事例80

テレビ番組・自作教材・映画から学ぶ~2進法10進法16進法についての指導実践例

千葉県立八千代東高校 谷川佳隆先生

10進法を2進法あるいは16進法に変換するということを、生徒たちにスムーズに理解するためにはどのような授業がベストなのか考えました。ただ、言葉で説明するだけではなく、できれば、楽しく学んで知識を身に付けてほしいと、様々な素材を使い、授業の実践を行いました。

 

指5本でいくつまで数えられるか?

最初に、指で数を2進法で数えるという題材に取り組みました。生徒たちに、指5本で、いくつ数えられますかと聞いてみます。ふつうに数えたら、5までしか数えられません。でも、2進法の考え方を取り入れるともっと多くの数まで数えられます。片手の指5本で、だいたい10から30くらいまで数えられるだろうと見当をつけました。

 

では両手の指10本だったらどうだろう、と考えると、100以上1000までくらいだろうという答えが多くなりました。

 

最初にこの話をしたのは、デジタルは0か1の2通りで作られているということを理解してほしかったからです。指を折る、折らないで、0か1ということを表現しているわけです。そもそも、「デジタル」は、ラテン語の「指(digitus)」という言葉からきています。数を指で数えるところから、指が数そのものを意味するようになったことで、2進法を学習していく導入としてこういうことを実施したんだよ、という話をします。

 

この授業は、もともと間辺先生のサイト(※1)を参考にしたものです。

(※1) 海の近くの情報教室

http://www.info-study.net/math/binary-fingers.htm

 

さらに、お笑い芸人の厚切りジェイソンがやっている、NHKの「Why!? プログラミング」という番組で、動画を公開していたので、今年からはこちらも見せています。(※2) 。

(※2)NHK「for School Why!? プログラミング」

http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005440025_00000

 


 

小指を1、薬指を2、中指を4、人指し指を8、親指を16として、数を組み合わせていくと、指5本で31まで数えることができます。例えば、1は小指1本、2は薬指1本、3は小指と薬指の2本を立てるという要領です。

 

Binary Gameを作ってみた

以前、「Cisco」という、コンピューターネットワーク機器を開発する会社が開いているサイトで、2進法と10進法とを変換して遊ぶ「Binary Game」というものがありました。表示された2進法を頭の中で10進法に変換したり、逆に2進法を10進法に変換したりして、それを画面上で答えるというゲームです。授業では、この「Binary Game」を10分ずつ3回ぐらいやっていました。ただ、このサービスは終ってしまったので、Excelで同じようなものを自作してみました。

 

もとの「Binary Game」では、レベル1から4までの段階がありましたが、自作教材ではレベル3まで、全部で30問作って、合計300点でコンプリートできるようにしました。

 

生徒は喜んで取り組んでいました。全部で3シートあるのですが、うまくコツが掴めた生徒は、10分ぐらいで1つのシートを終えていきました。なかなかうまく進まない生徒には、できている生徒が教えてあげるという姿も見られました。

 

始める前には、こちらでスクラッチの教材を作り、変換の仕組みを説明しましたが、生徒たちはすぐにBinary Gameに挑戦し始め、あとは、自分自身で工夫して進めるという形になりました。「わからなかったら聞きに来てね」と伝えましたが、生徒たちは、けっこう自力でがんばって解いていましたので、あまりこちらが手助けする必要はありませんでした。

文字コードを使って16進法の変換を理解

16進法も、2進法と同じように16で割って変換するという説明を簡単にしてから今度は文字コードとは何か、という話をします。文字コードを使って文字入力を体験し、2進法と16進法の変換を楽しもうという取り組みです。

文字コードを2進法で表すと、非常に煩雑になってしまいます。そこで、これを16進法に変換するとスッキリしてわかりやすくなるという説明をします。

 

Unicodeでは、16進法で6587は「文」、5B57は「字」……と、いうように、文字が割り当てられています。自分の名前を、この文字コードで表してみよう、ということを試みてみると、これも、生徒たちは興味を持って取り組みました。

 

16進法についても、説明用のスクラッチ教材を作りました。こちらもあまり時間的な余裕がなくて、生徒たち見せたのは2回ほどでしたが、がんばって取り組んでいました。

 

 

最後に、16進法の面白さがわかる、映画『オデッセイ』について紹介します。

 

この主人公は、宇宙飛行士で植物学者なのですが、事故に巻き込まれて、火星に一人で取り残されてしまいます。当初、地球では、彼が死んだものと思われていたのですが、主人公は、自分が生きていることをなんとか地球に知らせることができました。そして、地球と交信を始めるのですが、そのやり取りはYesとNoの最小限の通信手段でしかできませんでした。しかし、簡単なやり取りをするのに、通信に30分も40分もかかるため、YesとNoの2つしかないのは効率がよくないと考えます。

 

彼は、植物学者の知識を駆使して水や土、電気を自力で作り出し、火星でジャガイモの栽培に成功します。そして、自分で作ったジャガイモを食べながら、「あ、16進法だ」と、思いつきます。16進法で表わされたアスキーコード表を出してきて、地球とやり取りをするのですが、ここがもう感動的です。映画を見ていて、そんなところに全然気付かなかったという人もいるのですが、私は、このシーンを見てとてもうれしくなりました。

 

単に、2進法、10進法、16進法と仕組みを説明するだけではなく、表計算で自作教材を作ったり、Scratchを活用したり、テレビ番組や映画を活用したりして、楽しみながら学習が進められればと思い、授業の展開を工夫しています。