事例308
高校版GIGAスクールで何を創造するか
神奈川県立希望ケ丘高校校長 柴田功先生
今日は、「高校版GIGAスクールで何を創造するか」というテーマでお話しします。自己紹介と学校紹介はこちらのスライドの通りです。
「高校版GIGAスクールとは何か」、「何のために1人1台端末なのか」、そして「事例紹介」という内容で進めていきます。
Ⅰ.高校版GIGAスクールとは何か
まず、高校版GIGAスクールは小中学校と高校のGIGAスクールはだいぶ状況が違いますので、そこからご紹介します。
文部科学省の方からは、このスライドのようなメッセージや通知が出ています。高校と義務教育で異なるのは、高校は1人1台端末の補助金がないため、各自治体が工夫して取り組んでいくことになっていることです。
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こちらが、今年7月に出た令和5年度当初の学習者用端末の整備状況の報告です。設置者(=自治体)が整理したところが青、保護者負担で整備したところが緑ということで、地図で塗り分けてみると、ちょうど半半に分かれた取り組みになっています。
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神奈川県は、保護者負担で整備するという状況になっていますが、今年は1年生と2年生が保護者負担で端末を購入していただいています。
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高校における1人1台端末の整備の方法には、こちらのスライドのように、BYOD、CYOD、BYADといったものがあります。それ以外にも、学校が持っている端末を貸与するという方法もあります。これらを織り交ぜる形で1人1台端末を進めています。
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こちらは、神奈川県が用意した保護者向けの1人1台端末の説明チラシです。
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どの形を取るかについては、各高校によって異なるので、端末がほぼ同じもので揃っている学校もあれば、学校の端末を貸し出してようやく1人1台端末になっている学校もあり、学校ごとに状況は異なります。
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こちらは、私の前任校で準備したチラシです。これを保護者に配布して、「こういったスペックのものを買ってくださいね」という案内をしています。
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その結果、全国的には大体の学校で1人1台端末が進んではいるものの、まだまだ買わせることができていない学校もあると耳にします。
もし端末を買わせたとしてもなかなか授業で使っていないという話も聞きますし、本来GIGA端末を使うべきところをスマートフォンで済ませてしまっている学校もあるようです。
このように、高校版のGIGAスクールというのは自治体や学校ごとにかなり差があります。
本校の場合は端末やOSがバラバラであっても、クラウドサービスが同じであれば、それなりに授業ができますよ、ということをメッセージとしてお伝えしたいと思います。
Ⅱ. 何のための1人1台端末なのか
次に、何のための1人1台端末なのかということをご紹介したいと思います。
1人1台端末には様々なメリットがあり、いろいろな目的で進めていると言えますが、一番大事なのは、このスライドの下の方にある「何かを作成する」というところで使うことだと思います。
つまり、メリットとしてはいろいろなものがありますが、目的を外さないというのが大事です。
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一番大事なのは何かを作り出す創造的な学びであって、オンライン授業や動画の視聴、ノートと鉛筆の代わりになるといったことはメリットにすぎないと思っています。
これは文部科学省の「主体的・対話的で深い学びの実現」のポンチ絵です。ここでは主体的な学びについて、「見通しを持って粘り強く取り組み、自己を振り返って次につなげる」ことが大事だと謳われています。
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ということになると、私が推奨したいのはデジタルポートフォリオです。
ポートフォリオというと、今までは紙のワークシートや作文、レポートなどに穴を2つ開けてファイリングしてしたものですが、それをデジタルでやるのをおすすめしたいと思います。
その結果、動画やホームページのリンク集を作るなど、紙ではできなかったことが可能になりますし、「学びを一つの見通しを持って蓄積していく」ということができるようになります。これは総合型選抜の大学入試にも使うことができますし、生涯にわたって学び続けるプラットフォームとすることも期待できます。
デジタルポートフォリオというと、人によって様々なイメージを持たれるかもしれませんが、私が推奨したいのは、このように単元ごとにWebサイトのページにまとめる、ということをお勧めしたいと思います。
例えば美術であれば、立体造形の作成プロセスを、ラフスケッチ→針金の土台→粘土で肉付け→仕上げという、それぞれの段階で写真を撮って作成プロセスをまとめておくことができます。どのような教科でも、こういった過程を踏んだ活動があると思います。
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これは希望ヶ丘高校のSSHの概念図です。この中にもデジタルポートフォリオが位置付けられ、各教科で探究的な学びをWeb形式でデジタルポートフォリオにまとめていくという活動を推奨しています。ちょうどインスタグラムを更新する感覚を期待しています。
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こちらは、本校の教員が作ったデジタルポートフォリオです。
このように、ワークシートやスライドやアンケートフォームなどの教材をWebサイトでまとめて生徒に提供する。そして、今度は生徒が自分のデジタルポートフォリオを作っていくということを、今まさに行っています。
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Ⅲ.希望ヶ丘高校の事例紹介
ここからは本校の事例を紹介します。
現在「情報Ⅰ」の授業でデジタルポートフォリオの作成をしているところで、まだ完成はしていないので、このようなスケジュールで進めている、ということをご紹介したいと思います。
端末の活用事例がこちらです。左上は、授業の中で皆の意見を収集して共有しています。こういった活動は、どの授業のどの単元であっても使えると思います。
他には小テストを100点になるまで繰り返しやる、ということも行っています。
作文はパソコンで書く生徒もいれば、スマートフォンを使う生徒もいます。これはどちらでもいいよ、ということにしています。
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またプレゼンの場面では、発表する人がPCを使うのは当たり前ですが、聞き手の方も、コメントや総合評価をPCで入力して発表者に伝える、ということも行っています。
PCを使って発表資料作成する際には、インターネットだけでなく教科書や書籍など様々な情報源を使います。
さらに、グループで協力してGoogleスライドを共同編集してまとめるということも行っています。
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こちらは、生徒が最近の気になるニュースをクラスの皆に発表するという活動です。発表を聞いた生徒は自分のコメントを入力して発表した生徒に返すとともに、自分の意見として蓄積していくことができます。
「情報Ⅰ」の授業では、デジタルポートフォリオを、Googleサイトで作成するという授業をまさに今行っています。ここでまず「情報I」のデジタルポートフォリオを作ります。
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管理職による授業観察でもデジタルを活用しています。
これは、管理職が全教員の授業を見て、振り返りをして、授業をより良くしていくために行いますが、テーマは「主体的・対話的で深い学び」といった、大きなテーマで授業改善を進めています。
授業観察をして、印象に残った場面はデジタルカメラで撮影します。様々な工夫した授業に出会うことができるのは、管理職の楽しみ、やりがいのあるところでもあります。
こうした授業の優れた取り組みを、こちらの「授業観察シート」の管理職記入欄に記入します。このシートは、各先生がスライドの左側の授業の概略や重点を置く場面、授業で工夫した点(ねらいや注目点)を記入して事前に提出してもらい、私は授業観察をしながら様々なコメントを書いて、先生との面談に使っています。
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例えば、ペアワーク・グループワークをどのように行って、生徒はどんなつぶやきをしたか。それに対して先生がどんな発問をしたか、ということの記録を取っています。
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そして、振り返りでは優れた取組の工夫を具体的に取り上げて褒めるようにします。ここに挙げたのは、全て実際に先生方がされていた工夫です。そして、優れた取組はどんどん紹介しています。
その方法の一つが、本校のホームページの「校長通信」への掲載です。これは私が毎日更新しているもので、ここに優れた事例を紹介して、学校全体で一人一第端末による授業改善を進めています。
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最後にまとめです。
まず、今後誰が1人1台端末を整備していくのか。保護者なのか、各自治体なのか、また国なのか、といった辺りが、まだはっきりしていないところもあります。
経済的に厳しい家庭でも端末をちゃんと使えるようにするという、国の経済支援があればと思っています。
高校の場合は、スマートフォンも文房具の一つとして使うことが有効かと思います。
そして高校の場合は、「何のための1人1台端末なのか」というところを大事にして、その本丸をしっかりやっていくことが大事であると思います。周辺のメリットも大事ですが、まずは創造的な学びをしっかりやっていく、そのためには、デジタルポートフォリオをやっていくのがお勧めと思います。
以上のように授業改善を進めていく中でこそ、1人1台端末の活用が進んでいくと思っています。
神奈川県情報部会実践事例報告会2023オンライン オンデマンド発表より