【授業事例7】
実習後の相互評価で、客観的に評価する視点を養う
愛媛県立宇和高等学校 伊関敏之先生
普通科・農業科(生物工学科)から成る総合制高校
愛媛県立宇和高等学校は、「大地と共に心を耕せ」を教育理念とする、普通科・農業科から成る総合制高校です。1学年が普通科2学級と農業科1学級(3年生のみ普通科3学級、農業科1学級)で構成されており、今春は121名の卒業生のうち、42%が大学・短大に進学、31%が各種学校に進学、27%が就職しています。
ワープロ操作を身につけながら「自己表現」の基礎を学ぶ
1年生の「社会と情報」は、2時間連続の授業で行い、実習中心に学習を進めています。教材としては、教師が作ったプリントを主に使っています。
最初は、「ワープロによる自己表現」から入ります。今年度は自分史の作成をテーマに掲げました。保護者等から取材をした内容を基に作文を作り、授業でワープロを使ってまとめ、さらにイラストをつけたりフォントを変えたりして、1枚の作品として完成させる形をとりました。昨年度は集団宿泊研修を終えた直後だったため、研修をテーマに作文を書かせました。
次に、「インターネットによる情報検索」に入ります。例えば、東京ディズニーランドまで行くには、どういう交通手段があり、どれ程度お金がかかるかという調べ学習をさせたりします。最終的には、2年生で行く予定の修学旅行先をテーマに紹介プリントを作る形で、まとめさせています。この2つの実習の合間に、教科書会社制作のDVD映像や、IPA制作の映像コンテンツなどを交えながら、セキュリティや情報収集の注意点について教えることで、1学期を終えます。
CGアニメーションの作成とメールに関する学習
2学期は、動画づくりから入ります。本校ではビデオは使わず、CGアニメーションを作るフリーソフトを使って、3D画像を制作します。合わせてポリゴンデータなどの3Dに関する知識にも少し触れます。このアニメーションを作るときには、カメラ目線で映像を作るので、「視点を変えて見る」ことの重要性も教えています。
2学期の中間からは、メール実習に入ります。ウイルス情報やパケットの意味、メールに関するメカニズムも合わせて勉強します。中高生があまり知らないBCCなどもしっかり教え、「メールの危険性」と「不確実性」を重点的に話しています。それを済ませたら、インターネット実習と教科書、事例を交えた映像などを組み合わせて、著作権や個人情報保護に関する学習をします。これが2学期の中心的な内容となります。
プレゼンテーションソフトでまとめのプレゼン実習
3学期には1年間のまとめとして、班別でプレゼンテーション実習に入ります。自分たちで設計し、発表原稿を作って、発表会をします。相互評価もさせることで、発表態度と聞く態度を養います。
プレゼン実習における教員側の評価対象は、発表時の態度や、どのような相互評価をしているかが主となり、作品の出来そのものはそれほど重視していません。ただし、勉強してきたことがきちんと反映されているか、たとえば著作権に関する情報がきちんと表示されているか等はチェックします。
昨年度のテーマは「学校またはクラス紹介」でしたが、今年はテーマを変更し、より掘り下げて作成できるものにしたいと思っています。過去に一度、テーマをフリーにして自分たちで調べるよう指導したことがありましたが、グループ内のメンバーの意見が合わず、方向性が決まるまでに相当な時間がかかっていました。その経験から、基本テーマは教員が与えたほうがいいと考えています。あとは、それをどういう切り口で紹介していくか、昨年の場合では「時間割や行事、あるいは人物で追っかける等、いろんなパターンがある」とバリエーションを紹介しながら、「同じテーマでも切り口で内容が変わるので、そういったところでオリジナリティを出して」と指導をしました。
相互評価をさせることで自分なりの視点を養う
本校独自の取り組みとして、各実習で作品が完成した後は、相互評価をさせています。最近の生徒は、一般的な「良い・悪い」という評価はすらすらと書けるのですが、自分の意見はきちんと表現せず、周囲に迎合することが多いという傾向があります。情報の授業では、他人の作品を正しく評価する視点を養いながら、「○○だから良い、悪い」という生徒自身の考えを深めさせたいと思っています。
評価の方法は、採点と作品に対するコメントの2つがあり、コメントでは「こうしたらもっとよくなる」とか「この部分がよかった」「自分だったらこうする」といったことを書かせています。採点に関しては、「教師がつけた評価とどれくらいの差があるかがポイントになる」と話し、気分で点数をつけてはいけない、簡単に満点をつけることはその作品の改善点を見つけられなかったということだ、などと注意しています。
また、「批判することと評価することは違う」という点も強調します。文句ばかり言って批判だけをする生徒が、人間関係を難しくしていると思いますので、良い意味で正しく評価し合うことが、成長につながると考えています。毎年、1学期の間は全体的に甘い評価が多いのですが、回数を重ねると、自分なりの視点を持てるようになっています。