなものをつくって、どんな課題を解決したいのかを考えられることであることを古川氏は強調。

 

また、両氏はデザイン思考についても言及。単なる意匠の能力ではなく、人の望んでいるものをきちんと汲み取り、形作る能力がいまは必要であると述べた。昨今のプレゼンブームについては、単に自己主張をし、相手を説得させるだけでなく、傾聴する能力がある人間の方が、うまく自己主張をできると話した。

 

次に、飯吉透氏(京都大学)は、現在の大学におけるITを活用した教育現場を紹介。2000年代から着実に変化しているアメリカの大学教育を概観し、日本への導入も徐々にはじまっていると語った。

 

続いて登壇した北川拓也氏(ハーバード大学卒)、Tehu氏(灘高校3年)は灘高校の先輩、後輩の関係。すでにグローバルに活躍する新たな世代がこれからの教育を語った。北川氏からは、物事を成し遂げる経験、自分の原体験で想いをITというツールを使って、表現する力が大切であり、Tehu氏はそれを体現していると語った。

 

Tehu氏は音楽のライブを例に、眼の前のオーディエンスを意識することが大切であると述べた。また、自身が学園祭で実施したライブについても、単なる学園祭のコンテンツでも、魅せることにこだわって、感動を追求するだけで、それは人々の心を打ち、イノベーションをもたらす発想に繋がるのではないかと語った。

【第二部:エンターテイメント×Edu×Tech】
住谷栄之資 氏              「教育とエンターテイメントの融合:キッザニア」
馬場章 氏 ×遠藤雅伸 氏 「ゲーム・テクノロジーから教育を変える」

エンターテイメント部門で最初に登壇したのは、住谷栄之資氏(「東京キッザニア」創始者)。住谷氏は、自らが創始した東京キッザニアについての紹介。住谷氏の試みは、Life is Tech!の代表水野氏が会社立ち上げ当初にイメージしていた取り組み。住谷氏の話の後半からは水野氏も登壇、ITに限らず、今求められている子どもたちの職業教育について語った。

 

続いて、馬場章氏(東京大学) と遠藤雅伸氏(モバイル&ゲームスタジオ取締役)の、大学教員、ゲームクリエイターという異色のコラボレート対談。学問としてのゲームが年々変化しており、コミュニケーションとコンテンツ(中身)の関係性について語り、現代ではゲーム的思考がますます重要性を増していると述べた。

 

【第三部:リアル×Edu×Tech】
萩原伸郎 氏   「世界の現場で実践する最先端のICT教育」
品川女子学院 酒井春名先生 / 広尾学園 金子暁先生  

       「学校現場でのICTを活用した授業」
水野雄介 氏  「中高生IT教育プログラム Life is Tech ! IT界のイチローを創る!」

萩原伸郎氏(Kolbe Catholic Collegeディレクター)は、オーストラリアの学校にて、最先端のIT教育の実践を行っている。学校では、Mac bookを一つ生徒は持っており、ITの教育インフラが整備されている。萩原氏は、iPod touch、iPadなどを使った授業を展開したことを紹介。萩原氏がつくりだしたアプリを使用して、生徒が主体的に学習する環境をつくりだしている。キャッチフレーズは「Enjoy Learning」、生徒が楽しむ学習環境を考えないといけないと語った。

 

そして、金子暁先生(広尾学園)、酒井春名先生(品川女子学院)からは、実際の日本の学校現場でのIT教育の実践報告があった。イベント全体で、海外に比べ日本の教育は遅れているのではという雰囲気も出ていたが、お2人からはそのような心配を払拭するような日本の学校教育現場を報告された。

 

「今までのように、教師が上から情報を垂れ流す教育がいいはずはない」と多くの教員が思っていると金子先生。授業だけではなく、クラス活動などの学校生活全般においてITを用いた学び方が可能になる、と実際の子どもたちの活動事例を用いて説明した。

 

品川女子学院の酒井先生からは、キャリアを意識した教育の実践を紹介。「28project」として単にITを取り入れた教育を行うのではなく、28才になるまでの自身のキャリアを考えながら学んでいくような思考をIT技術を用いることで身につけられることを強調した。

 

最後に登壇したのは、Life is Tech!代表の水野氏。「ITで日本の教育を変えたい」と力強いメッセージを来場者に伝え、今後の展望についても語った。IT界のイチローをつくりだすのには、まずはIT教育基盤の裾野を広げることが必要であると強調。

 


場外では小中学生がLife is Tech!スタッフの指導のもと、課題に取り組んでおり、まさに眼の前で未来の教育が繰り広げられ、総合的に、日本の教育が変化している体験ができる一日だった。