事例375

こんな授業で情報Ⅱの学習活動をしてみたい!(データサイエンス編)

鹿児島県立鶴丸高校 春日井優先生

「こんな授業で情報Ⅱの学習活動をしてみたい!(データサイエンス編)」、今日の内容がこちらです。

 

 

まず「こんな授業はイヤだ!」について。

 

先生:「いいか、numpyっていうのはな」

生徒:「先生、この前もその話はしてました」

先生:「あのな、numpyというのはとても大事だから、何回も言うからな」

生徒:(…!)。

 

 

続いて、「こんな試験はイヤだ!」について。

 

生徒:「あのさー、これ、きっとscikit-learnなんだろうけれど、俺たちより勉強してて頭いいんだろうな」…。

 

 

情報Ⅱでは何が求められているの?

「情報Ⅱ」がこのような授業や試験にならないために、学習指導要領を確認しておきましょう。

 

「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」の最も大きな違いは、「創造的に活用すること」、そして、「新たな価値の創造を目指すこと」「情報社会の発展に寄与する資質・能力を育成すること」です。

 

データサイエンスも含めて、そのような授業を展開していくことが求められています。

 

 

「情報Ⅱ」の「(3)情報とデータサイエンス」の目標では、「データを活用する有用性に着目し、データを分析して結果を読み取り、解釈する活動を通して指導する」ことになっています。

 

初めに多様かつ大量のデータを活用することの見通しを持てるようにすることが求められ、その上で、実際にデータを分析する経験をすることになります。ただ、そこで終わってしまっては不十分です。結果をもとに解釈するところまで行う必要があります

 

 

身に付ける知識・技能として、データの存在からデータを処理し、解釈し、その結果をもとにモデルの評価を行うところまで求められています。

 

 

思考力・判断力・表現力においても、同様にデータの収集から処理・解釈・表現を行い、結果の評価・改善をすることが求められています。

 

 

さらに「(5)情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究」では、他の内容も含めた「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の内容から、課題を設定して、問題の発見・解決に取り組ませることになっています。

 

この(5)は、科目のまとめとしての位置付けであり、生徒の興味・関心、学校の実態に応じて行うことになっています。できるのであれば、生徒自身が課題を設定して取り組むことができるとよいと思います。

 

そのように、生徒が自走できるようにするためには、どのようにしたらよいでしょうか。

 

 

生徒が自走できるようにするための準備として

初めから、全て生徒自身で進めるというのは難しいです。そのため、一度は問題の発見からデータの収集と明確化、データの整理・整形、モデル化、処理、分析、評価、改善という一連の流れについて、経験を通して理解できるようにする必要があります。

 

その時、何のためにその操作を行っているのか、なぜその操作を行い、その結果として何が得られたのかを、操作と関連付けて理解できるようにしていかなければなりません。

 

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データサイエンスには、様々な手法があります。

 

特に、集めたデータの処理方法には、「教師あり学習」「教師なし学習」「ニューラルネットワーク」があり、さらにさまざまな特徴を持ったアルゴリズムがあります。

 

これらの特徴を理解した上で、それぞれを区別したり、組み合わせたりしながら、使えるようになることを目指す必要があります。すべてを学習する必要はないと思いますが、経験していることが増えると「できること」も増えるので、いくつかは行っておく必要があります。

 

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どのようなことができるようになるとよいの?

データサイエンスを学ぶにあたって、できるようになりたいことは、大きく分けて3つあると思います。

 

1つ目は、実際のデータをもとに処理できるようになること。2つ目は、自分で手法を選べるようになること。そして3つ目は、より正確な結果を得られるようになることです。

 

1つずつ詳しく確認しましょう。

 

 

1つ目が「データを実際に扱って処理できるようになること」は、まずはサンプルデータでもよいので、処理を実際にやってみて、考え方だけでなく、その結果もわかるようになりたいということです。

 

さらに、自分たちが集めたデータを加工して、機械学習にかけられるような表を作成したり、プログラムを修正して、モデルを変えてみるなどができることです。

 

 

2つ目が、「手法を自分で選べるようになること」です。そもそも、回帰・教師あり学習・教師なし学習がそれぞれ何をするかということが分かっていないと、手法を選ぶことはできません。

 

また、モデルごとに、どのような結果が得られるかを試して、モデルを選べるようにすることもやってみたいことになるでしょう。そのためには、複数のモデルを経験しておく必要があります。

 

 

3つ目の、「より正確に結果を得ることができる」というのも、やってみたいことです。

 

「重回帰分析による予測ができるだけ正確になるようにしたい」「教師あり学習の正解率を向上させたい」「クラスタリングのクラスタ数をいくつにするのが適切か」など、調整できることがあります。

 

このように機械学習の仕組みに興味を持つ生徒もいるでしょう。これらについて、生徒が関心を持ったところを深めることができると、創造的な活動につながっていくと考えています。

 

 

そのためにできることは…

私は、文部科学省の「情報Ⅱ」の解説動画(※)の作成にも関わらせていただきました。この動画では、生徒がデータサイエンスがどのような仕組みになっているかを理解して、実際に操作ができるようにすることを心がけて説明しています。

 

「情報Ⅱ」を学習する生徒が、理論と操作を結びつけながら活用できるようになってもらいたいと考えて作成しました。これらの動画も、ぜひ参考にしてください。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_02652.html

 

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生徒が実際にやってみると、問題の発見に時間がかかってしまうことが予想されます。限られた授業時間の中で行うには、レシピ集のような、学習した内容を発展させてできることのリストがあると、生徒は問題を発見しやすくなると思います。

 

授業で学習したモデルごとに、「できそうなことリスト」を作って、実際に生徒がやることの候補に加えられるようにすると、アイデアがなかなか出てこない生徒の足場になると思います。

 

また、データを流し込める形式に整えること、パラメータの調整の仕方など、アレンジできる余地があると、試行錯誤する機会が生まれると思います。

 

 

私は、まだ生徒を対象に「情報Ⅱ」の授業を実施していないため、実例を挙げることはできませんが、過去に指導した「モデル化とシミュレーション」で、このレシピ集を提示したことで、様々な創造的な活動がみられました。おそらく、データサイエンスでもレシピ集のようなものがあれば、生徒が学習活動を進める一助になると思います。

 

生徒が先生の手を離れて、自分達で学習活動をできるような授業をしてみたいと思うとともに、私自身もそのような授業を受けてみたいと思っています。

 

神奈川県情報部会実践事例報告会2024オンライン オンデマンド発表より