連載! 緊急interview

今、なぜ情報入試か

10月26日 秋のジョーシン(@早稲田大学)を前に

今の高1生から、既に始まっている!! 教育の新時代(第4回)

~「受験中心ではなく、社会につながる、人を育てる教育」が

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部/研究科 情報理工学専攻 教授、

情報入試研究会共同代表、情報処理学会 情報処理教育委員会委員長

筧 捷彦先生


筧 捷彦先生
筧 捷彦先生

今、なぜ教科「情報」入試なのか。社会を動かし、仕事でも生活でも不可欠な「情報」の知識やスキル。高校の必修科目となっているにもかかわらず、受験教科の知識と比べて、その知識・スキルは、劣っているようです。


情報入試研究会が2013年5月から実施した「第1回大学情報入試全国問題#002」を解説する、情報処理学会主催のシンポジウム「高校教科『情報』シンポジウム2013秋」(通称ジョーシン)が、2013年10月26日早稲田大学で開催されました。次回の学習指導要領への展望をも持つ、日本の情報系分野の中心的な有識者として、早稲田大学の筧 捷彦先生に、「なぜ今、情報入試なのか」を中心に教育改革への強い思いを語っていただきました。(全5回連載)

 

【special】ジョーシン(10月26日)でのオープニング講演はこちらから
 教科「情報」スタート10年目 節目の年に
 ~2023年の学習指導要領改訂の準備も見据えなければ!


第4回 子ども達の現状に合わせてITを活用し、興味に応える教育が必要

当たり前に使うスマホの技術背景を知ることが、子どもを変える!


今の子ども達は、小中学生でもスマートフォンなどを使っていろいろなことをやっています。既存の機能をただ利用するだけの子もいれば、どんどん自分で学んで、アプリケーションを自分で作ってしまう子もいます。


後者の子どもこそが、全員とは言いませんが、「いい作る人」、もしくは「ITをうまく活用する人」になっていく潜在的な能力を持っている子どもだと思いますが、そうした子どももまだまだ少ないです。そういう子どもはどこから育ってくるのでしょうか。


それは、自分が使っている既存のサービスや機能の技術的な背景を知っていることが大きいのではないでしょうか。どうしてスマートフォンで友達とさまざまな形でつながることができるのか。その仕組みを知ることで、好奇心が刺激され、「じゃあ、こんなことはできないのかな」「こうすれば、できるかも」という気持ちが芽生え、卓越した開発や活用をする能力が育つのでしょう。また、そこまではいかなくても、どのように作られているか想像ができるようになるのではないでしょうか。


その意味では、小中高校できちんと情報を教えることは、絶対必要です。

 

 

他教科では全く使われないIT。しわ寄せを被る高校の情報の教員は、気の毒

 

しかし、教育の現場は、このような子どもの関心、さらにはその関心に応えることでITに興味を持たせていくような指導はできていませんでした。その指導をする場として、教科としての高校の「情報」科は重要ですが、さらには小学校から全ての教科で、新しい発見をしたり、一歩踏み出したりするために、ITの知識・ツールを使っていくことも大事ではないでしょうか。

 

それによって、教科の知識を知るだけでなく、それらを活用し、結び付けていく能力を育みつつ、ITの知識やスキルも伸ばせるようになっていきます。そうなってくると高校の情報では、今まで使ってきたスマートフォンやインターネットなどのITツールの「バックグラウンドとなる仕組み」はこうなっているという話を統一的に整理しておくことができるようになります。

 

実は今の学習指導要領に書いてあるのは、小中時代に学んだり、触れたりした、ITを統一的に捉えていけるようになるための学習をする位置付けであり、その点至極まっとうなのです。そうなると、教科「情報」で大学入試を行う、という意味もきちんとしてきます。


しかし、現状では情報以外の教科の中でITを使うことがほとんどないと聞きます。


「総合的学習の時間」でも、国語でも社会でも、理科でも、機会をとらえては、どうやってデータを集めるか、それをどのように集計しどのようなグラフで表現すると理解を深めることができるか、という実例を先生がやってみせ、生徒にも手ほどきして自らやらせる、という教育が広く行われるべきなのです。


ところが、それがされていないのですから、結果、教科「情報」に、その部分までもが押し付けられていることにもなり、そのような位置にあるから、逆に、何をやってもいいことになってしまっています。情報の先生は気の毒と言うしか、ないでしょう。

 

そのためには、学習指導要領を全体として見直していくことも必要と思われます。次回では、その点についてお話しいたします。

 

【連載】

◆高校教科「情報」シンポジウム2013秋(ジョーシン)が開催されました
【主催】情報処理学会情報処理教育委員会・初等中等教育委員会
【日程】2013年10月26日(土)東京都新宿区 早稲田大学西早稲田キャンパス
【内容】「第1回大学情報入試全国模擬試験」の解説、パネルディスカッション 「情報教育の重要性と情報入試」、萩谷昌己(東京大学)、辰己丈夫(早稲田大学)先生方の講演も。
 

→シンポジウムの詳細はこちら:高校教科「情報」シンポジウム2013秋

→関連する記事はこちらから:ジョーシン特集