センター試験国語で出題『キャラ化する/される子どもたち』筆者、筑波大土井隆義先生、入試を語る

~入試問題では問えなかった、若者と教育をめぐる「宿命主義」

vol.6[最終回] 試験前、ホテルで寝られなかった! 

2月18日の静岡・知徳高校での学問オーサービジットにて
2月18日の静岡・知徳高校での学問オーサービジットにて

先生ご自身は試験の当日のことは何か覚えていらっしゃいますか。

 

土井先生:私が受験した、今で言うセンター試験の共通一次試験は、2日間で5教科7科目、朝から晩までびっちり試験があったので、終わった後は頭がジンジンするほどしびれたことを覚えています。それだけ頭を使ったので、へとへとになったのですね。この時の試験会場は山口大学でしたが、高校の仲間と皆で一緒に行って同じ旅館に泊まったので、話もできましたし、多少緊張はしましたが、このあと願書を出す段階で大学を選ぶことができるので、まだ余裕がありました。

 

しかし、家庭の事情もあり、国公立大学しか受けられませんでしたので、二次試験はここで失敗したら後がないと思ったら、本当に緊張しました。社会学が学べる関東の国立大学として、筑波大学を選んだのですが、山口から夜行列車で東京まで来て、土浦のホテルに一人で泊まりました。試験の前の晩は緊張し過ぎてお腹をこわしてしまって、何度もトイレに起き、なかなか寝られなかったことを覚えています。

 

受験勉強で特にこんなことをした、ということがあったら教えてください。

 

土井先生:筑波大学の二次試験は、当時から少し変わっていて、国語と社会と数学で、社会は論述試験でした。なので、社会科の先生に毎週問題を出してもらって、原稿用紙2、3枚ずつ論文を書いて添削してもらうという勉強を1年かけてやりました。

 

こういう訓練は、やはり基礎学力になっていると思います。論述をするということは、まずどういう観点から書くか、自分の立ち位置を決めなければいけません。立ち位置を決めたら、今度はそれに合うように論理を構成して結論に持って行かなければいけないですから。でも、大学に入って勉強をしていて一番役に立ったのは、実はそこではなくて、高校時代に読んだ新書の数々です。

 

先生は、受験のための勉強についてどのようにお考えになりますか。

 

土井先生大学入試にはいろいろ批判があり、推薦やAO入試など様々な方法が採られていますが、大学から言えば、センター試験があることで、学生の学力も保証されているのは明らかです。学生の就職面接でも、一般入試で入ったのか、推薦で入ったのかは、採用する企業にとっては重要な評価のポイントのようで、必ず聞かれるようです。推薦入試は、小論文と面接で見ますが、小論文はなかなか判断できません。そうすると、面接でしゃべるのが、上手な学生を自ずと選ぶことになるのですが、入ってから、学力の問題が出てくるケースもあります。学生を採用する企業は、そこの部分を問うわけです。

 

もちろん考える力も必要ですが、そのベースになる言葉が使えないと考えることもできません。実際に英語で言えば、大学院に進学しない普通の大学生であれば、単語力は大学受験の時がピークです。英語だけでなく、基礎学力は入試の時に一番培われるので、一番やってもらいたいですよね。

 

スポーツでもそうですが、自分の色を出すためには、まず「型」を身に付けなければいけません。その「型」が基礎学力です。そこをきちんとやっておかないと、いくら自分らしさとか、考える力といっても何も育ちませんし、身になりません。だから受験勉強は、そこで勉強しないでいつするのか、というくらいのつもりでするべきだと思いますね。

 

 

◆2016年度 大学入試センター試験 国語

問題

正解

分析<河合塾>

 

◆2015年度 大学入試センター試験 国語

佐々木敦さんの評論文の出た国語問題

正解

高校2年生向けの解説速報講義 動画<河合塾〜菊川智子先生>

分析<河合塾>

 

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ももクロ映画『幕が上がる』を観て

人と人とのつながりこそが、人生の幕を上げる

~日常知としての社会学

⇒本での分析に続いて、実際の行動について「みらいぶプラス」読者の高校生に向けて書いていただきました。

 

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その他、土井先生のこれまでの記事から

 

【みらいぶ・連載】 AKBから読みとく今日の人間関係

第1回 AKBの人気と現代社会

第2回 フラット化する人間関係

第3回 多元化した価値観の交差

第4回 当事者主義の時代の到来

 

【今こそ学問の話をしよう〜東日本大震災 復興と学び 応援プロジェクト】

SAVE IBARAKI~機能停止の大学で学生が起こした奇跡