研究
新大学生のICTスキルとICT環境を調査
9割スマホ。日本語入力は自信ありだが、表計算ソフトは自信なし
日本大学文理学部 小林貴之先生
新入生に対してICTに関するアンケートを、高校で教科情報を履修した学生が入学した2006年度から行っています。
実は、日本大学文理学部は、1つの学部なのですが、現在18学科あり、新入生が2000人もいます。その2000人に対して、1年次必修の実習科目「コンピュータ・情報リテラシー」(90分×15回)を実施しています。1クラス50人程度で実施できるといいのですが、現在は最大150人定員のクラスを、私を含め毎週18コマ行っているという形です。
150人もいますと、情報リテラシーの個人差が大変大きいということで、事前に状況を把握しておこうとアンケートを実施している次第です。ここでは、そのアンケートの結果を、2006年からの変化も含めて、ご紹介いたします。
(アンケートは、BlackBoard社のeラーニングシステムを利用しています。)
アンケートの主な項目は、
・出身高校(公立か私立か、内部進学か)
・自宅のPC環境、ネットワーク環境、所有する携帯電話やスマホの利用状況などICT環境
・ICTスキル
・今後受講を希望するコンピュータ関連科目
・高校での学習状況 など
9割以上が家庭にPC、インターネット環境が整う
1.自宅のPC環境
・自分のPCを所有しているのが、約50%
・家族と一緒に使っているのが45%、PCが自宅にない人が5%
2.自宅PCのOSの種類
・2013年ではWindows8(青い部分)が登場し、1年生の25%はWindows8を使用
・次に多いのがWindows7。自宅PCのOSが「わからない」と答える学生も25%程度
・Macユーザーは少ない
ちなみに、自宅にオフィスソフトがあるかを聞いてみると、2013年はOSでWindows8が多いのと同じで、office2013も登場し15%程度いますが、2010も20%近くと多い。しかし一番多いのは「わからない」で半数近くいます。
3.自宅のインターネット接続の種類
9割以上が自宅はインターネットにつながっているのですが、接続形式がわからないというのが3割以上います。無線が増えてきていますが、よくよく聞くと「家の中で無線がとんでいるから多分無線だろう」という感じで、接続形態を理解していないと思われる回答も散見されます。
急速に進むスマホへの乗り換え
4.所有している携帯電話のキャリア
・2006年には「携帯を持っていない」という学生もいたが、今はほとんどが持っています
・ドコモ(赤)が少し減っていて、au(ミドリ)とソフトバンク(紫)が増えています
5.スマホの所有率
一昨年からは、スマホの所有についても尋ねました。昨年は3分の2でしたが、今年は9割近くがスマホを持っています。
6.PCメールの利用度
約5割はパソコンでメールをしないということで、パソコンメールを送る際の常識・マナーと言われているものが通じないという状況がここから見てもわかりました。
一方、携帯・スマホでのメール利用をアンケートで尋ねたところ、かつてはほぼ全員がメール機能を使っていましたが、だんだん「しない」が増えてきています。聞いてみると、「キャリアを変えたときにメールアドレスを持ってこれないのでやめました。ラインなどがあるとメールがなくてもいいので」ということで、囲い込みのためだったとも言われている携帯電子メールを使わない学生もだんだん増えてきているようです。
パケット定額契約が進み、授業での携帯・スマホ利用が可能になった
7.携帯のパケット定額契約
携帯電話を授業の振り返りなどで使いたいと思ったのですが、昔は学生が携帯を持っていない、もしくはそのために携帯料金を払わせるのは問題という話がありました。最近はほとんどがパケット定額に入っているか、もしくは「わからない」人もいますがスマホの率から考えると定額契約していると思います。これからの授業ではこういうものを使っていきたいということで、今年からはeラーニングのシステムを携帯・スマホから使えるようなシステムに切り替えて、連絡事項の伝達や、小テスト、アンケートなどを携帯でも行えるようにしています。
ICT環境のまとめです。
・ほとんどの学生が自宅でPCやインターネットを利用できる
・携帯もほぼ全員が所有し、最近はほとんどがスマートフォン
・パケット定額等の契約を持ち携帯機器を授業で利用可能
表計算ソフト、プレゼンソフトが普通にできるのは2割だけ
8.ICTスキル 日本語入力できるか
日本語入力は、「充分使いこなせる」「使いこなせる」「普通に利用できる」を大体OKだとすると、日本語入力は7割以上がOKということになります。
9.ICTスキル ワープロソフト利用できるか
10.ICTスキル 表計算ソフトの利用
11.ICTスキル プレゼンテーションソフトの利用
日本語入力は、7割以上が「普通に利用できる」であったが、ワープロソフトの利用では、「普通に利用できる」以上が4割強になり、表計算ソフトやプレゼンソフトの利用では2割強と減ってきてしまいます。また、情報検索ができるかについて聞いたところ、8割以上が「普通に利用できる」と答えています。
つまり、ICTスキルについては、
・日本語入力やワープロソフトのスキルに自信あり
・情報検索スキルにも自信あり
・表計算やプレゼンテーションソフトの利用には自信が無い
大学ではワープロ、表計算、プレゼンのソフトを学びたい新入生
12.大学での受講希望科目
・ワープロはできると言っていながらも、ワープロ、表計算、プレゼンの3つが多い
・ちょっと難しいネットワークやデータベースも受けてみたい学生もいる
高校での学習内容は、文字入力やOffice系のソフトの利用がメイン
13.高校での教科「情報」の履修状況
・今年入学者は「情報A」が3割、「情報B」「情報C」が10%ぐらい
・ただし半分以上が「情報は履修したと思うが、どれだかわからない」と回答
高校での学習内容を尋ねたところ、最も多かった回答は、文字入力やOffice系のソフトの利用で、タイプ練習を延々とやりましたという学校もありました。この数年で増えてきているのは、著作権やネットワーク危険性などの情報倫理。マルチメディア関係としては、以前はデジタルカメラの利用で、最近は、動画が増加しています。
プログラミングがアルゴリズムなどを学習したという回答は1割以下でしたが、JavaとかC言語、COBOLをやりましたという学生がいて驚きました。楽曲やゲームの制作を行った学生もいます。他には、パワーポイントとかホームページの作成・相互評価、修学旅行先の調査とパンフレットの企画、CDジャケットやマグカップをイラストレータで作ったなど、いろんなことをやっているようです。
アンケートからは、大学で教える側から感じている、学生に個人差あるということが、裏付けされたと思いました。これらの結果をさらに分析し、授業改善につなげていきたいと考えています。
※本記事は、日本情報科教育学会第6回全国大会(2013年6月29日・30日、東海大学 高輪キャンパスにて)での発表でお話しされた内容です。