【授業事例30】
動画制作を通して情報モラルやリテラシーを体得する
~動画「製作」を活用した情報モラル学習~
東京都立三鷹中等教育学校 能城茂雄先生
情報モラル教育はまさに喫緊の課題。でも生徒には他人事…
昨今、ツイッターの炎上や違法ダウンロード、なりすましなど、情報に関する事件や社会問題がいろいろある中で、高校生に情報モラルをきちんと理解させ、身につけさせることはどの学校でも重要です。
また、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画発信も、スマホで誰でも簡単にできてしまいます。そこで、前任校から映像制作をテーマにした授業をして、情報メディアの学習や生徒が自ら問題解決をするということを入れていたので、そこで情報モラルやリテラシーについて生徒に主体的に考えさせることにしたのです。
「CMの模倣」で情報やメディアの本質に迫る!
「CMの模倣」の活動を始めた理由としては、映像制作や情報メディアの学習を通して、私達の見ている情報というのは、加工されていたり、見えていなかったりする世界があるのだ、ということを生徒に教えなければいけない、と思ったことからでした。
この授業は、年末年始をはさんで、2コマ×4週で行いました。情報のディジタル化(2進法、画像・音・文字のディジタル化など)を学んだ後に、実習として、CMの模倣(動画製作演習)を行います。画像・動画の解像度や、色(RGB)や音質、コーデックなどの説明が済んでいる状態での動画製作なので、授業で習った用語や概念を実際の活動で使ってみる、という位置づけです。
音楽や音声は、実際のCMをそのままを使うため、セリフは無く、口パクです。しかし、単に真似るだけではなく、例えば、このCMのポイントはどこなのか、テロップを入れたほうがいいのかなども自分達で考えさせます。テロップの入れ方を聞きに来る生徒には本を貸したり、検索の仕方を教えたりします。そうすると自分達で工夫するようになって、「先生、こうしてもいいですかね?」と持ちかけてきたりしました。
[事前課題]
・CMの選定
・絵コンテの提出
[授業(2コマ連続)]
1週目:サンプル提出
2週目:企画書の作成
3週目:校内で撮影(制服着用)
[宿題]・編集・仕上げ
4週目:上映会
「情報は加工されたものである」ことに気づく
パソコン環境は学校にAdobe Premiere Elements 10がインストールされていたので、Premiereで編集作業を行いました。機材はそれぞれが用意しましたが、動画の形式、パソコンで編集できるかは事前に確認しました。スマートフォンで撮影をしたいという生徒もいましたが、スマートフォン用の三脚がない点と、データを取り出す際に物理的、電子的トラブルの原因になっても困りますので、ビデオカメラ、またはディジタルカメラの動画機能を使って撮影しました。
撮影は、三脚を貸し出し、隣にスマホでCMを見ながら時間を合わせて録っています。そうすると、生徒には画面に映っている風景の外側も見えますよね。だから、ふだん見ている情報は、いかに「不要なもの」がカットされて出来ているのか、実際にはその外側にどれだけ多くの情報があるのか、そういったことが実感できます。また、録画や編集をしていると、データの大きさや記録媒体の容量など、授業で習ったことをおのずと復習することになります。
4コマ漫画の実写化芝居で、情報モラルに関する事件を体験する
こちらは各教科書会社から出ている情報モラル教材を実写化するという展開です。情報モラル教材には、4コマ漫画が掲載されています。
(参考:日本文教出版『見てわかる情報モラル』HPはこちらから)
これを生徒に演じてもらい実写化することで、自分達でストーリーを最初から考えるのではなく、足りない情報を補完することで、情報モラルの勉強になるという効果を見込んでいます。この授業は、2月中旬から3月中旬まで、2コマ×4週程度で行いました。
絵コンテ作りから動画制作まで生徒が主体的に行い、出来上がったものをみんなで見て相互評価しました。自分が関わっていない情報モラルの分野は、友達の作品を見て再学習をすることができました。
反省点としては、いろいろな機能を使うとおもしろいことができることがわかると、生徒達は制作を楽しむ方向に走ってしまい、効果を入れたりなどと凝りだして、時間が長くなってしまいました。この次は、「映像は3分以内にまとめる」「こういう要素が必ず入っていること」「こういうものはNG」などいうルールを明確にしておく必要があると感じました。
実写化の作業では、撮影のために、校庭や校舎内の施設を使いますので、各担当の先生へ事前に、授業内容の説明をして理解と協力をお願いしておくことも不可欠です。
※第62回ICTE情報教育セミナー(2014年5月18日 武蔵大学)ポスターセッション発表