事例259
情報Ⅰ 1人1台端末対応のこんな教材作りました
神奈川県立上鶴間高校 相馬臣彦先生
高校GIGAスクール構想で、生徒の1人1台端末が本格稼働しています。
私は今年、「調べる」「入力する」以外に、1人1台の特性を生かして「体験する」という使い方ができないかを考えて、教材を作っています。
また、全員が同じ機種を持っているわけではなく、ChromebookやiPadなど、さまざまな端末が教室の中にある場合、Windows機ではできたけれどChromebookでは工夫が必要といった問題が出てきますので、そんな点も意識しました。
色のデジタル化・混色を体験する
はじめに、デジタル化の授業で作った教材をご紹介します。
色のデジタル化には、教科書に対応したツールがいろいろありますが、特に1人1台端末で動かすことを意識して作ったのが「RGBメーカー」です。光の三原色である赤、緑、青について、それぞれ256段階の数字を組み合わせて色を作っていきます。
授業の中で階調の話やディスプレイの色の仕組みなどを話してから、実際に色を作る実習に使います。
使い方は、赤・青・緑のそれぞれの階調に0から255の数字を入れて、「RGBで色を作るよ~」と書かれたボタンを押すと、設定した数値で色を作ることができます。例えば、「この色を作るならどんな色の・どれくらいの組み合わせかな」といった投げかけに対し、色づくりを体験することができます。
実際の教材の動きを動画でご覧ください。
次は、ネットワークの授業で作った教材です。
1つ目は、公開鍵暗号体験ツールです。まず鍵のペアを作るところから体験し、相手に自分の公開鍵を見せてメッセージを作り、自分の秘密鍵でメッセージを元に戻すところまで行います。
公開鍵暗号の暗号化と複合を体験する
授業の最初に、公開鍵暗号方式の演習シートを作ります。鍵の素になるpとqの素数をメモした上で、公開鍵は何か、PQの値は何か、秘密鍵は何かということを記入させました。
次に、人には絶対見せないというルールを生徒に伝え、もう1枚プリント配ります。
自分の公開鍵は何番、PQの値は何番と記入し、隣の人と交換します。
受け取った人は、ここで示された公開鍵とPQをもとに暗号メッセージを作り、持ち主に返します。持ち主は自分の秘密鍵を用いてメッセージを解読、復号していくという実習になります。
具体的な動作の様子は動画でご覧ください。
GoogleColaboratoryでネットワークの接続経路を体験する
次はネットワークツール「Tracert(トレースrt)みたいなツール:トレスる」です。ここでは、コマンドを使用したいと考えました。Chromebookでもコマンドはありますが、授業ではiPadを使用する生徒もいるため、共通して使えるものを作りたいと考えました。
このツールはGoogleColaboratoryで作っています。実行するためには2つ準備があります。
1つ目は必要なパッケージをインストールする作業、2つ目がネットワークコマンドプログラムの読み込みです。それが完了したらツールを起動していきます。
ネットワークコマンドを模したプログラムでは、DNSのnslookupの関数もあればパケットの経路を調べるtracerouteもありますが、Google Colaboratoryが実行されているサーバがスタート地点という点が本来のものと違います。
おまけ的なツールもご紹介します。
8ビットまでの2進数を求める計算の中で使える、2進数の検算ツールです。8ビットを越えるかどうかをチェックし、8ビットまでのものについては2進数が表示され、簡易的ではありますが、どうやって求めたかの筆算が出るようにしています。これは計算練習のときに使えるツールです。
小さな発見のあるツールで可視化することで、難しくないように、「楽しい!」で終わらせないように
ツールとはいえ、教材の1つですから、「小さな発見があるツールでありたい」と考え、「なるほどこういうことか、こんな意味だったのか」と思ってもらえるように作りました。
可視化は理解につながるので、見た目は重要です。逆に、作ってみて効果的ではなかったものについては、ツールが要らないのか、それともツール自体に問題があったのか、を検討することが改善のポイントであると捉えています。
可視化したり見た目が変わったりすると、楽しくなって取り組みは良くなるのですが、「楽しいだけ」にならないよう、学びが生徒たちの中に残るようにすべきだと考えています。また、せっかく良い物を作っても、難しくなってしまうとそれだけで活用場面が減ってしまいますので、これも気を付けるべきポイントです。
今後も発見のある授業を考えていきたいと思います。
神奈川県情報部会実践事例報告会 2022 オンライン オンデマンド発表より