事例152

川崎北高校におけるオンライン授業の取組と今後の展望

神奈川県立川崎北高校 校長 柴田功先生、情報科 上枝俊太先生

GIGAスクールのモデルとなる取組の前倒し実施でオンライン授業環境を整備できた

柴田先生:

今日は本校のオンライン授業の取り組みについて、教科情報の事例も含めてご紹介したいと思います。先ほどの大石先生の生田東高校とは、地域も近いということで、オンライン授業の取り組みについては、良きライバルと思って日々頑張っております。

 

自己紹介についてはこちらの通りです。神奈川県の取り組みについては、今日ご覧の皆さんはすでにご存じの方が多いと思いますが、改めてご紹介します。

 

令和元年度のICT環境の整備がなかったら、今回のオンライン授業の取り組みはとてもできませんでした。今、全国的にGIGAスクールの取り組みをしていますが、神奈川は昨年度、GIGAスクールのモデルとなる取組として1年間早く行っておいて、本当によかったと思っています。

 

 

また、教育委員会が令和2年度に家庭のネットワーク環境支援としてモバイルルータを整備してくださったのが非常に大きかったです。これがなかったら、Google Classroomを使ったオンライン授業の取り組みは厳しかったと思います。

 

本校の生徒の状況がこちらです。スマートフォンはほとんどの生徒が持っていますが、パソコンを持っているのは1割でした。無線LANがある家庭は約8割ですから、残りの2割はLTEで行うか、または学校が用意したモバイルルータでネットワークにつないでいます。

 

 

意外に大きな課題となったのが、「印刷できない」という家庭が4割ほどあったことです。このため、最初のうちは、印刷しないとできない課題を出したところ、生徒や保護者からいろいろご意見をいただきました。こういった学習環境に慣れない間は、やはりある程度印刷が必要かと思いますが、いずれ慣れれば要らなくなるかなとも思います。

 

川崎北高校オンライン授業の4つの取り組み

本校のオンライン授業の取り組みを四つの四角でまとめました。

 

まず大きなところとして、4月当初から全教科でGoogle Classroomによる課題の配布・回収をやってきました。入学式で1年生にアカウントを配布しておいた、というのが大きかったと思います。2・3年生は、既にアカウントを配布済みでした。

 

 

それから、YouTubeの限定公開機能を使って授業動画を配信しました。生徒全員のネットワークが整ったところで、3年生の選択授業など、一部でライブ型の授業にも取り組んでいます。その他、朝のホームルームや二者面談ではMeetを使った授業を実施しています。

 

1週間ごとの科目別の課題一覧表をWeb公開することについては、教育委員会からの指示もありますが、これについては、我々は最初から意図して学校のホームページに載せています。「この授業ではこういったことをやっていますよ。単元のこういう課題をこう評価するよ」という一覧表ですが、こういったものは、生徒だけでなく保護者にも向けて積極的に公開していくべきではないかと思います。

 

[川崎北高校ホームページ]

https://www.pen-kanagawa.ed.jp/kawasakikita-h/

 

ドリル型の学習課題だけでなく、パフォーマンス型の課題もオンラインで行っています。こちらは美術の授業でアマビエを描いて提出する、という課題ですが、音楽やコミュニケーション英語などでも行っています。

 

 

情報科の授業でプレゼンテーション動画を作ってみた

ここからは、本校の情報科の教諭の上枝先生に来ていただいて、情報科の授業でチャレンジしたパフォーマンス課題についてインタビュー形式でお話したいと思います。上枝先生、簡単に自己紹介をお願いします。

 

上枝先生:

情報科教員の上枝です。3年前新採用で、今は2年生の担任をしています。

 

柴田先生:

情報科では、今回オンライン授業でどのような課題を生徒に出したのですか。

 

上枝先生:

単元としては、プレゼンテーションの計画書を作り、プレゼンに使うためのスライド資料を作る。そして、プレゼン用の動画を撮影するという課題です。

 

 

柴田先生: 

自宅に端末がない人もいると思いますが、生徒は皆スライドを作ることができましたか。

 

上枝先生: 

スライドに関しては、スマートフォン用とパソコン用の両方の資料を生徒に配布して、パソコンだけがある生徒にも、スマートフォンのみで行う生徒にも、両方対応できるようにしたので、全員できました。

 

柴田先生:

はい。スライドを作って提出する、ここまではよくある話と思いますが、上枝先生が工夫されたのはここからで、作ったスライドを使ってプレゼンをしている動画を撮って提出させた、というのがすばらしいと思います。これはどういったきっかけでこのような課題にされたのですか。

 

上枝先生:

本校の英語科の課題で、音読したものを録音して提出させる、ということをされていたのにヒントを得て、「だったら、プレゼンテーションの動画も提出ができるじゃないか」ということでこの活動に至りました。

 

柴田先生: 

今日は生徒の許諾を得ていないので、残念ながらお見せすることはできませんが、作品としての動画はどのような感じでしたか。

 

上枝先生: 

自分の好きなものを紹介するという内容で、同じクラスのメンバーへの自己紹介も兼ねた内容だったので、例えば自分の好きなラーメン店のラーメンについて発表した生徒もいました。やはり自分の好きなものですから、モチベーションも高く、熱心に取り組んだことがわかりました。

 

こちらでは何も指導しませんでしたが、自分で動画の編集をしたものを提出してきたりして、生徒独自の工夫が見え隠れするものがけっこうありました。

 

柴田先生: 

最初はテーマ設定がちょっと幼いかな、と思いましたが、オンラインの授業を始めたばかりのこの時期に、まだ実際に会う機会のないクラスの友達への自己紹介兼ねたテーマということで、アイスブレークにもなりますし、情報活用能力を身に付けさせる取り組みとして面白かったと思います。ありがとうございました。

 

Meetを使った授業や面談、職員会議も

スライドの紹介に戻ります。今の上枝先生のお話や、先ほどのアマビエの絵、音楽の歌や英語の音読の提出といった形の活動は、意外にも今までオンライン授業でこういった例を聞かないので、今後もっと取り入れていかれるとよいと思います。

 

Meetの活用については、神奈川県の教育委員会の学校ではなかなかできなかったかもしれませんが、こちらもできるところから少しずつ取り入れていくとよいでしょう。

 

 

先ほどの大石先生の話にもありましたが、オンライン授業では、同時双方向型とオンデマンド型をうまくコーディネートするのが大事ではいかと思っています。

 

 

職員のミーティングも、朝夕Meetを使って行いましたが、非常に有効でした。在宅勤務の教員とも情報共有できましたし、結果的に2か月間、普段の職員会議をしなくても、いろいろなことを決めたり、情報共有をしたりすることができたと思います。動画コンテンツの作り方、課題の出し方などのノウハウは、本校のホームページにたくさん載せていますので、是非ご覧になってください。

 

 

現在、生徒や保護者からGoogleフォームでアンケートを取っていますが、オンライン授業の取り組みは保護者・生徒から概ね好意的な評価いただいています。やはりGoogle Classroomを使って、先生と顔を合わせたり、コメントをもらったりということがきめ細かくできたのがよかったと思います。

 

 

課題としては、生徒の家庭の通信環境の影響もありますが、画質が粗く見にくいところもあったということで、同時双方向型で授業をするのはやはり厳しいかと思っています。

 

この2か月で蓄積した「オンラインでできること」を教育活動に組み込むために

オンライン授業は、この2か月で教育活動の手段の一つになったと思います。今後、不登校や入院、自宅療養の生徒への対応として、こういう手段があることを学ぶことができました。

 

また、今までは教材置き場はサーバーでしたが、特にGoogleサイトを使うと、教材がきれいにまとまります。

 

 

生徒も同様で、自分の動画やレポートといった様々な作成物をGoogleサイトにまとめると、立派なポートフォリオになるんだ、ということを学びました。また、この研究大会もそうですが、総会や会議、研修会といったものをオンラインでできることを我々自身が学びました。

 

今後は、高校でのICT環境はBYODが主流になると思います。学校ごとに保護者負担で端末を購入してもらい、それが難しい家庭には、自治体や学校が文科省が支援して一人1台が端末を持ち、当たり前の文房具として使えるようになるとよいと思っております。