事例328

2年目の「情報Ⅰ」を終えて

東京都立小平高校 小松一智先生

私からは「2年目の『情報Ⅰ』を終えて」というタイトルで、昨年度と今年度行った「情報Ⅰ」の授業での反省点についてお話します。

 

簡単に自己紹介をさせていただきます。

 

都立の高校の教員で、2005年(平成17年)の採用です。情報の授業が始まったのは平成15年からですから、3期生として採用され、今年度で19年目です。今は東京都立小平高校で情報科の教員をしています。

 

異動したのが昨年度なので、小平高校は2年目です。この2年間「情報Ⅰ」を新しい学校でやりつつ、新しい内容もやりつつ、取り組んできました。大したことではないですけれども、私の実績としては、スライドに挙げたものに携わっています。

 

 

小平高校をご存じでない方も非常に多いと思いますので、少しご紹介します。

 

全日制の普通科ですけれども、ちょっと特殊な学校で、外国語コースが設置されています。普通科の生徒たちと外国語コースの生徒たちでは、ちょっと気質が違います。どちらかというと、外国語コースの生徒たちは、普通科の生徒に比べて実習に熱心に取り組む印象です。

 

小平高校は3学期制ですが、45分7時間授業を実施しています。今までの学校は、50分1コマでしたので、5分短縮しなければならず、いろいろと大変でした。

 

また、1年生に「情報Ⅰ」を2単位、3年生に学校設定科目の「情報Ⅰ演習」を2単位置いています。今は「情報Ⅰ演習」ですけれども、これを「情報Ⅱ」に変更したいと、異動してきたときからずっと言い続けています。早く「情報Ⅱ」に変更できるといいなと思っています。

 

 

1年目の取り組み

1年目は、やはり「情報Ⅰ」をしっかりやらなければいけないかなと思いました。

 

ご存じのとおり、大学入学共通テストに追加されますが、1年生で「情報Ⅰ」を学んでも、実際の試験は3年生ということになります。教科書の並びで進めた方が、生徒にとっては復習をする際にも、理解をしやすいところがあるかなと考え、基本的には教科書の流れで進めていきました。スライドの左から1学期、2学期、3学期の内容です。

 

どうしてもいろいろなことを取り組みたいなとは思うものの、やらなければいけないことが結構ありますので、各学期に大きな実習は1回か2回くらいしか入れられず、1年目が終わりました。

 

ただ、夏には外部教材を使って、オンラインのプログラミングの学習サイトを宿題として与えたり、昨年度の12月の終わりには「情報Ⅰ」の解説動画を見て感想を書く、ということも宿題として行いつつ、3学期につなげたりしてきました。

 

 

1年目を振り返って

1年目を振り返ってどうだったかというと、やはり新しい学校になると、生徒の様子が全然違います。授業のレベル感を合わせるのに、手探りが最後まで続いてしまったかなと思います。

 

特に、普通科の生徒と外国語コースの生徒の気質の違いを私が理解するには、本当に1年かかりました。分野によって難易度の設定がばらけてしまったので、2年目はここを何とかしていきたいと考えていました。

 

 

また、一人1台端末が初めて導入された学年ですので、その端末を一体どう活用していくのかという点もありました。私は、パソコン室、東京都の場合はCALL教室と言っていますけれども、そこで「情報Ⅰ」の授業をしますが、生徒はCALL教室でも一人1台端末である10.5インチのタッチスクリーンのSurfaceを1台持っています。SurfaceとCALL教室のパソコンとの使い分け、すみ分けをどうするのかも、悩みながら行っていました。最終的には、Surfaceをビューアーとして使うようにし、何かを作り出すために使うのではなく、基本的には手元で見るための道具として使っています。

 

加えて、一番の反省点が、スライドの一番下のところです。大学入学共通テストを意識していこうと思いつつも、3年生ではなく1年生なのだから、まずはしっかりと生徒に向けた楽しい授業を、と思っています。ですが、どうしても自分が大学入学共通テストを意識し過ぎてしまいました。

 

ですので、生徒から難しい、分からない、といった後ろ向きのコメントもいただいた1年になったんですね。試作問題を考査の一部に活用したので、ここは難しかった、という声が出てきました。ですが、否定的なコメントだけではなくて、もっとやってみたい、非常に楽しい、といった肯定的なコメントもあった、そんな1年でした。

 

なぜこういうコメントが出てきたかというと、私は、毎時間の授業終わりに、振り返りとして、その日の授業の感想も書かせています。その感想のなかで、こういうところが分からなかった、楽しかった、という声が出てきていました。

 

生徒が楽しく取り組む授業とは

先ほどのコメントで、「分からない」「難しい」と感想があったのはグレーの部分、「もっとやってみたい」「楽しい」という感想は、水色の部分に色分けしています。

 

小平高校は、外国語コースがあるからこそ、文系の学校とよく言われていまして、外国語コースの子に限らず、理数が苦手だと言っている生徒が多いんですね。

 

ですから、2進16進の内容では「分からない」「難しい」「もうやってられない」「何でこれをやらなければいけないの」といったコメントも出てきます。プログラミングのところも、やはりエラーが出てくると、なかなか試行錯誤するところまでたどり着かなくて、難しいと放り投げてしまう生徒たちもいました。

 

一方で情報デザインのところや、モデル化とシミュレーションのところは「楽しいし、もっとやりたい」といったコメントがありました。

 

 

楽しかったところは何だったんだろうと見ていきますと、1学期に行ったポスターを作ろうという授業でした。Adobe Expressを東京都は使えるようになっていますので、そちらを使い、短い時間でポスターを作ります。

 

1年生ですから、まだ中3生の気持ちは分かるでしょということで、君たちがどうやってこの学校を選んだのかを紹介するようなポスター、中3生にこの学校を選んでもらえるようなポスターを作ってみよう、というテーマで、一人一人作成し、相互評価するという内容でした。相互評価では、ギャラリーウォークと言いますか、CALL教室のパソコンにそのポスターを表示しておいて、Surfaceを使って評価を行いました。

 

モデル化とシミュレーションのところでは、東京都の取り組みで、外部人材に学校へ来ていただいて授業をしてもらい、数時間かけてモデル化とシミュレーションを行いました。

 

東京都をより多くの人に楽しんでもらう広告を作るというテーマで、シミュレーションをしながら、どこに広告を出せばいいのかということも考えて進めていく内容です。生徒も非常に活発に取り組んでいたので、よかったかなと思います。

 

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結論から言いますと、グループワークは楽しく取り組むものの、計算は嫌がるところがあったので、この部分を改善していこうと思ったのが2年目です。

 

 

2年目の取り組み

2年目は、教科書を変更しました。

 

教科書の流れで進めたので、内容も少し変えながら進めていましたが、さらにプログラミングとネットワーク構築のところも、面白くできないかなと新たな取り組みも行ってみました。

 

 

具体的には、一通りプログラミングの内容を学んだ上で、みんなでゲームを作ってみる授業です。

 

グループで作らせることにし、作成の条件としては分岐や反復を扱ってみようという縛りを設けて、一体どんなものが出来上がるのか生徒たちに取り組ませてみました。最終的には、出来上がったものを提出してもらって、みんなで実際に動かして評価をするようにしました。

 

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制限は、先ほどお伝えした通り分岐と反復だけだったので、インターネットも自由に使って良いとしたら、半分くらいがコピペに近いような感じで出してきました。どう考えても、こんな長いコードのゲームを君たちが作らないよね、というものです。同じようなのがいくつもあったりしました。でも、オリジナリティーのあるようなくじを作ったグループも出てきて、そういったグループのゲームは、非常に面白くできたのでよかったですね。

 

あとは、ネットワークのところでは、やっぱりネットワークの実習をさせたいと考えていました。

 

何を行ったかというと、ルーターを買ってもらい、グループでルーターを設定して、お互いにネットワークをつないでみようという授業を行いました。2時間の授業として考えて、ルーターの設定は1時間でできるかなと思ったら、全然終わりませんでした。

 

予定としては、2時間目には、どこに迷ったのか、セキュリティを高めるにはどうしたらいいのかなど、知識を深めることを行いたかったのですけども、結局それはできず、2時間かけてルーターの設定をして、最終的には設定ができた生徒が半分くらいいるという結果に終わりました。

 

 

ネットワーク構築の様子は、皆さん、あまり想像がつかないと思うのですけど、真ん中の写真を見てもらうと、お互いに一人1台端末をルーターにつなげて、みんなで構築していくようにしました。

 

 

このような感じで、双方に通信できるといいね、というものです。

 

 

実習を中心として知識を定着させる

このように、実習中心に進めたので「意味が分かってきて楽しい」といった前向きなコメントが出てきました。

 

 

ネットワーク構築の感想の中には「家で、実際に一人で挑戦して復習したいです」といったコメントもありました。

 

 

2年目を終えて、やはり実習を取り入れていかなければならないのだなと思い、来年はさらに実習中心に行っていきたいと思っています。実習中心に知識を定着できるといいなと考えています。

 

ネットワークの授業のように数時間かけて考える実習はきっと生徒の力になると思います。これらは学校の実態にあわせてできると良いかなと思っています。

 

     

実際に、最後の授業でとったコメントには『テスト前に教科書を読むだけで「この授業か‼」と思い出すことができた』とあるように、実習の内容が記憶に残りやすいのだと思います。

 

初めて体験しただろうルータの設定も「楽しかった」というコメントもありました。

 

 

プログラミングの授業は難しいというコメントが多かったですが、「成功できた時はうれしかった」というコメントも多かったです。ゲームを作ることをした結果、「難しい」というコメントだけでなく「楽しい」が多くなったので、この取り組みはとても良いのだと思いました。

 

 

このようなコメントから考えると、やはり「情報Ⅰ」では、実習で知識を定着することが良いのだろうと思います。

 

 

ありがとうございました。

 

第86回情報処理学会全国大会 イベント企画「第5回初等中等教員研究発表セッション」より