思考力・判断力・表現力を評価する大学入試
~次期学習指導要領による大学入学者選抜改革に向けて
文部科学省は、次期学習指導要領のもとで学んだ生徒が大学入試を迎える2025年に向けて、新たな大学入試を開発する「大学入学者選抜改革推進委託事業」を進めています。大阪大学と東京大学・情報処理学会は、この事業の「情報科」分野を受託し、「情報科」入試における評価手法やCBT(Computer Based Testing)のシステム化、さらにAIやビッグデータなど情報技術を駆使した問題評価や作問検討などに取り組んでいます。
この事業の目標とされる、思考力・判断力・表現力の評価方法やCBTのシステム化は、教科情報だけでなく他の教科にも共通する課題です。今後どのような手法やシステムが開発されていくのか、実際の大学入試にどのように取り入れられるのか、今後の動きが非常に興味深いところです。教科情報にとどまらず、今後の大学入試のあり方を大きく変えていく取り組みとも言えます。
2017年3月、この取り組みについて二つのシンポジウムが開催されました。一つが情報処理学会第79回全国大会のイベント企画(3月16日@名古屋大学)、もう一つが「2025年の高校教科「情報」入試を考える~思考力・判断力・表現力を評価する~」(3月20日(月・祝)、@グランフロント大阪ナレッジキャピタル)です。
二つのシンポジウムでは、事業の概要、「思考力・判断力・表現力」を評価する試験問題の具体例、日本学術会議がまとめた「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」の情報学分野と高校の教科情報や他の学術分野との関連付け、大学入学選抜CBTの仕様などについて報告が行われました。また、大阪のシンポジウムは、事業の概要や目的を説明するとともに、高校の現場の先生方に思考力・判断力・表現力を評価する問題とは具体的にどのようなものかを提示することで、意見を求めることも目的とされました。会場からは、「具体的に高校の授業をどのように行ったらよいのか」「具体的な問題が出ることで、解き方がパターン化してしまうのではないか」など突っ込んだ質問も出され、大いに盛り上がりました。
[プログラム]
■情報処理学会第79回全国大会イベント企画
文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業
「情報学的アプローチによる『情報科』大学入学者選抜における評価手法の研究開発」
司会:角田博保先生(情報処理学会 情報入試委員会 委員長)
◆基調講演:「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」
東野輝夫先生(大阪大学情報科学研究科)
◆報告(1):「『情報科』の情報学参照基準による知識体系化」
◆報告(2):「情報科」大学入学者選抜における評価手法
◆報告(3):「『情報科』大学入学者選抜CBTシステム化の仕様」
◆報告(4):「『情報科』大学入学者選抜の国内外の動向」
辰己丈夫先生(放送大学教養学部)
◆パネル討論:「どうする『情報科』大学入学者選抜」
司会:中野由章先生(神戸市立科学技術高等学校)
パネリスト:東野輝夫先生 萩谷昌己先生 久野靖先生 西田知博先生 辰己丈夫先生
■シンポジウム「2025年の高校教科「情報」入試を考える~思考力・判断力・表現力を評価する~」
2. 来賓挨拶:荒木秀治氏(文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室)
3. 基調講演:「情報I・IIで育む思考力・判断力・表現力」
4. 事業概説 :「思考力・判断力・表現力」を評価する試験問題
5. 現状報告:高校での「情報科」教育~大阪府内高校への調査結果をもとに
加藤光先生(大阪府高等学校情報教育研究会・大阪府立岬高等学校)
6. パネル討論:「思考力・判断力・表現力の教育方法/評価方法」
コーディネータ: 萩原兼一先生
パネリスト:鹿野利春氏 萩谷昌己先生 久野靖先生 加藤光先生 片岡晃氏(情報処理推進機構)
7.閉会の挨拶:尾上孝雄先生(大阪大学大学院情報科学研究科)