センター試験国語で出題『キャラ化する/される子どもたち』筆者、筑波大土井隆義先生、入試を語る

~入試問題では問えなかった、若者と教育をめぐる「宿命主義」

vol.5 やりたいことが見つからない時代 ~選択肢は過剰

2月18日の静岡・知徳高校での学問オーサービジットにて
2月18日の静岡・知徳高校での学問オーサービジットにて

先生ご自身の入試の思い出をお聞きしたいのですが、先生はやりたいことがあって大学を選んでいったのでしょうか。

 

土井先生:私の場合は、社会学という勉強したいことがまずあって、それを学べる大学はどこか、という探し方をしました。しかし、最近の大学の受験の仕方で気になることがあります。

 

最近の特に私立大学の試験方式で、1回受験でどこの学部にいくつ願書を出してもよい、というものがあります。つまり、1回の試験で複数の学部を受験できるわけですが、そうすると、何をやりたくて大学に行くのか、という話になるわけです。どこかの学部に引っかかればいいというのは、要するにどこでもいいわけで、私はすごく違和感があります。

 

まず大学から決めて、そのなかでどの学部に引っかかるか、でしょ。だから、言い換えればキャラ化しているのです。大学というキャラに引っかかればいい。中身は関係ないのですから。

  

オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)
オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)

思いがけないところで、キャラ化が出てきましたね。

 

土井先生:ええ。だからそれは、自分はこれをやりたいからこの大学を選ぶということが、自分では持ちづらい時代なのです。つまり自分は何をやったらいいかがわからないのですよ。

 

これは大学生が就活をしているときにも大きな問題になっていて、かつては「自分はこれになりたいのだけど、でも自分に可能だろうか」と悩みました。例えば、「自分はテレビ局のプロデューサーになりたいのだけど、でも本当に自分はなれるだろうか。あるいは、自分を採用するテレビ局はあるだろうか」というのが、かつての就職の相談だったわけです。今はそうではなくて、「自分は何に向いているでしょうか」という相談に変わってきているのですよ。

 

つまり、自分のやりたいことが自分で決めづらくなってきているのですよね。だからいろいろな会社や職種を受けてみて、それで引っかかったところが自分の向いているところなのだろうと。宿命論なのですよ。自分の生まれ持った資質がそこに引っかかったのだから、きっとそれが自分に合っているのだろうと考えるのです。

  

オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)
オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)

逆に、今は選択肢が過剰にあって、しかもどれもいわばフラットに並んでいるので、どれを選んでも、その選択肢でなければならない絶対的な根拠がないのです。そして、どこか組織に入らない限り宿命が完結しません。ふらふらしているわけにいかないから。フリーターという宿命はちょっと受け入れがたいから余計に辛いのですよ。だから、就活に失敗するとものすごくショックが大きくなるのです。

 

 

◆2016年度 大学入試センター試験 国語

問題

正解

分析<河合塾>

 

◆2015年度 大学入試センター試験 国語

佐々木敦さんの評論文の出た国語問題

正解

高校2年生向けの解説速報講義 動画<河合塾〜菊川智子先生>

分析<河合塾>

 

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ももクロ映画『幕が上がる』を観て

人と人とのつながりこそが、人生の幕を上げる

~日常知としての社会学

⇒本での分析に続いて、実際の行動について「みらいぶプラス」読者の高校生に向けて書いていただきました。

 

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その他、土井先生のこれまでの記事から

 

【みらいぶ・連載】 AKBから読みとく今日の人間関係

第1回 AKBの人気と現代社会

第2回 フラット化する人間関係

第3回 多元化した価値観の交差

第4回 当事者主義の時代の到来

 

【今こそ学問の話をしよう〜東日本大震災 復興と学び 応援プロジェクト】

SAVE IBARAKI~機能停止の大学で学生が起こした奇跡