事例234
情報科の先生はポートフォリオを作って公開しよう!
神奈川県立希望ケ丘高校 校長 柴田 功先生
本日は「情報科の先生はポートフォリオを作って公開しよう!」というテーマで発表します。
あなたは情報の先生 第〇世代?
情報科の先生をこのように世代ごとに分けてみました。私は、この中の「第1世代」という、15日間の講習を受けて免許を取得した世代です。現在、だんだんと人数が減ってきている世代だと思います。そして第2世代は、自分は「情報」の授業は受けたことはないが、情報科の教員として採用された方。そして第3世代は、「情報」の授業を受けたことがあって、情報科の教員として採用された方です。今後は、第4世代として、「情報」の共通テストを受けて、情報科の教員になる方が誕生して、世代がだんだんと広がっていきます。今日は、第1世代の代表としてお伝えします。
情報の先生は大概1校1人~授業の手法をどうやって共有する?
まず、ほとんどの学校が、情報科の先生は1校に1人なのではないでしょうか。そして、「情報」の授業作りは、「どんな授業を行ったらいいのかな?」と1人で悩んでいることが多いと思います。
では、どうやったら、全国にいる優れた授業を行っている先生の授業を、例えば新採用の先生や、情報科の教員になりたての先生に伝えることができるのでしょうか。
こちらは、参照モデルの例を参考にして作りました。学習指導要領や教科書は共通であるとしても、学習指導案は学校によって違います。そのため、優れた学習指導案や教材、授業の実践事例を共有することが良いと思います。
一番良いのは、授業を見学し合うことですが、そんなに簡単にできることではないですよね。ですから、授業を実際に見せ合うこと以外のところで、できるだけ具体的なものを共有するというのが、良い授業作りを広める手段になるのではないかと考えています。
文部科学省も、実践事例や授業のコンテンツを提供してくれています(※1)。非常に、ありがたいことなのですが、文部科学省がホームページに載せている例は、まだ限られたもので、もっともっとたくさんの事例や多様な事例が出てくると良いですし、先生方は、もっともっと魅力ある授業をたくさん行っていると思います。
高等学校情報科 文部科学省作成 教員研修用教材・高等学校情報科「情報Ⅰ」学習動画
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教材ポートフォリオは何をどこに掲載するのか
これらを共有する方法を提案します。
まず、教材以外にどういったものを共有したら良いのかということですが、一番具体的な代表は、学習指導案です。それから、年間指導計画・指導と評価の計画や、教材プリント・スライドを共有できると非常に良いと思います。
また、それらを「そのまま使ってもいいよ」と提供している方がいたら、そのまま使う先生が出てきても良いと思います。当然、著作権の問題が出てきますが、情報科の先生なら、うまく工夫して、著作権法35条に配慮しながら共有することもできるのではないでしょうか。
また、自分の学校の生徒向けに作った授業動画を、先生が一人で抱え込んでいたらもったいないです。「私の授業動画を使っていいよ」という先生が、どんどんどんどん出てくると良いと思います。あとは、授業の実践事例も動画にしている方が多いと思うので、自分でYouTubeチャンネルを作って公開することができると良いと思います。さらに、生徒の作品が公開できると一番良いですね。これは、生徒の許諾を得て、学校のホームページに公開するといった手段があります。
次に、教材を掲載する方法としては、学校のホームページに掲載するということが考えられます。ただし、CMSだったり、ホームページの担当者が別にいたりすることがあって面倒ですよね。また、文部科学省のホームページには、ほんの一部の方の事例しか掲載されていません。SNSを使うという手もありますが、個人的なものに繋がりやすいですから、少し向かないかなと思います。
では、どうしたら良いのかと言うと、Googleサイトなどを使って、学校の先生としてのオフィシャルポートフォリオを作っていただけたらと思います。それから、YouTubeチャンネルを開設して、見せるという手もあります。
こちらが、教材ポートフォリオのイメージです。「情報Ⅰ」は4つの単元があります。それぞれの教材のワークシートやスライド、授業動画、指導案、実践例を動画で発表したものなどを、そこにまとめます。4つの単元を全部束ねて、「私の『情報Ⅰ』のポートフォリオはこれです!」とまとめてみたら良いと思います。「いや、こんなの大変だよ」と思われるかもしれませんが、既にクラウドに教材を掲載していれば、あと一息です。
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22年前に私は「情報科.net」(※2)というサイトを作りました。こちらもポートフォリオと言えるのではないかと思います。
「情報A」「情報B」「情報C」の時代ですが、「こんな授業をしてみたらいかがでしょうか?」と、学校の事例を積極的に発信し、当時は色々な人が見てくれました。このように、第1世代の情報科の先生として、事例を紹介しましたが、今でしたらもっと新しい方法があると思います。ぜひ、積極的に情報発信、教材の共有を目指して欲しいです。
※2 「情報科.net」
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ポートフォリオを作ると何が良いかというと、先生は自宅にいながらポートフォリオの教材をアップすることができることです。学校では、生徒がそれらをダウンロードして教材をプリントしたり、動画を視聴したりすることもできます。
生徒にとってみれば、学校だけでなく自宅でも取り組むことができます。学校のパソコン教室のサーバで何かしようとすると、広がりがないのです。そのため、クラウドベースで授業作りをするのがお勧めです。これからの「情報」の授業には、先生も生徒も、家でも学校でも作業ができる環境が良いのではないかと思います。
そしてこのポートフォリオを、各先生が作ってインターネット上で公開すれば、お互いの教材を見せ合うことができます。個室で悩んでいた情報科の先生が、インターネット上では、お互いにどんどん共有していって欲しいです。
実は第1世代の人たちは、これを取り組みかけて、結構、失敗してしまったのです。なぜかと言うと、ブログで始めた方が多く、自分の感想や思いが強く出過ぎて、時に批判的なことを書いてしまったりして、いろいろ失敗してしまった方が多かったのです。
ですから、ポートフォリオで自分の教材をひたむきに掲載していれば、学校も認めますし、教育委員会も認めていくと思います。今の新しい世代は、気にせず、チャレンジして欲しいです。
教材共有貢献度のルーブリック
教材共有をみんなで行おう、ということを提案するにあたって、教材共有に向けた貢献度のルーブリック作ってみました。
積極的に教材をWebに公開し、事例発表をしている人は、貢献度「S」です。情報科の授業を良くしようということに、大変貢献している方です。
一方、自分は教材共有をそこまでする自信が無いという方もいらっしゃいますが、最低限、「〇〇先生の教材を使って、とても便利です、良かったです」と、発表している人に感謝を伝えたり、コメントをしたりして欲しいです。こういったことが、発表したり、情報共有や教材を提供したりする人の励みになるのです。黙って使っているだけというのは、自分の授業は良くなるかも知れません。ですが、そういった方にも、日本中のこういった機運を高めるということに貢献してほしいと思います。
まず情報科の先生が積極的な情報発信を
この動画で伝えたいことを3点でまとめました。まず、ポートフォリオは人生を豊かにするということを実感できます。私は、自分でホームページを作ったことで、たくさんの人と出逢い、たくさんのチャンスを得ました。これは生涯に渡って、学び続けるきっかけになると思います。
また、どの教科でも当てはまりますが、生徒自身にも、自分の活動を最後にポートフォリオにまとめさせる授業作りを行って欲しいです。そして、高校を卒業しても継続し、生徒たちに自分の生涯のポートフォリオを作って欲しいです。これにはまず、情報科の先生がポートフォリオを作るのをお願いしたいです。既にポートフォリオを作っている先生もいらっしゃいますが、「情報」の授業でポートフォリオを作ることを始め、いろいろな教科でもポートフォリオを作ることを広めて欲しいです。
「情報」の授業がGIGAスクールの推進役にもなり、ポートフォリオ作りの推進役になるためにも、ぜひ、情報科の先生が積極的に情報発信していっていただきたいと思います。
第15回全国高等学校情報教育研究会全国大会(オンライン大会) 動画発表より