事例171

「情報の図解化」授業実践報告

大阪府立三島高校 勝山衿佳先生

「情報の図解化」学習のねらい

必修科目「社会と情報」(2年次)にて、「情報の図解化」という授業を実施しています。

 

こちらは、近江兄弟社高校 長谷川友彦先生(※1)、神奈川県立茅ヶ崎西浜高校 鎌田高徳先生(※2)の授業実践事例を参考にさせていただいたものです。 

 

※1 長谷川先生の事例はこちら 

※2 鎌田先生の事例はこちら 

 

  

授業のねらいは、次の3点です。

 

 (1)「情報を整理し伝達する工夫ができるようになる」-自分で仕入れてきた情報を自分なりにまとめ、それを工夫して人に伝えることができるようになること。

 

(2)「図解化の際に必要な知識を体系的に習得する」-図解化の際に、どのような種類の図があって、どのようなことを伝えたい時に使う図であるのかという知識を得ること。

 


(3)「図解化活用例の幅を広げる」-演習を重ね、それを生徒同士ですぐに共有できるような活動を通じて、図解化スキルの定着を図ること。

  

 

「図解化」をしっかり理解してから実習へ

(1) 図解化はなぜ必要なのか?

まずは、「図解化する」とはどういうことかという説明から入ります。

 

こちらは授業で実際に使用したスライドですが、このように長文をだらだら書かれているスライドの内容は頭に入って来ません。しかし表に整理しなおしてみる(=図解化手法の1つ)と、「ぱっと見て欲しい情報がわかりやすい」ようになるということを話します。

 

それから、なぜ図解化が必要かということですね。「これからの時代には、自分なりに情報をまとめてそれを人にうまく伝える工夫ができるような力が求められます。学校の先生が黒板に書いたことを丸写しするだけ、テキストに書いてある完成品をそっくりそのまま作るだけ、そういう授業の受け方ではいけない」ということを伝えます。生徒のみなさんも、「今日の授業は将来役に立ちそうだな」という面持ちになって、真剣にこの授業に参加してくれたのが印象的でした。

 

 

図解化の基礎~「絵図解」「データ図解」「論理図解」

 

いきなり図解化の演習問題を課されても難しいものです。まずは、図解化をするにあたり、どういうことを伝えたい時に、どういう図があるのかということを知識として知るため、図解化の種類について体系的に学びます。

 

 

この授業では、「絵図解」「データ図解」「論理図解」の三つを取り上げ、特に論理図解の技法について、詳しく扱いました。例文を示し、その例文を説明するのに使う図解化技法の例をスライドで1枚ずつ紹介していくという形で進めます。

 

※クリックすると拡大します。

 

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例えば、「K先生の身長は184センチもあるが、N先生の身長は148センチしかない」という例文について。この例文は「対比」の図解化技法で表すことができます。

 

このとき「K先生」「N先生」という文字の入った長方形の長さを変えると2人の身長差も同時に表現できるとか、矢印にも太い矢印、色を変えた矢印、点線矢印などさまざまな種類があり、それぞれ自分なりにルール付けしておくとノートをもっと上手に作れるとかいった、図解化に付属する「小ネタ」も併せて説明していきました。生徒はこのような「小ネタ」も、授業プリントにメモしてくれていたりします。

 

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各自で図解化・見本で説明の繰り返し

 

図解化の基礎知識や使い方がわかったら、演習に移ります。生徒たちは提示モニターに表示される問題文を読み、1分30秒~2分程度で自分なりに図解化します。

 

その間に教員は生徒全員の取り組みの様子を観察し、見本になりそうなプリントをその場で回収しました。制限時間終了後、書画カメラを用いてクラス全体で回収したプリントの内容を共有するという方法を取りました。

 


こちらは、実際に使用した例文です。『K先生は、華道部に所属していた。』

 


 

第1問目にこちらを出題したのですが、ほとんどの生徒は手が止まってしまっていました。すらすら描けていたのは10人ぐらい。その10人ぐらいの生徒のうちから数枚、見本としてクラスに共有しました。多かったのは「矢印図解」を用いたものでした。「絵図解」を用いた生徒もいました。

第2問は、「西日本では丸餅、東日本では四角い餅を食べる文化がある」という問題文です。第2問になると、ペンが止まる生徒はゼロになりました。第1問でクラスの生徒の見本を見て、何となく図解化の方法が掴めたのだと思います。

 


 

第2問では、さらにいろいろな図解化技法を用いた例が出てきまして、表図解や日本地図を描いて絵で示すという図解のパターンも見られました。

第3問は、情報科教員3名に関する文章を出しました。高校・大学時代にどういう団体に所属していたのかということを、自分なりに時系列や共通項なども含めて整理していくという問題です。

 


 

多かったのは矢印で示す図解、それから「勝山」を〇の中に「勝」というふうに表して名前を簡略化する描き方などがありました。「制限時間が限られている中では、このようにちゃっちゃっと描けるような表記の仕方もあるね」と解説しました。

 

集合の図解を使っているパターンでは、3色ボールペンを使って大学時代を赤、高校時代を青で表しているものもありました。色で時期を表現しているわけです。絵図解と組み合わせて矢印図解をするパターン、第2問でのクラスの生徒の例に触発されたのか、表図解を用いてくる生徒もいました。 

第4問は文系・理系のクラス分けについてです。

 


 

一番多かったのは、ベン図を用いた「集合」の技法を使うパターンでした。系統図を使ってくる生徒もいました。

 

第3問でも見られましたが、色分けで表現するタイプ、さらに、一マスを1クラスと見立て、文系を黒いマス・理系を白いマスとした図解。文理混合の6組はマスの上半分が黒、下半分は白として混合クラスであることを表していました。 

最後は、数学の履修に関する文章です。どの科目をどういう順番で履修しないといけないのかというルールと時系列の整理が求められます。

 


 

生徒たちは随分と図解化のコツを掴んでくるようになり、流れ図、集合と対比を合体させて表す図、数学IからIIIを階層図で示した図など実に様々な図解化例を用いて表現することができていました。

 

数学Aと数学Bの関係を点線矢印で示して「イレギュラー感」を出すという、小ネタで紹介した矢印の使い方の例の話を取り入れてくれている生徒もいました。

 

 

実践の結果と今後の課題

 

「情報の図解化」の授業に参加している時の生徒たちは、書画カメラで共有された他の生徒の図解化の例や、教員の解説を授業プリントに自主的にメモする等、非常に熱心に取り組んでいました。

 

演習1問ごとに、

① 自分になりに図解化して

② 他の生徒の図解化例を見て

③ 先生の解説を聞いて

④ 次の問題でそれらを参考にして、また自分なりに図解化して…ということを5回繰り返したので、全問を終えた時にはかなりの生徒が図解化のコツを掴んでくれたのではないかと感じました。また、配慮した点としては、この手の「図解化」が得意な生徒は一定数いるのですが、同じ生徒のプリントばかり続けて採用することのないよう心掛けました。

 


結果としては、「前半で理論を習得し、後半で演習を行うという形の授業構成により、自分なりに情報を整理して、上手くまとめて伝える力をつける」という授業のねらいが実践できたのではないかと思っています。

 

この授業は50分で行いましたが、その短い時間の中で、生徒たちは「図解化」とは何か、また、どのように活用すれば良いのかということを学んでくれたのではないかと思います。この授業を受けた後、授業プリントに「図解化」を取り入れてくれるようになったり、プレゼンテーションで使用するスライド資料を作るのに「図解化」でまとめたりと、生徒が自分の考えを伝達する際のツールとして「図解化」が選択肢に上がってくるようになったのは、この授業実践の成果だと考えられます。

 


今後「図解化」は、「情報Ⅰ」の「(2)コミュニケーションと情報デザイン」の単元教材としてブラッシュアップを図っていきたいと考えています。

 


今回の授業は完全にアナログベースでプリントに描くというタイプの授業でした。生徒は一切パソコンに触れていません。せっかく情報の授業をコンピュータ教室で行っているので、この授業も、コンピューターベースでできる方法を考えてもいいのかなと思っています。また他の先生方から、探究の授業や新入生オリエンテーションの導入ネタにも利用できそうですね、というご意見もいただいています。

 

今後は、「情報の図解化」の授業の中に、情報科としての特色をさらに取り入れていくことが課題です。

 

 

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