事例139
教科「情報」で活躍する消耗品たち(5万円以下)
東京都立神代高校 山本博之先生
教材の購入では、情報の授業以外でも活用できるものも視野に入れる
私からは、情報科の予算でどのようなものを教材として購入し、授業や行事でどのように使っているかをお話したいと思います。
まず、東京都の予算がどのようになっているかを説明します。どの自治体も基本は同じだと思いますが、学校の予算には「公費(自律経営推進予算)」と「私費」の2種類があります。
私費というはいわゆる生徒会費のことで、生徒から集めたお金です。このお金は、使用目的やルールが厳しくなっているので、基本的に物品を買う場合は公費になります。
公費の中にもいくつか種類があって、消耗品は「一般需用費」にあたります。東京都は数年前から消耗品として購入できる金額が10万円以下になりましたが、多くの自治体の基準は5万円以下だと思います。なので、本日は5万円以下で購入できる物品を紹介していきたいと思います。
私の予算に対する考え方は、生徒全員が使える物や、授業で使える物を購入するというものでしたが、最近は少し変わってきていて、部活や行事に貸し出せたり、他の教科でも活用できたりするものを購入しようと考えています。
ドローン、スマートスピーカー、VRゴーグル…実際に触れてみないと感触がつかめない
まず紹介するのはミニドローンです。皆さんは、Society5.0の政府広報の動画を授業で見せたことがあると思いますが、最初の場面でドローン配送が出てきますよね。なのに、実際にドローンを飛ばしたことがなくていいのかと思いませんか。
実は、ここに挙げているものの前にもう1機、別のものを試したのですが、操作がやや不安定だったので、こちらを1台用意してもらいました。このドローンは、安定性が高いのが特徴です。スマホで制御でき、カメラが搭載されるので、そのまま写真も動画も撮影できます。
[商品参考サイトへ]
最近は、ScratchやPythonを使ってアプリで制御できるエデュケーションバージョンも出ています。
実際にプログラミングの授業でも使えそうなので、数台あれば授業の幅が広がると考えています。
購入される場合は、バッテリーやプロペラなどが複数セットになっているものをお薦めします。ホビードローンの特性として、バッテリーが7分程度しか持たないので、できればセットのものを購入されるとよいと思います。
※https://www.ryzerobotics.com/jp/tello-edu
次はスマートスピーカーです。これもSociety5.0の政府広報の動画に登場しています。学校によってはWi-Fiの環境の問題で使えないところがあるかもしれませんが、テザリングでも動きます。
[商品参考サイトへ]
検索したり、Bluetoothスピーカーとして使ったりする他に、タイマーとしても使えるので、試験の時など「○分タイマーかけて」ということができます。将来のことを考えると、教室に1台AIスピーカーを設置するのもよいかと思います。Wi-Fi環境やアカウントの問題はありますが、音楽も再生できますし、様々な場面で使えますので、他教科の教材としても応用範囲が広いと思います。
こちらはVRゴーグルです。本当はOculusが欲しいのですが、さすがに手が届かないので、スマホを挟む型のVRゴーグルにしました。
ゴーグルにスマホを挟んで使用します。調節機能でピントを合わせることが可能です。百均などで段ボールのVRゴーグルも売っていますが、調節機能がついていないので不便です。本校では4台パソコン室に置いて、「自由に使ってOK」にしてあります。
[商品参考サイトへ]
こちらは360度カメラです。VRと連携させたいと考えています。360度カメラと言いながら、全天球カメラなので、全方向の写真が撮影できます。
こちらは私がパソコン室で撮影したものです(注:もとの映像は動画)。全方向・全天球なので、全ての方向を動画でも撮影できます。専用アプリでないと全方向が見られません。
最近ではSNSとの相性がよい360度カメラも発売され始めました。回転+スローモーション映像の「バレットタイム(※)」では、映画「マトリックス」の弾丸を避けるシーンのような映像を撮ることができます。ぜひ皆さんもYouTubeで調べてみてください。
[商品参考サイトへ]
ミニコンピュータは、いろいろな所で発表もされていますので、皆さんもご存知だと思います。ミニコンピュータ本体は2000円台から販売しています。マイクロUSBケーブルは付属のものだと800円くらいしますので、百均のもので代用すると節約できます。
[商品参考サイトへ]
本校では、こちらのスライドのように、百均のプラスチック箱にミニコンピュータ本体と百均のケーブルを入れて、生徒一人に1台渡して授業で活用しています。1クラス分40台+予備2台でも10万円以内で購入可能だと思います(本校は、高大連携の取り組みとして、大学からmicro:bitをお借りしています)。
スキャナー、台車、ブックスタンド…ちょっとした工夫で授業運営の効率アップ
ここからは少し校務的になります。コンピュータ教室専用のドキュメントスキャナーは用意したほうが便利だと思います。一般的なフラットベッド式(原稿を平面基板上に置き、基板または光源と受光部が一体になった光学ユニットを移動させて走査する方式)のスキャナーは、使いづらいですよね。なので、オートフィーダー付きのものをお薦めします。このスキャナーであれば、1クラス40人分のプリントを1分少々で読み取ることができ、両面読み取りも可能です。
[商品参考サイトへ]
このスキャナーと相性がよいのがマークシート読み取り装置、いわゆるOMRです。OMRのソフトにはいろいろな種類がありますが、私がお薦めしたいのは普通紙でマークシートの処理ができるものです。一般的にマークシートには専用紙が必要ですが、これが意外に高額です。
普通紙を読み取るものであれば2万円少々でソフトが販売されているので、ランニングコストも学校で使用している普通紙だけになります。
[商品参考サイトへ]
台車を何に使うんだ、と思われるかもしれませんが、プリンター台に使います。
本校では、写真のように使っています。プリンターは、床に直置きの学校が多いと思いますが、私は台車の上に置いています。パソコン室のレイアウトを変えたい時など、手軽に動かすことが可能です。
こちらはブックスタンドです。キーボードを打つときに、教科書を机の上に広げて置くと見づらく打ちづらいですよね。ブックスタンドに教科書を立てれば、教科書を見ながらでもキーボードを操作することが可能です。生徒全員分用意して、それぞれの机の上に置いておくのもよいと思います。これは自分用として、自分で百均で購入しました。
これは補足ですが、ZOZOSUITです。もうサービスは終了していますが、これ自体は0円です。こういう恥ずかしい画像を出して何が言いたいかと言うと、「いろいろなところに目を向けた方がよい」ということです。このように無料で手に入るものも、100均などで買えるものも、面白い教材になります。我々は、常にいろいろなところにアンテナを張っているべきだと考えています。
コンピュータ教室って、何となく白かったり灰色だったり、殺風景なイメージがありますよね。なので、本校のコンピュータ室にはウォールステッカーを貼りました。生徒に聞いたら、「小児科っぽい」と言われました(笑)。確かにそうかもしれませんが、生徒が来たくなるような部屋を作ることはとても大切だと考えています(※予算請求で購入したものではありません)。
コンピュータ室だからこそ揃えておきたいものも
本や雑誌を置いておくファイルワゴンも欲しいところです。「図書館にあるからいいじゃないか」と言う人もいますが、情報の書籍って、意外にたまっていきますよね。生徒が調べたいときに自由に見られるよう、コンピュータ室内に置いておくと便利です。
[商品参考サイトへ]
高校では学級文庫のようなものはあまりないかもしれませんが、手の届きやすいところにぱっと使える本や雑誌を置いておくのは、教室でもパソコン室でも良いと思っています。
絶対に必要なのが、この各種ケーブル類です。こういったものは、先生方のほうが必要だったりします。講演に来ていただいた先生がスライドを映すのに「HDMIとVGAの変換ケーブル、ありませんか」という話はよくあることです。
最近ではいろいろなものがUSBで動くので、スライド下段中央のような電源タップを各教室に1個ずつ置くのもよいと思います。
下段の左側はフォーンプラグです。様々なサイズがあって、よく「ミニとの変換を貸してください」と言われるので、これも一式そろえておくと便利です。
これは補足ですが、ZOZOSUITです。サービスは終了していますが、これ自体は0円です。
こういう恥ずかしい画像を出して何が言いたいかと言うと、「いろいろなところに目を向けた方がよい」ということです。このように無料で手に入るものも、百均などで買えるものも、面白い教材になります。む我々は、常にいろいろなところにアンテナを張っているべきだと考えています。
予算上手になるコツは…
最後にまとめです。予算は各学校でいろいろな教科が出してきますし、自治体や学校によって内容や予算規模が違うと思いますが、情報科の先生は予算に詳しい方がよいと思います。
新人のときは、何を買ってよいのかよく分からないまま過ごしてしまいますし、授業スタイルがchalk&talkで何も買わなくても支障がない先生もいらっしゃるかもしれませんが、情報科はそれではダメです。予算の取り方には詳しくなって、上手に予算を通してもらえるようになった方がよいでしょう。
学校では大体11月頃、ただでさえ忙しい時期に「予算編成よろしくお願いします」という連絡がきて、12月の年末・学期末で超多忙な時に予算の締め切りがやってきます。皆さんあの時期は絶対つらいですよね。ですから、気付いたり思いついたりしたら、すぐその場でメモっておくのがよいでしょう。私の場合、予算に関して思いついた瞬間にメモるようにして、1年かけて蓄積したものから予算申請に回すようにしています。
予算上手になるもう一つのポイントは、1年間で全部買ってしまおうとは思わず、3年計画・4年計画で考えることです。40台の物品が欲しい場合は、10台ずつ4年計画にするなどの工夫が必要です。また、補正予算とか部活振興費とか、特別につくような予算があれば、そういったものにもアンテナを伸ばして、請求してくことも大切だと思います。
かつて先輩の先生に「情報は情に報いる仕事だ」と言われて、なるほどと感動したことがあります。なので、予算請求や物品購入を担当している事務室の情には報いていこうと思っています(笑)。その一方で、無料のものや百均などにもアンテナを張りながら、教材を充実させていくことが大切だと考えています。
※神奈川県高等学校教科研究会情報部会 情報科実践事例報告会2019 口頭発表より