事例228
こんな情報デザインの授業やってみた ~情報デザイン×知的財産権×プレゼンテーション~
愛知県立高蔵寺高校 田中 健先生
本日お話しする内容は、いよいよ始まった「情報Ⅰ」について、今も教材研究に苦労されている先生方、2年次履修のために今からネタ探しに余念がない先生方に、新たに学習単元に設定された「情報デザイン」の展開について2022年度のネタとしてご紹介するものです。
いつものように、肩の力が抜けきった「こんな授業をやってみた」的な実践ですので、これは良さそうと思われたらぜひ参考にしていただければ幸いです。
「情報I」展開に必要な3つのマインドセット
はじめに、「情報Ⅰ」の授業を効果的に展開していくために欠かせないと考える3観点、各所で吹聴しているマインドセットです。
1つ目、これはただでさえ日進月歩の世界である教科「情報」ですから、当然のこととして、皆さんにも賛同いただけると思いますので多くは語りません。
2つ目は、今まさに、1年次で「情報Ⅰ」の授業を担当していらっしゃる先生方にとっては、喫緊の課題ではないかと思いますが、2単位では授業時間が全く足りないのではないでしょうか。そうなればこそ、今回のサブタイトルにも示しました「情報デザイン×知的財産権×プレゼンテーション」です。
各単元のエッセンスを抽出し、先生による一方的に解説を極力排除して、生徒に教科書の世界ではなく日常の一部に関連する自分ごととして考えさせる工夫をすれば、時間を捻出できるのではないかという考えです。いかにして各単元を効率的に回すのか、ぜひともに考えていければと思います。
そのためには、3番目の「教え込むというレクチャー型の授業スタイル」を変えないと、先生側のパラダイムシフトを起こすことはできません。普段、教壇に立っている方にはおわかりでしょうが、授業をする側としては、その内容を解説し切らないと不安だったり、授業した気にならなかったりすることはないでしょうか。まずここを変えないといけないというのが立脚点です。先生方の気持ちのありようを、いかに変化させられるか、という視点でこの分科会発表に臨んでいます。
大学進学後にも有用な能力の養成を見越した、生徒が学びたくなる授業の設計を目指す
今回の実践の舞台、現任校の愛知県立高蔵寺高校です。この少子化のご時世に普通科9クラスというなかなかの規模で、情報科の授業は週18コマ。当然ながら、ワンオペです。
何といっても目を引くのが、情報が3年次履修ということでしょうか。これは、現任校初の情報科専任として2020年に異動をしたときには、既に「新教育課程でも情報科は3年次履修」と決定事項になっていて、異の唱えようがありませんでした。公立高校でのボトムアップは望むべくもないので、こういうところにこそ、情報は1年次履修としなさい、と無機質なトップダウンを期待したいところでもあります。
その他、瑣末な環境がこちらです。お話ししたとおり、赴任するまでは情報科の専任がいなかったので、古き佳きというと語弊がありますが、昔ながらの普通科進学校あるあるテンプレートがまさにそのまま当てはまる、という状態でした。
非常勤講師に一任の2コマですので、1学期Word、2学期Excel…という、まさに「THE 情報リテラシー」です。3年生で受験勉強に追い込まれているのはわかるのですが、毎年進路指導部が発行する冊子に「後輩への言葉」という上級生からのアドバイスが掲載されるページがあり、「体育と情報は唯一の息抜き」と書かれるようなありさまでした。赴任早々、参考資料として渡された中にそんな文言があり、これはやりがいがあるぞ、と。
ですから、まずこの流れを変えなければならない。現任校の3年生にとって有用であり、学びたいと思えるものは何か、「大学進学後にも有用な能力の養成」を見越すことを第一義として、「情報Ⅰ」で目標として掲げられているものとうまく融合させるところから着手しました。
これは、今後普通科進学校に、初の情報科専任として異動を控える先生方にも持っておいていただきたい心構えでもあります。時代に即して、その学校の生徒が前向きに情報を学ぼうと思えるような内容を授業に取り入れることを第一に考えていただければと思います。
「情報I」の内容を盛り込んで「情報の科学」「社会と情報」の授業を改編する
こちらが昨年、2021年度に実施した内容です。
文系が5クラス、理系が4クラスあって、それぞれ「社会と情報」、「情報の科学」を履修していますが、それぞれに「情報I」の内容を盛り込めないかと考えて実施した年間指導実績です。理系で論理回路を扱ったこと、文系では簡単なWebプログラミングにしたことの違い以外は、ほぼ同じ内容としています。
特に力を入れているのが、最後の約15時間分、2学期の後半と3学期に亘る「卒業研究」に関しては、95%が4年制大学に進学するという生徒に向けて、「大多数が大学に進学する君たちが大学で行う書くことになる研究の進め方とはこういうもので、卒業論文とはこういうものだ」と4年後を見据えた学部の卒研ワクチンのような扱いです。この実践に関しては、情報処理学会の学会誌や、2022年秋に発行される情報文化学会の学会誌にも掲載されますので、そちらもご覧ください。
今回の発表が相当するのが、2022年度の4月の部分です。3年次で「情報」の授業を初めて受ける生徒に、「新課程の1年生は新しい内容を学んでいるので、君たちも時代に即したものを」ということで、1年かけて田中という教科担任が展開する「情報」を知ってもらうための第一歩として設定しました。
全高情研の予稿集にも書きましたが、ただぼけーっと座って過ごしていると予期せぬタイミングで予期せぬ方向から猛烈なツッコミが入り生徒はただ焦るというスタイルで、そのせいで一部の生徒には大変不評なのは間違いないです。昨今の授業づくりの「主体的」とはどのようなことなのかということを、日常の一コマの中から自分ごととして捉えさせ、実感させたいという思いで設計しています。
「プロダクトデザイン」を通して情報デザインを学ぶ
単元としての「情報デザイン」が設定されていなかった旧課程では、ピクトグラムは比較的目新しいものでしたが、オリンピックが紹介され人口に膾炙することになったため、今年度は目先を変えて「プロダクトデザイン」という大枠で捉えてみることとしました。
下図が実際に生徒に配付した資料です。既に知られたピクトグラムをスタート地点とした展開で、アフォーダンス、シグニファイア、メンタルモデルというところまで扱いました。これは、現代社会に実際にあるもの、また自分自身で何かプロダクトデザインを考えた際に、諸権利がどのように守られているのか、自分の生み出したものがあるとすればどのように守られるのか、という「自分ごと」として捉えさせるという内容です。
ただ「何かを作ってみよう」だけでは、デザインが単なるお絵描きになってしまいますし、デザインの核心となる部分が抜け落ちることも危惧されます。そこで、デザインとしての制作の意図を口頭で補足説明させる、というクロージングになるよう展開してみました。
[ワークシートのダウンロードはこちらから]
この授業の位置付けと目標が下図です。年間通して私の授業では、喋り倒して聴き倒すという方針で、これは現任校では3年間ずっと行ってきています。
何か日常に即したお題を与えて、そのお題に対して自分の意見を書かせ、その上で教室の中を歩き回って人の意見を聞いて共有し、自分の意見と比較したり検討したりして、その後、自分の意見が変わったか・変わらなかったのか、深まったのかどうかといったことを、確実に言語化させて共有するという活動です。
お題への意見を言語化し、他者の考えと突き合わせる。その上で考えを深めさせ、必要に応じて軌道修正させ、最後にクラス全体で共有します。全体共有の時間では「なぜその考えに至ったのか」ということについて容赦ないツッコミが入りますので、しっかりとした意見をもっておくことが自動的に課されます。これがまた評判が悪いのですが。年度の最初の授業ですので、これから毎回行う活動の基本理念と展開方法について、ここで体感できるようにしました。
「デザイン」と「アート」の違いを自分の言葉で表現するアイスブレイク
この流れをワークシートで確認してみます。「情報デザイン」にまつわるお題として、ピクトグラムを提示して「これはデザインなのか、アートなのか」という単元を総括するようなものを設けます。生徒の活動は、
①自分の意見を3分間で言語化する
②4分間で教室内を動き回って、他者の考えの共有と修正を行う
③自分の意見を修正する
とまとめられます。その後ランダムに5人ほど指名してホワイトボードに記述し、その後補足説明を促しながら全体での共通理解を図るという単元のアイスブレイクとして用いています。
補足説明では、状況に応じて「これについてどう考るか? なぜ、その考えに至ったのか」という田中式のツッコミが入りますので、「わかりません」で済ませたり沈黙で切り抜けたりすることができません。この詰め寄る圧が一番の不評ポイントなのですが、正解・不正解に拘泥することなく、自分の考えを表明することの大切さを実感してもらえたら、という目的のもと、楽しん…心を鬼にして臨んでいます。受験生にありがちな、正解しか口に出してはならないという思考の生徒からは特に嫌がられていると思います。こうした過程を経て「デザインはアートとは根本から違うもので、現代社会に数多く取り入れられている」ということを全体で共有するという内容です。
知的財産権を自分のこととして考える
次に、日常生活との関わりを認識させます。日常生活において何気なく利用するものにもデザインの考え方が取り入れられており、だからこそプロダクトデザインとして成立している、というはじまりです。アフォーダンス、シグニファイア、メンタルモデルといった用語については説明が不可避なので、ある程度の語句解説の後、自動販売機横のゴミ箱の口を〇型にするシグニファイアの効果を、今や見かけなくなった大きい口のゴミ箱と比較させることで理解できるようにしました。日常生活の物事に対して「なるほど!」と思えるような題材の選択は非常に大事で、理解度に大きく直結するものでもあります。
先ほど引き合いに出したゴミ箱の口がペットボトル型なのは、当たり前と感じるかもしれませんが、特定の行動を人間にさせるためのシグニファイアです。これがプロダクトデザインの一端であり、新たな発明として生み出すことができる。自分ならば、どんな意図をもって、どのようなデザインにするか、ということを考えさせました。そして、その考えは誰のものか、ということで知的財産権へもっていきます。
知的財産権については、少し前にフリック入力の特許が話題になったことがありましたが、情報発信が非常に簡単になった今、デザイナーやクリエイターとして身を立てたい、という思いの生徒が増えてきているようです。新しいものの創作には、諸権利の問題は避けて通ることはできません。それを自分ごととして捉えさせるために、デザインをするこの学習活動に著作権という内容を上乗せします。著作権というと、どうしても硬質な法律に話をもっていきがちですが、われわれは法曹界の人間ではないので、教科書に記述されている法律を滔々と語る資格はありません。そうではなく、現実世界では各種権利をどう扱っているのかを生徒の目で確かめさせる、誰もがよく知っているような創作物ができたなら、どんな方法でその権利が守れるのか、ということを実感させることが仕事だと考えます。
そこで、特許庁のウェブサイトや、デザインの登録番号などをもとにして、創作物がどのように個人に帰属しているかを理解させる時間を取りました。自分が考えたものがどのような意味合いを持つのか、どうしてそうなるのかということに興味を持って、自分から調べるように誘導できれば、納得して理解につなげることができるのではないか。結果としてそれが、良いダウンサイジングになるのではないか、という試みです。
生徒を観察するに、特許庁のウェブサイトを起点にして色々と思いを巡らせているようでした。不思議なもので、初速を目的とともにきちんと与えると、生徒はあとは勝手に自走するものです。程度問題ではありますが、これを放任とするか自走と捉えるかで、前述のパラダイムシフトが起きるのではないかと考えています。目的がきっちり伝われば先生の解説だけのよりも、遥かに多くのことを学べるのではないでしょうか。とはいえ、こうした試みは始めたばかりなので、色々なご意見いただければと思います。
長々と説明してきましたが、この単元の授業の進め方としては全5時間。1時間目オリエンテーションと「デザインとアート」について。2時間目がアフォーダンスや諸権利の理解とプロダクトデザインの構想、3時間目にデザイン制作開始、4時間目にデザイン完成と必要な発表原稿の練り上げ、5時間目プレゼンテーションと評価という流れです。
「何を目的としてどのような創意工夫を施せるか」を考えてデザインし、その意図をプレゼンする
デザイン制作では、自分自身が何か製品をデザインするとすれば、あるいは今あるものをより使いやすくするデザインがあるとすれば、何を目的としてどのような創意工夫を施せるか、ということを考えさせ、200×200ピクセルのキャンバスに、「情報のデジタル表現」における画素の学習も兼ねて汎用的なペイントソフトで表現させます。
ここで生きてくるのが、先に考えさせた「デザインとアートの違い」です。美の表現ではなく、それが何を指しているのかが見る人全員にわかるように、という前提条件があると、単なるお絵描きになり果てるリスクは軽減できます。
さらに、画像だけでは伝わりきらない構想の意図もあると考えられるため、制作の意図を口頭表現する、というプレゼンテーションにつなぎます。
4時間目の授業にこのハンドアウトを配付しました。デザイン完成後、5時間目で全生徒がプレゼンテーションに臨めるよう、一人あたり40~45秒でデザインの意図や補足を300~400字でまとめることとしました。プレゼンテーションでは手持ち資料の携帯禁止、ワークシートは評価に算入するために提出としたことで、取り組み状況は上々でした。
下図が、生徒が提出したワークシートの例で、左側が発表原稿、右側が投票と反省です。当日の発表順はくじ引きで発表直前に決まるという緊張感のあるスタイルにしたので、ぎりぎりまで準備に余念がない生徒も多く見られました。
「車の運転中の片手開け」は実は違法でよろしくないということで、発表原稿に取り消し線が引かれているのも生々しいところです。緊張してどうしても早口になる生徒が多く、だいたいこれくらいの分量で40秒程度です。
※クリックすると拡大します
[ワークシートのダウンロードはこちらから]
原稿については、構成の箇条書きも可とし、軽くまとめるスタイルを好む生徒にも合わせました。5時間目、クラス内全生徒のプレゼンテーションが終了したらデザインの評価に移ります。
画面に該当クラス全生徒分のデザインを表示し、画像とプレゼンテーションを総合して、自分が一番「なるほど」と思えるデザインに理由をつけて投票という形にし、投票された生徒には評価者からのコメントがフィードバックされるしくみになっています。最後にこの5時間の授業の内容と取り組みについての振り返りを行ってこの単元のクロージングとしました。
生徒にとっては息つく暇のない年度当初の5時間となりましたが、「この情報の授業は、ただ座っているだけではどうにもならん」ということは、肌感覚としてしっかり意識付けられたと考えています。
反省の抜粋がこちらです。評価の対象にするという一声が効いたのか殊勝なことが書かれていますが、今後いろいろな文句やクレームを書いてくる生徒が出てくることを密かに期待しています。
ともに教科「情報」を教える先生方へ
以上、授業実践事例紹介でした。
最後に、情報を教える全国の先生方に、3点ご提案をして締めくくりとしたいと思います。
1点目は、「生徒の記憶に残る情報の授業」づくりを心掛けてはいかがですか、ということです。
お話ししてきたとおり、私の授業では「自分の考えは何ですか」ということを生徒にさんざん追求します。これだけではなく、最後の卒業研究では、グループごとに作成させた論文を共通テスト以降に編集・製本して、卒業記念品として卒業式前日に手渡すなど、「あんなことやらされたな」と、卒業後にも想い出に残るようにインパクトの強い授業を有形無形でつくっています。この心構えは、ひいては、今後の共通テストで点数を取るためだけではない、塾的な授業を抑止するための大きな推進力になるのではないでしょうか。
2点目は、「毎年1つ、新しい授業に挑戦してみよう」というものです。冒頭にお話ししたアップデートと連動しますが、教科「情報」で学習する内容は日進月歩。教科書の記述は、学習指導要領の改訂のタイミングで書き換えられるだけなので、乱暴な言い方をすれば、検定が終わって世に出た時点で過去のものになります。年間の授業を一通り作れば、毎年それを使い回せるという教科ではない、というのも「情報」の宿命です。
とはいえ、全てを改変するのは現実的ではないので、毎年何か1つ、新しいことに挑戦してみることを自らに課してはいかがでしょうか。お話ししたこんなしょうもない実践でもいわば努力です。初速を自らに与えるのはなかなか厳しいのですが、いざ毎年やってみると、意外とできてしまうものです。とある日本人メジャーリーガーのことばにもありますが、努力ではなく習慣と捉えられるようになると、毎年の挑戦が楽しいものになるはずです。実際そうなので…!
3点目が、「先生方の授業実践事例の共有」です。教科「情報」の必修化が始まって、はや20年。今なお大多数の学校で、まだまだ授業担当者のワンオペ状態が続いています。授業改善の根幹である他の授業を参観する機会が著しく乏しいのは相変わらずですが、文句を言っても始まらないのが現状です。
そこで、今この発表をお聞きの先生方には、ぜひこの全高情研で授業実践を公開していただければと思っています。
こんな「授業やってみた」的な、YouTubeお試し投稿レベルで全く構いません。「私の授業はこんな感じですが、改善点があったら教えてください」くらいの勢いで出てみると、神レベルの先駆者を含めた多くの先生方から様々な指摘が得られて、多くの気づきが得られるはずです。
そろそろお時間となりました。新しい授業に関しては、話は尽きないですし、今は昔の全高情研であれば、教育懇親会で第2ラウンドというお楽しみはあるのですが、それはコロナを克服した次回大会へのおあずけとしたいと思います。
ここまでお聞きいただいた先生方も、そろそろリアルタイムが恋しくなってきて、オンラインの伝わらなさというようなものも実感されているのではないかと思います。今後もいろいろな先生方の授業のお話をお聞かせいただければ幸いです。生涯にわたって、よい授業づくりを一緒に行っていければ幸いです。これまで以上に精力的に活動していきたいと考えておりますので、いつでもご連絡くだされば、いろいろな情報交換ができると思います。
最後に、2020年、幻となってしまった愛知大会のタイトルとして名付けた「教科『情報』第3ステージ」の幕開けです。新たな教科「情報」をこれから共に作り上げていきましょう。
[質疑応答]
Q1.評価について詳しくお聞きしたいと思います。生徒から多くの作品が出てくると思います。それを先生が一人でご覧になっていらっしゃるのでしょうか。評価やチェックに関する先生の工夫があればお聞かせください。
A1.田中先生
正直、めっちゃ大変です。評価をアウトソーシングできればどれだけ楽かと思えるほどに。ワンオペ実施なので、レギュレーションにのっとっているか、とするのが一番確実で客観的な評価ができると思います。例えば「200×200ピクセルでデザインしたか」「デザインとその意図に乖離がないか」「発表を45秒で収められたか」というチェック項目を定めて、できていれば「B」、という形が落としどころだと思います。
それ以上の「A」評定に関しては、確かにこの考えは良いと思えるものを選定しないといけません。そこで、他者評価として投票の結果を点数化して加点する、というのが第一と考えました。そのほか、これは新機軸だと授業者として思えるもの、も含めています。ワークシートを生徒にフィードバックするのにとんでもない時間がかかりましたが、どちらかに当てはまれば「A」でしょうか。
大枠として、「これを完成させよ」を満たしていれば「B」。その上で、他の生徒から「いいね」と言われたもの、あとは授業者が「これは本質をつかんでいるな」と思ったものがある場合には「A」とした、ということになります。
Q2.先生の授業は、プロダクトデザインということで、意匠考案を意識された実践的な取り組みだと思
います。生徒たちには、法律について詳細な知識は必要ないものの、「著作権」と「意匠権」は、一般
的に混同されやすいと思います。この違いについて理解させるために、どのような指導をされていら
っしゃいますでしょうか。
A2.田中先生
はっきり言ってしまうと、指導はしていません。私も法律の専門家ではないので、その辺りは難しい部分です。
特許庁のサイトを見せると、それぞれ「この内容に関してはこのように申請できますよ」ということが書かれています。先ほど、「自走」という言葉を出しましたが、生徒が自ら「これ何だろう」ということを考えさせることが「自走」の入り口だと思います。もちろん、そこにはワンオペで指導することに感けて放棄しない、間違いを間違いのままで放置させない、という仕組みが必要になり、うまく落としどころを見つけていかなければならないとは考えています。その中で、「これってどうなのかな」と考えた生徒は質問しに来ますから、それで解決していくというスタイルを採りました。ですが、まだまだ検討の余地が大いにあります。
なので、こちらから教え込むということはせず、自分で調べて根拠を考えてみなさい。それが、どれに当たるのかということを考えてみなさい。そして、人の発表を聞くときは、その人の発表が、どの権利に値するのかということについても考えてみなさい、ということで、プレゼンテーションと並走させる、というしかけも設定してみました。
解説し過ぎない、教え込み過ぎない。しかし、教え足りないという部分の境界線がどこにあるのかは、今後改めて考えていきたいなという観点です。
第15回全国高等学校情報教育研究会全国大会(オンライン大会) 分科会発表より