事例94
こんな情報デザインの授業 いかがでしょうか?
神奈川県 柴田功先生
次期学習指導要領「情報I」の解説文を使って情報デザインをしてみる
次期高等学校学習指導要領の共通教科「情報」では、必履修科目の「情報I」で「コンピュータとプログラミング」の単元が設けられたことが話題になっていますが、「コミュニケーションと情報デザイン」にも注目したいと思います。「情報デザイン」とは具体的にどんな内容なのか。実際の授業はどのような課題を設定して、どのような流れで行うのか。そして、どんな成果物を作ってどのように評価したらよいのか。今回は、「情報Ⅰ」の単元「コミュニケーションと情報デザイン」の学習指導要領解説文を題材にしてお話しします。
「コミュニケーションと情報デザイン」の単元の目標は、「目的や状況に応じて受け手にわかりやすく情報を伝える活動を通じて、情報の科学的な見方・考え方を働かせて、メディアの特性やコミュニケーション手段の特徴について理解し、効果的なコミュニケーションを行うとめの情報デザインの考え方や方法を身に付けることです。そして、それらの方法を使ったコンテンツを表現し、評価して改善するところまでをねらいとしています。
この情報デザインの授業の流れを情報デザインしてみた、というのが今回の発表です。素材は学習指導要領の解説文です。
このテキストの原文を段落・色分けします。ここでは、学習指導要領で目標とされる内容を緑字、そこで何ができるようになるか・どのような力を付けるかという説明を赤字、具体的な学習活動の例を青字、その他を他の色で表示しています。
次に、こうして色分けしたものを
・ア「知識・技能」
・イ「思考力・判断力・表現力」
・学習活動の例
で分類して表組みします。こうすることで、解説文を視覚的に構造化することができます。
さらに、この青字の活動の中から、具体的な活動の内容を表す語句を抽出し、強調します。
これを学習活動の流れとしてモデル化していきます。上の図は、設計→制作・実行→評価→改善のPDCAサイクルに単純に当てはめたものですが、実際の授業の中では制作は1回やってそれきりではなく、作ったものを相互評価したり自己評価したりして改善案を考え、それを実行に移すというステップを入れたいので、下の図のように制作と実行の間に評価と改善のループを作りました。
これをさらに整理して、今どの段階の活動をしているのかを見やすくしたのがこちらの図です。これによって、学習指導要領の解説書に書かれている内容を網羅した授業活動が設計できます。
「ファイ型学習活動」はどの単元・どの教科でも応用可能!
このモデルは、ギリシア文字の「φ(ファイ)」に形が似ているので、「ファイ型学習活動」と名付けてみました。ファイ型学習活動は、「コミュニケーションと情報デザイン」だけでなく、情報Iの全ての単元に当てはめることができます。
具体的な制作物としては、リーフレットがお勧めです。リーフレットは折りを入れることで情報が目に入る流れができるため、ストーリー性があります。また、両面印刷が基本になるため、チラシよりも情報量を盛り込みやすく、文化祭のクラス企画や部活の勧誘、遠足のしおりなど学校生活の様々な場面に応用することができます。さらに、「情報デザイン=リーフレット」と限定してしまうのでなく、スライド資料やグラフ、さらにプログラムも情報デザインと考えると、全ての単元で指導や評価を行うことができます。
評価はルーブリックを活用して
ここでの評価方法としては、ルーブリック評価が最適です。ルーブリックは、ペーパーテストでは測りにくい思考力・判断力・表現力を測ることができるとともに、自己評価・他者評価の両方で同じ指標を使うことができます。
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「情報デザイン」は、情報をわかりやすく伝えるという意味において、全ての学びやこれからの仕事の基礎となり、様々な場面や素材での指導が可能です。ぜひいろいろな場面で試してみてください。
※柴田先生の教科「情報」授業アイデア集サイト「情報科.net」には、今回の発表資料も含めて、教科「情報」や教育の情報科に関する資料、授業事例がまとめられています。こちらもぜひご覧ください。
※第11回全国高等学校情報教育研究会全国大会ポスター発表より