情報科におけるハイブリッドな学び-オンデマンド教材の活用とその可能性-
和歌山県教育庁学校教育局県立学校教育課 肥田真幸先生
授業のリデザイン=再構築し、作り直していくことが必要に
学習指導要領が改訂されて、育成を目指す資質・能力も新しく整理されています。その中で、授業を組み直す「授業改善」ということがより必要になってきていることを感じています。
特に、今回の改定で情報科は、内容の充実が図られ、学ぶことも高度になってきています。
今よく言われるのが「何を教えるか」から「何を学ばせるか」という転換が必要で、そこにいろいろなものが関わってきているというのが、現状かと思います。
特に最近は大学入学共通テストへ「情報I」の導入も決定しましたし、学校教育に関する言葉としてもいろいろなものが出てきています。先生方も、何をどうしたらよいのか、どのように変えていこうかといったことを悩まれていると思います。
生徒の立場からすると、「教わる」から「学ぶ」への変換です。そこに必ず伴うのが、先ほど言った「授業改善」という言葉です。しかし、私の印象では、もはや「改善」というようなレベルではないのではないか、ということで、ここでは、それを「『リ』デザイン」という言葉で定義させていただきたいと思います。
この「リ」は、リフォームでとかリビルドというように、「もう一度再構築して、作り直していく」という感覚で、全体を再考することが必要だと思います。
このスライドのように、「何を学ばせるか×どう学ばせるか」には、いろいろなものが関わってきていて、そこから各学校の特性や学校ポリシーに応じて、何を学ばせるか、どう学ばせるかをしっかり考えていく。授業のねらいや成果として子どもたちの資質・能力を高めるということに対して、「授業のリデザイン」を大胆にしていく必要があるというところです。
これまでも、今お話ししたようなことが各地で進められていましたし、コロナによる未曽有の一斉休校で、在宅学習を余儀なくされたとき、各学校がいろいろなことに取り組んだと思います。その中で、「オンライン」という言葉については、この大会がそうであるように、社会的にも結構根付いてきていて、授業や学校間をつなぐことができることが注目されたり、デジタル教材や学習支援ソフトなどいろいろなものが学習用ツールとして使われるようになってきました。
私の今回の発表では、この中で特に「授業動画」に焦点を絞って、「授業のリデザイン」について考えていきたいと思います。もちろん、ここに挙げた他のものも含めて、統合的に授業展開を考えることが大事ですが、ひとまず今回の発表では、この部分に絞って考えていきたいと思います。
授業動画の利用の現状は…
コロナ禍において、授業動画の配信は、各学校のWebページやYouTubeなどを活用して、いろいろな工夫のある取り組みが進められました。ただ、今のところ5教科の動画が中心となって作成が進んでいて、「情報科」の動画は少ないかな、と思っています。「情報」の先生方も、それぞれが動画をたくさん作ってくださっていると思いますが、学校外に配信することがなかなか難しいことや著作権や肖像権の問題など、いろいろ懸念があったというのが現状かなと思います。
授業動画の強みを整理してみました。
まず、個別最適な学びに向いてることがあります。使い方を間違えると、孤立の学びになってしまうので、気を付けなくてはいけないと思いますが、一人ひとりが自分のペースで学ぶということに対しては、大きな力を発揮するものであると思います。
特に、緊急事態宣言下で休業等が必要な場合になれば有効に活用できますし、生徒がスマホからでも何回も視聴できます。また、文字の情報だけよりも見やすく、わかりやすいというところがありますね。
一方で、弱みもいくつかあります。例えば、誰かがWebで公開している動画は、いつ公開が終わってしまうかわからないという不安がついてきます。また、動画を活用した授業をしようにも、先生方には、動画を実際の授業の展開でうまく活用できるかといったことも、懸念としてあるかもしれません。
また、「授業動画はコロナ対応の特別な(一時的な)もの」というイメージを持たれている人も多いようですが、決してそうではありません。せっかくこのような良い教材や手段を知ったのなら、これからも活用しない手はないだろうと思います。
その際、動画教材の活用に関して、弱みは強みに変える必要もあります。この辺りは、学校や教育委員会がしっかり旗を振って、学校間で共有できるように工夫していくべきだというのが、思っているところです。
そして、授業で動画を使った授業実践事例がまだ少ないと感じるので、どんどん作って蓄積し、実践していくべきだ、ということがあります。具体的に授業でどのように使うかについては、このあと後半でお話ししたいと思っています。
ちなみに、私が今回このお話をしようと至った理由として、和歌山県で今年度から「授業動画を活用した学びの深化」という事業が進められており、「専門性の高い先生方で動画を作って、全ての学校で共有できるようにしよう」という形で進んでいるということがます。本県では、既にいくつかの動画が県内の共有場所にアップされていて、どんどん動画を作ってくださっています。GIGAスクールなどが進み、これまでよりも動画を使いやすく共有しやすい状況になって、1人1台端末が入っている環境下での授業の動画利用、というハイブリッドな学びの形を提案したいと思います。
「タイミング」と「用途」から見た動画の活用方法
今回、授業動画の活用についていろいろ調べてみたのですが、実はあまり整理されてない、ということがわかりました。ですので、まずはこのような形で整理してみました。そのうち、授業のリデザインについては、タイミングや用途、内容(単元)に絞ってお話しすることでわかりやすく説明できるかな、と思ったので、この辺りについて説明していきます。
まず授業動画の活用のタイミングについては、授業時間内で活用するのか、授業時間外で活用するのかに分けられます。授業内でいうと、「導入」で使う、「展開」で使う、「まとめ」で使う、というパターンがあると思います。私は、個人的に展開をさらに前半・後半に分けるの好きなので、表示では二つに分けています。また、授業時間外で考えると、予習や復習の時間で使うなどができるかと思います。
この図では、赤い枠の長さいっぱいの尺の動画を使うのでなく、この部分に短い尺の動画をいくつか入れて使うといった授業デザインを考えてみようという提案です。
動画を授業時間内で使う際の用途と工夫を、それぞれの区分について見ていきます。
まず「導入」では、本時のねらいを示したり、関心や興味を持たせたりして、展開を効果的に進めるために、「知りたい!」という気持ちを誘発することが重要であると思います。
「導入」での活用例としては、「なぜ学ぶのか」を考え、ねらいを意識することなどを動画でイメージ共有する、というのも一つの方法かと思います。個人の目標やアンケートを併せて取ってみることもできます。
また、展開での思考を深めるための準備にも使えます。グループ活動をより円滑に進めるための知識の解説やその確認をしたり、思考することを動画で問い掛けておくというのもおもしろいかもしれません。
あとは、前回の授業内容についての動画を活用して、簡単な振り返りを行うということもできます。授業動画といっても、いろいろな種類があります。私の提案については、授業動画を「授業のデザインに応じて作っていく」というイメージでお聞きください。
「展開」では、知識・技能の習得や、思考・判断・表現の活動を行い、生徒が主体的に学ぶことを展開していきます。個別の学習を進めていくということにも使えますし、より思考を深めるような活動へ動画を使っていざなうことも可能になると思います。
また、ペアやグループでの思考を深めるような使い方、よくあるジグソー法などに動画を使った学習を取り入れることも可能かと思います。ジグソー法については、指導する先生にもトレーニングが必要ですが、そういった先生の力を付けていくという意味でも動画活用はやってみる価値があると思います。
最後の「まとめ」では、各自の学習活動をまとめるとともに、粘り強い取り組みや自己の学びを調整できるように振り返ることになります。
伝え忘れたことがある場合は、ここで補完することも大事ですし、より高い興味を持った生徒への対応を動画で行うことも一つの方法であると思います。これは、「まとめ」だけでなく、その後も含みます。例えば、「まとめ」の内容で普段の生活につながるようなことを動画を使ってイマージでわかりやすく紹介すれば、学んだことを生活の中で意識し始めるでしょう。
授業外等での活用例がこちらです。より効果的な予習や反転学習での活用、中学校段階の学び直しの動画のようなものも使えると考えられます。
学習ツールやWebテストの併用も効果的と考えられます。
授業後での活用では、復習や補習、家庭学習での活用などがこれにあたります。学習の振り返りだけでなく、専門的な情報科の学びの動画があれば、より深く知りたいという意欲の高い生徒への対応もできます。また、関連する他教科の学びも動画で共有することで教科間の学びのつながりを高めることにも使えると思います。
その他にもいろいろな活用場面があると考えます。
例えば、授業の曜日の関係で、テスト前に授業時間で差が出てしまったときに、プリントを配っての学習だけではなく、動画を活用して生徒の学びを効果的に補完することもできると思います。
また、学校に来られない生徒に対して、現行では出席の扱いは難しいかもしれませんが、学びたい気持ちをかなえる手段として、大事なものになってくるかと思います。
さらに、生徒の発表を録画しておいて、次年度の例として使うこともできます。この場合は、顔が映ることについて、生徒に了解を取っておくことが必要になります。また、それを使って、後から生徒が見直しや振り返りを行ったりすることもできます。あえて失敗したものを共有しておいて、「その失敗例から学ぶ」といったことも思考を伴う学びに使えるかなと思います。この場合は、生徒の実際の発表でなくても、先生があえて失敗を実演したものでも構わないと思います。
また、こうしたアーカイブは、先生ご自身も使えます。情報の先生といえども、他教科との兼任の先生も多いですし、非常勤の先生で情報交換の機会がどうしても少なくなってしまう先生もいらっしゃいます。また、ご自分の授業の振り返りや専門分野の先生の動画を活用することで、専門性の向上にも活用できます。
逆に、他校の専門性の高い先生などが作られた動画を、自分の授業の中で使って補完教材としていくことも大事だと思います。動画を使うことで、先生自身の教材研究や説明時間の時短にもなり、評価のための時間を確保できるということも考えられます。
今回、いろいろ考えてみましたが、生徒が自分の速度で動画を活用して学べるということは、学習の理解がより進むと考えます。今まで、授業で説明された内容を「わからない」と質問に来ていた生徒の理解が進み、より高い質の「わからない」が出てくるのではないかと思います。そして、それが「学んだ内容をより探究したい」というような主体的な学びにもつながっていくと思います。
教える方は、授業内の効果的な活動や生徒に考えさせる時間を確保したり、机間指導をじっくり行ったりすることが可能になります。また、例えば、授業時間外に生徒が「ここがわからない」と質問に来た内容が、授業できちんと説明したはずのことだった、ということはよくあると思いますが、そういったときも、ある程度動画の視聴を促して、自分で学ばせることも可能になってきます。そういった積み重ねが、先生の時間の確保ということにもつながると思います。
その中で、生徒に「考えたことを主張する、共有する」という習慣が付けられるような授業展開をしないといけないと思いますし、それを補完するような教材(プリントやデジタル教材など)を活用していくのが大事だと思います。深い学びとなるような学習習慣をより効果的に身に付けるためにも、これまで作ってきた教材も活用できるよう、整理していくことも重要になってきます。
「情報I」単元別の授業のリデザイン案
情報科の授業のリデザインということで、単元別の展開例をご紹介したいと思います。
これまでの授業展開例と、リデザインを行った授業展開例をそれぞれ順に示します。ここでは、6つの授業案を提案します。
スライドの最後、「データの利活用」のあとに「情報通信ネットワーク」が抜けてしまっていましたので付け加えてください。
まず、「情報社会の発展」という単元中の授業1コマの例です。
今までは、下図のような形で、まず導入で先生が授業の内容やねらいを話して、展開で講義を行い、個別で考察した後、皆で話し合って最後に何かまとめる、といった流れが考えられたとします。これをリザインしてみます。
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下図の右上に「リ」と示しているのがリデザインした、今回提案するものです。まず、この最初の導入で、「Society5.0ってこんなものだよ」ということを簡単に説明する動画を見せます。その後、各自で経団連のSociety5.0の動画(※)を視聴させます。その後、「この社会はこれからどのように進むのだろうか」、「自分はどんなふうに関われるんだろうか」といったことを考える時間を設定し、個人やグループで想像し、考えます。
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※例:「20XX in Society 5.0~デジタルで創る、私たちの未来~」
そして、考えたことを皆で共有して、最後にしっかり自分でまとめて振り返りを行います。以前の流れだと、こういった思考し、振り返る時間を取るのがなかなか難しかったですが、動画は自分で何回も見返せるので、わからないところは自分で適宜見返しながら、より深く思考をすることも可能になると考えられます。
「情報セキュリティ」については、今までは、下図のように、講義して知識を学んで終わりということも、授業の時間数上あったのではないかと思います。私も正直、情報セキュリティについては、この形ですることが多く、思考する時間設定までどうしても取れなく、もっと主体的に学ぶ場面を設定すべきだったと反省しています。
そこで、動画を活用したのが下図です。まず導入の部分で、セキュリティ全般に関する説明(必要性)の動画を一斉で見たあと、展開で「ユーザIDとパスワード」「マルウェア対策」「不正アクセス対策」といった個々の要素技術について、グループや担当を分け、それぞれが別々の動画を見て、内容をそれぞれがまとめます。そして、個別に学んだことを伝えあい、まとめたものを、皆で共有するという、ジグソー法的な活動をしていくことが考えられます。そして、最後のまとめで、それぞれの動画をみんなが見られるようにしたり、視聴できるようにしておき、各自で内容を確認しておこう、というような課題の提示もよいと思います。
この方法をとることで、これまで4時間程度かかってた内容が、1~2時間で済む場合もありますし、同時間程度を取って、生徒が自分たちで協議する時間を多く取れることで、「これってどうなってるの」という疑問がどんどん生まれて、「自分で調べてみみよう」や「これってどうなっているの?」という発展的な展開も可能になり、よりが高い意欲につながっていくでしょう。
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「情報デザイン」の授業では、事前学習で情報デザインの要素や技術、考え方に関する複数の動画を紹介しておき、授業までに最低2本程度見てきなさい、ということにしておきます。そして、授業ではデザインに関する素材を加工する実習を行います。導入で、ベースとなる素材を生徒に渡して、「動画で見てきた情報デザインの考え方を踏まえて伝わり易く加工しよう」という本時の目標を説明し、実習に入ります。それぞれが動画で見て学んできた観点をグループで出し合って協議し、ベース素材を加工して、グループで一つの作品を作ります。
「伝わりやすくするために何に配慮したらよいか」ということを、それぞれ事前に学んだことを共有しながら、皆で話し合って一つの作品にするという展開です。
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「プログラミング」の授業中によくあるのは、先生が生徒の対応に一生懸命走り回って全体で説明したプログラムの技術を一人ひとり対応していて、一人ひとりの評価どころじゃない、みたいなことになってしまうパターンです。
基礎的な「繰り返し」や「分岐」、「分岐」の説明やデバッグ方法等について、事前に動画を準備しておき、困ったときに自分で見られるようにする授業の展開です。教科書等を渡してもなかなか見て理解できないという生徒のフォローとしても、動画による解説は効果的な学習支援と考えます。
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「データの利活用」では、今まではExcelでグラフの作り方を一斉にやって、その後各自でもう一回作ってみるという形が考えられます。グラフ作成の技能を習得して、後の時間でデータを検討施行するというような形を設定するなどが考えられました。
リデザインの案では、動画を予習で使います。中学校でデータの散らばりについては、ヒストグラムや箱ひげ図、その活用について学んでいるので、動画でこの部分を確認させておきます。
導入では、中学校での学びを想起させながらデータの利活用について説明し、展開で、Excelによるグラフの作り方やデータの読み取れることの思考を各自で行います。この時、Excelの関数の使い方やグラフの作り方などについては解説する動画(短い動画)にしておき、各自見られるようにしておきます。オープンデータ等を活用してどの部分を用いるかは各自が考え、各自で動画を見ながらデータの加工処理を行います。
そして、自分で作ったデータを他の人と協議するというような時間を作り、協議を行います。初めてグラフ作成やデータ加工するものが、先生が与えたサンプルのものではないというところがポイントで、その後、その加工したもので協議も行うことができます。動画を活用しない場合、「Excel操作で数時間、加工で数時間、作成した資料の協議で数時間を使い、ようよう1回のデータの利活用を行える」ということを考えると、同じ時間数を動画を用いて、自分で学びながら協議まで到達できるというスモールステップを繰り返せる展開にすることで、効果的な学びにつながるのではと考えます。
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「情報通信ネットワーク」も、下図のような形でできると思います。ネットワークに関する基礎事項の動画を事前に紹介しておき、授業では「インターネットにつながらなくなった原因を考え、復旧する」ことをグループで考えます。「ネットワークに接続できない。どうしよう」という動画を見せて、自分たちで関連動画などを見ながら、原因を考え、いろいろな「これが原因ではないか」を挙げさせます。
そして、その原因に関する説明や、どうしたら解決できるかといったことをまとめ、たくさん挙げるようにします。そして、クラスで共有したり、解決方法をプリントにまとめたりします。最後に、解答を動画で提示します。「実は、こういう原因でつながらなかったんだよ」という動画を見せますが、ここは生徒が思い付かない原因によるものがよいかと思います。例えば、「実は、ルータの電源が抜けいただけ」といった、あまり教科書に載っていないようなもので現実的に起こり得るものがよいかな、と思っています。また、生徒の考えた「原因と解決方法」について、その精度について解説したり、原因と対策があっているかなどを解説したり、評価としてフィードバックすることは必須かと思います。
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後に、今回の発表についてのまとめです。最初に申し上げたように、先生方には、いろいろな不安があると思いますが、動画を活用することで、いろいろなことが解決の方向に進められるものもあるのではないかと思います。
今回の発表では、年間計画や単元計画まで立てられればよかったのですが、そこまではできておりません。
しかし、動画というこれまでは容易に個別に活用でいなかった手段が学習ツールとして使えるということが大きなポイントになると思います。ただし、動画やICTは単なる道具であり、使うことが目的とならないようにして、みんなで挑戦し、精査していくことは重要な視点であると思います。私も立場上、授業を直接できないのですが、子供たちと向き合い、頑張る先生を支え、子供たちの学びが充実するよう取り組んでいきます。そして、今こそ、先生たちも自ら協働し、切磋琢磨していただきたいと思います。
[質疑応答]
Q1.和歌山県で授業動画を共有しているということですが、県外には公開されていますか。
A1.肥田先生
こちらはまだ県内になっています。県内の先生方は、全員Microsoftのアカウントを持っているので、現在はStreamというソフトを使って、アカウントを持っている人が見られる、という形になっています。県外や管轄外まで視聴対象を広げると、著作権や肖像権がもう一段階厳しくなるので、慎重になっているということがあります。
Q2.この実践は反転学習のイメージでよいのでしょうか。また、動画教材コンテンツの質の善し悪しがかなり影響しそうですが、教材は全て手作りなのでしょうか。何か共有サイトがあるのでしょうか。
A2.肥田先生
私のイメージとしては、子どもたちが自分で主体的に学ぶという意味では、ある意味、反転学習なのかもしれませんが、事前に学んでくるだけではない、という想定をしています。教材は、全て先生方の自作です。ただ、まだ数が揃っていないので、今回ご紹介した案のところまでは、まだ少し遠いところがありますが、これからは、より内容を充実させて、まずはどんなふうに授業を組むかとか、どんなことを意図して動画を活用するかというところまで決めて「動画を作る」ということができれば、と思います。
ちなみに和歌山県では、全ての教科について、この動画配信による学びを進めており、各教科の研究会にお願いして動画を作成していただいています。
共有サイトについては、Q1で回答しています。
Q3.生徒に解説動画を作らせるなど、動画で成果をアウトプットするという取り組みはされていますか。
A3.肥田先生
現状は、まだそこまで行っていないところがありますが、生徒に動画を作らせるというのは、とても面白い取り組みだと思っているので、学校でもチャレンジしていただきたいと思っています。
生徒の1人1台端末のスペックの問題もあるので、単に動画を撮影して共有するという形になるかもしれませんが、自分たちで発信するということを体験するのも、生徒の資質・能力の向上につながると思います。ありがたいご意見でした。
第14回全国高等学校情報教育研究会全国大会(大阪大会) 口頭発表より