基調講演

情報I・IIで育む思考力・判断力・表現力

国立教育政策研究所 教育課程研究センター 教育課程調査官 鹿野利春先生

今回の大学入学者選抜改革推進事業は、単に大学が情報入試を行うだけでなく、小学校・中学校・高等学校の初等・中等教育と大学をつないだ一体改革という、大きな流れの中に位置付けられています。

 

現在、下図のようなスケジュールで学習指導要領の改訂作業を行っています。

 

高等学校は今年度(2016年度)答申が出て、改訂は小学校・中学校より1年遅れて2017年度になります。そして、2018年度に解説を出して2019年度から2021年度の3年間が移行措置期間であり、2022年度から年次進行で実施していくことになっています。次期学習指導要領で学んだ2024年度の高校3年生は、これに対応した入試を受けることになります。ただ、入試制度改革としては、現行学習指導要領の2020年度の高校3年生から、センター試験に代わる新しい形の入試を受験することになります。

 

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全ての教科で育む「情報活用能力」

初等・中等教育の学習指導要領を改訂する背景としては、「未来の創り手となるための力」の育成というところが大きいと思います。これからの世の中は、予測できない変化がいろいろ起きてきます。それらに対して主体的に向き合って関わり合い、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるためには、「知識・技能」はもちろん大切なのですが、それだけでは足りません。

 

例えば「自ら目的を設定する」「必要な情報を見いだす」などといったことは、授業の中でも機会や場面を作っていかなければ、育成することはできません。そして、「その過程を通して、自らの可能性を発揮し」とありますが、そういった場面のある学び(これは少し前は『アクティブ・ラーニング』という表現をしていましたが、告示ではもう少し違う表現になります)によって力を育まなければいけない。さらに、育むということは、確かに成長したかどうかを測らなければなりません。そして、特に高大接続という点で言えば、大学入学者選抜の段階でその力をきちんと身につけているかどうかを確かめなければならないということになります。

 

これは情報科だけでなく、全ての教科・科目で育むべきものであり、次の学習指導要領では、育成すべき資質・能力として、現行の「言語活用能力」に加えて「情報活用能力」が、情報科だけではなく全ての教科・科目に入ります。そして、情報科というのは、「情報活用能力」を育て、あるいは伸ばすための、中等教育段階での総まとめにあたる科目ということになります。

 

初等・中等教育で育む資質・能力の「三つの柱」を情報科にあてはめる

学習指導要領の改訂で進めている、初等・中等教育で育成すべき資質・能力の「三つの柱」を図にしたのがこちらです。「知識・技能」は当然重要で、これは疎かにするものではありませんが、理解していること・できることをどう使うかという「思考力・判断力・表現力等」、さらに学んだことをどう生かすかということにもつながる「学びに向かう力・人間性等」というものを育てていかなければならない。そのためにどうするのかということです。

 

今年度告示される高等学校の次期学習指導要領においても、情報活用能力が各教科の目標として明確に見える形で示され、さらに教科の内容でも具体的にどのように落とし込むかを示していくという形になります。

 

情報科における「資質・能力」の「三つの柱」の具体的な内容として、図のようなものを出しています。まず「知識・技能」については、プログラミングが注目を集めていますが、決してそれだけではありません。例えば「情報と情報技術を適切に活用するための知識と技能」には、プログラミングの知識が入って来ます。それから「情報と情報技術を活用して問題を発見・解決するための方法」には、問題解決のプロセスや問題解決能力、およびそのために必要なものが入ります。それから、「情報社会の進展とそれが社会に果たす役割と及ぼす影響についての理解」では、われわれは今どの段階にいるのか、何を考えなければいけないのか、これからどちらに向かっていくのか、ということについて考えます。今後AI(人工知能)がますます発達しますが、特に情報IIでは、それとどう付き合っていくのか、その時われわれはどんな資質・能力が必要とされるのかということも考えていかなければいけないと思っております。

 

「情報に関する法・制度やマナー」は当然ながら、できることが多くなるということは、それだけ倫理的な部分に対する意識も高くなければならないはずです。これからますますそういう傾向が強まってきます。そういうところも含めて、個人の責任や役割等についても見ていかなければならないと考えます。

 

「思考力・判断力・表現力」については、「見方・考え方」というものを各教科で出しています。情報科としての「見方・考え方」は、「事象を、情報とその結び付きとして捉え、情報技術の適切かつ効果的な活用(プログラミングやモデル化・シミュレーションを行ったり情報デザインを適用したりすること等)により、新たな情報に再構成すること」です。

 

問題発見に向けて、例えば統計的なことも使っていかなければいけません。それから、プログラミングやシミュレーションを行う際には、「モデル化」という「見方・考え方」で出てきたことを使う必要があります。さらに「コミュニケーション」とあるのは、お互いがやったこと・できたことを伝え合えなければ意味がないので、これについても情報技術を使ってよりよいコミュニケーションを目指そう、ということです。最後の「複数の情報を結びつけた新たな意味」には、「創造的な」というものが入ってきます。

 

「学びに向かう力、人間性等」がこちらです。測定するのは難しいですが、当然育てていかなければならない力です。日本人は学力は高いが自己肯定感は低いとか、自信がないとか言われますが、そういう部分についても育てていかなければならないと認識しております。

 

「情報を多角的・多面的に吟味」というのは、例えばWebサイトに出ている情報を鵜呑みにするのでなく、いろいろな方面から見ていかなければいけない、ということはしっかりと教えなければいけないところです。また、この時の判断基準や方法、そして一番大事な、様々な情報を見ていこうという態度を育てる必要があります。

 

「自らの情報活用を振り返り、評価し改善しようとする態度」。これは、「問題解決」のプロセスを学ぶ過程で、「振り返り」を行わなければ次への進歩というのはありません。ですから、授業でも「振り返り」の場面を設けることが必要です。

 

「情報モラルや情報に対する責任態度」については、皆様がご存知の通りと思います。そして最後の「情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与する」が、情報科を通して育む最終目標になろうかと思います。

 

問題解決のための「見方・考え方」をどのように身につけるか

では、具体的な「見方・考え方」とはどのようなものなのか。世の中には様々な情報がありますが、ただ漫然と見ただけでは、それが何を表すかとかいうことは全くわかりません。情報科の「見方・考え方」ではその中身が問題です。そしてそれぞれが個別に存在するのではなく、例えば下の「情報科における見方・考え方」の図で、情報01と情報03はつながるけれど、情報02はそこにはつながらない、という形でモデル化しながら見るわけです。

 

そして、このように結び付けることによって新たな活用の仕方が可能になります。例えば、車に乗りたい人と乗せたい人があれば、そこにビジネスができます。部屋に泊まりたい人と部屋が余っている人を結び付ければ、そこでまた新たなものが出てきます。このようにいろいろな結びつきがある中で、さらにいくつかの情報を統合して新たなものを作っていくためにはどうしたらよいか考えること。これが情報科の「見方・考え方」ということになります。

 

今お話しした情報科の「見方・考え方」をまとめたのが下図です。問題をモデル化し、それを解決したら、それをもう一度社会に戻していくということが必要になるということを示しています。

 

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情報科の授業の中で、問題発見・解決を学習するための具体的なプロセスを示したのが下図です。「問題の発見」「問題の定義」、それから「解決方法の探索」「結果の予測」「振り返り」というプロセスの中で、いろいろな力を育てていきます。例えば問題を発見する時には、何となく「これが問題だ」と言うのではなく、統計的に処理することによって「ここに問題・課題がある」ということを示すことが必要です。そして問題の定義の際には、授業の活動ですから当然話し合って合意形成が必要です。さらに解決法の探索では、複数の方法を出したとして、どれを選択するかという時に合理的な判断が必要になってきます。そして結果を見る時は、良かった・悪かった、できた・できなかったとかいうことではなくて、「どのぐらいできたのか」「それは、どうよかったのか」ということについて、客観的な指標を示すことが必要です。そういう中で、授業で学んだ知識や技能の意味を知ることにもなります。こういった活動を通して、「思考力・判断力・表現力」を存分に発揮するとともに、やり遂げたという達成感も味わうことでしょう。

 

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学習成果の評価には様々な方法の使い分けが必要

このような学習成果の評価方法としては、パフォーマンス評価とかルーブリック、ポートフォリオ評価などいろいろな方法があり、従来のようなペーパーテストだけでは難しいのではないかと思います。また、「思考力・判断力・表現力」は、実際それが発揮される場でなければ、測れないのではないかということも言われています。さらに、「どのぐらい」ということを測る時には、あらかじめ基準となる段階を定めて、そことの比較で見ていく形でなければならないでしょう。

 

実際の授業においては、先生による評価、自己評価、総合評価などいろいろな方法がありますが、どの場合でも「評価の物差し」を先生と生徒が共有していることが必要だとも、言われています。また、ポートフォリオでは、ある期間、例えば1年間の学習が終了した際に「どれぐらい伸びたのか」というところを振り返ってみることも必要でしょう。

 

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さらにこれらを入試で使うということになると、様々な評価方法を使い分けていかなければなりません。そして、ペーパーテストでできる評価・できない評価、あるいはそれ以外のことで測らなければならない評価と、いろいろなことがあります。そういう中で、CBT(Computer Based Testing)は、単に合理化ということではなく、測ることができるものがそれだけ増えることになるという期待も持っています。

 

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情報Iの内容と「思考力・判断力・表現力」の育成場面

ここからは、次期学習指導要領の情報科の新科目の内容を紹介します。必履修科目の「情報I」がこちらです。「問題の発見・解決に向けて、事象を情報とその結び付きの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を育む」ことを目的にしています。

 

「(1)情報社会の問題解決」では、中学校までに学習したことをもとに、自分たちがどのような世界に生きているのか、そこにどんな問題があり、自分たちが解決できるのはどのぐらいなのかを考え、実際に問題解決をするプロセスを経験します。

 

「(2)コミュニケーションと情報デザイン」は、問題解決のプロセスで情報技術を使う際には「デザイン」というものが必要だろう、ということです。要は、何か目的があって、それを伝えるのに最適なのは紙なのか、あるいは画像なのか動画なのかということに配慮し、適切に「デザイン」しなければなりません。インターフェースということも「デザイン」に含まれます。

 

「(3)コンピュータとプログラミング」は、プログラミングを通してコンピュータというものを知ること、そしてきちんと順序立ててプログラムを考えていくためには何が必要かということを、学んでいきます。

 

「(4)情報通信ネットワークとデータの利用」まで含めて、ここまで挙げたことを、将来情報技術者になる・ならないにかかわらず、高等学校に進学した人が全員学ぶ、ということが重要です。そして、今後は仕事を出す人、それを請ける人、あるいはそれを評価する人の全てが情報に関する理解を共有していく社会になることを期待しています。

 

今回は特に「思考力・判断力・表現力」が主眼になっていますので、各項目について該当する部分を挙げていきます。赤字で示した部分です。

 

例えば「(1)情報社会の問題解決」では「問題の発見・解決に情報技術を適切かつ効果的に活用する力」を挙げています。中学校までに行った、問題を定義して解決していくプロセスを導入して、というところをイントロダクションにして、残り(2)(3)(4) というところを進めていこうというものです。そのとき、例えば中学校段階で学習した統計は初歩的なものではありますが、それをやはり使っていく。「解決」については、情報技術を使っていく。それは小・中学校でやってきたところのものを使っていくということになります。

 

「(2)コミュニケーションと情報デザイン」では、「情報デザインを適切かつ効果的に適用して」とあります。「知識・技能」でデザインの役割りは理解しても、それを実際にコミュニケーションに使うとはどのようなことか、というところを経験することも必要です。その前提としては、情報を整理すること。これは、国語でもしっかりと入れ込んであるところです。さらにそれをデザインして形にすることは全ての教科で行っていますが、情報科としましては「情報技術を使った」ということが特徴です。

 

「(3)コンピュータとプログラミング」では、「問題の発見・解決に向けて適切かつ効果的にプログラミングしたり、モデル化やシミュレーションをしたりする」とあります。

 

そのためには、まず事象を見る→モデル化する→考える→実際に動かしてみる→改善するという過程は、小学校から連綿と積み上げていく予定になっています。高校では、そのモデル化をさらに細かく行うとともに、シミュレーションも入れていきます。

 

さらに、解決が必要なものの条件を見いだしたり、関係性を記述するということも必要だと思います。そして、「アルゴリズムについて考える」ですが、これはフローチャートだけでよいのか、という議論もあるので、いろいろな表し方があることも見せていきます。

 

「(4)情報通信ネットワークとデータベースの利用」については、実際に使われているデータベースはバックグラウンドでネットワークが動いているという形が多いので、そういった実際の仕組みを見ながら、活用していくために必要な知識も教え、そこで思考力・判断力・表現力を育てる場面を考えていかなければいけないのではないかと思います。

 

情報IIの内容と「思考力・判断力・表現力」の育成場面

「情報II」は選択科目で、「『情報I』において培った基礎の上に、問題の発見・解決に向けて、情報システムや多様なデータを適切かつ効果的に活用し、あるいは情報コンテンツを創造する力を育む」ことを目的とします。

 

「(1)情報社会の進展と情報技術」では、AIの発達など、どんどん進歩する情報社会で人間はどのように生きていくのか、ということを考えます。技術の発達だけでなく、人間が備えるべき資質・能力は何か、ということも考えて将来を展望することを目指します。

 

「(2)コミュニケーションと情報コンテンツ」は、情報Iで情報デザインということを学んだ上で、情報IIでは実際にそれを使ってコンテンツを作り、そしてコミュニケーションまで持って行くことになります。そのためには、学校の施設等の整備も当然必要になってきます。

 

そして「(3)情報とデータサイエンス」は、現行の教科「情報」の内容にはほとんど入っていない部分です。データサイエンスという分野は、今後極めて重要なものになると思います。高等教育では、これを学部あるいは学科として立ち上げることはあると思いますが、中等教育では、「大体こんな感じの内容で、こんな学びをする」というベースを広く教えるということになります。そうやって裾野を広げれば、突出した人が出てくる可能性もありますし、一般の人がこれを知っていれば、世の中にあふれる様々なデータを使って、例えば自分のお店の売り上げを予測するであるとか、自分のキャリアをシミュレーションしてみるとか、いろいろなことに使っていけるでしょう。そういった日常的なことから、さらに高いレベルを目指すことも可能になります。その意味でも、情報IIは選択科目ですができるだけ多くの方に履修していただきたいと思っています。

 

「(4)情報システムとプログラミング」には、システムが入っています。情報Iでプログラミングを問題解決手法の一つとして使うならば、情報 IIではそれを組み合わせたシステムというものを考えます。システムということになれば、分割して何人かで協力して作るということも視野に入ります。

 

「(5)課題研究」は、ここまでやってきたことを総合して、何か世の中に貢献できるものを作ることを目指します。それを通して達成感を味わったり、自分の能力を振り返ったりする機会になればと思っています。

 

情報Iと同様に、「思考力・判断力・表現力」に関する部分を見ていきましょう。「(1)情報社会の進展と情報技術」では、視線が未来を見ています。情報社会における新しい技術はどのようなものか、そこで人間はどのような生活をするのか、そのとき必要な資質・能力は何なのか。そういうところについて客観的事実をベースに、しっかりと話し合い、考えていくことが必要であると思います。

 

「(2)コミュニケーションと情報コンテンツ」については、様々なコンテンツを駆使して、コミュニケーションするためのコンテンツを作ってみるということが重要です。そこでは、閲覧者の立場に立って考えることや、「インタラクティブ性」も必要になります。

 

「(3)情報とデータサイエンス」では、「データサイエンス」という言葉について様々な議論がありますが、とにかくこれを今しっかりやっていかなければ、これから先の発展はないだろうという思いを持って入れています。これについては、教える側の教員の研修をはじめとして様々な問題はありますが、そこをクリアして進めていくことが必要だろうと思います。

 

ちなみに高等学校では、統計は数学と情報で担っていくということで、数学で学んだ統計を情報で生かしていく、あるいは数学で学ばないけれども、〇〇分析といった統計的な指標を活用するというところを情報でやっていくということになります。情報においては、その代表的なところを教えていき、内容的なところが若干難しい場合でも、その指標を考慮・判断するというところをやっていく方向になるかと思います。

 

「(4)情報システムとプログラミング」では、こういう力が必要だということを挙げてありますが、その中に「サブシステムを考える」というものがあります。これは、例えばシステムを作る時に、用途や目的によって分割し、さらに目的に合わせて分割したものを作り、最終的にそれらを総合して一つのシステムを組み上げるということです。情報Iでは少し入りづらかったことが、ここでは入ってきており、これも「思考力・判断力・表現力」ということになるかと思います。また、そのシステムを組み上げるためのプログラム言語はどんなものを使うのか、ということを考えるのも思考力ではないかと思います。

 

「課題研究」については、「思考力・判断力・表現力」は特段示してはおりませんが、これをすることによって今まで学んできたものが総合され、深化していくと捉えています。ここで「新たな価値を創造する」ということが経験できれば、子どもたちが今後そういう方向に進むきっかけになると考えます。

 

情報の力は全ての学部・学科、ひいては実社会で必要であるからこそ

最後に、入試としての扱いにつきまして、私の思いを述べさせていただきます。情報活用能力は全ての教科・科目で育むべきものということは、学習指導要領に示すことができました。今後実際の授業をどうするかということを考えると、大学では文系であってもデータサイエンスは当然使っていくと思いますので、「情報Ⅰプラス情報Ⅱ」の履修ということになるだろうと思っております。

 

必履修教科は情報Ⅰですが、社会に出る時に、先ほどお話した情報Ⅱの力は当然必要になると思います。できるだけ多くの高校で、情報Ⅰプラス情報Ⅱという学びが行われるようになればと願っております。

 

大学では、高校で学んだことをベースとして、より深めていくという形になっていくと思います。学んできたことについては、入試の段階でしっかりチェックしていただきたい。大学には、いろいろな学部がありますが、情報は全ての学部・学科に共通して必要なものであるということを、大学の先生方は、本当はわかっていらっしゃると思います。ですから、それを実行に移していただければ、というところではございますが、これにつきましては現時点ではまだ決まったところはなく、今後いろいろなところで議論され、決まっていくことになります。高校の次期学習指導要領解説は、2018年度中に告示されるわけですが、その内容も含めて考えた上で、各大学で決定されていくということになります。

 

[質疑応答]

 

〇Q1[公立高校教員]:先ほど入試のところで、情報Ⅰのみにするか、情報Ⅰプラス情報Ⅱにするかというお話がありましたが、ここでおっしゃった「入試」というのは、大学のいわゆる二次試験相当の試験のことを想定しておられるのか、それとも2020年に始まるセンター試験の後継試験を想定されておられるのか、どちらでしょうか。つまり、情報の試験問題というのは各大学が作るということを想定されているのか、それも含め、プラス今の大学入試センターに相当するところでも作る用意があるということを考えておられるのか、お教えください。

 

A1:初等・中等教育と高等教育をスムーズに結ぶためには、個別試験ではない形のほうがよいと思っております。ただ、これについては今後の議論を待たなければいけません。

 

〇Q2[私立大学経済学部講師]:統計関係のお話の中で、統計に関しては、数学と情報で担っていくというお話があったと思います。前の学年までに学んだことや、関連する科目で学習したことを前提にさらに積み上げいく必要性はわかりますが、われわれ大学だけでなく、高校の先生方の中にも、そういった前提をもとにした学習が設定できない学力層の生徒も少なからずいることを感じている方がいらっしゃると思います。ですから、全てを「そこまでに学習したことを活用する」という前提で組まれることの意図を、ぜひともお聞かせ願いたいと思います。

 

A2:統計教育については、次期学習指導要領では小学校・中学校からさらに強化していく予定でおります。そして、次期学習指導要領を作っていくに当たっては数学科との話し合いを何回も持ちました。審議のまとめにも載せてありますが、統計は理論を理解することと、実際に使うことの両方がなければいけないので、例えば数学で基本的なところを学んだら、情報で実際に使ってみる、という設計をしています。

 

ただ実際に使うことについては、発達段階や習熟度に合わせて様々なことを考えていかなければいけないということになるとは思いますが、方向性としては、「学ぶ・使う」という両方が必要であるということです。そして、教科の役割としては、数学は理論的なところを「学ぶ」、情報は「使う」ということを担っていくことを目指していきたいと思います。ただ、全ての学校で、あるいは全ての団体でそれが可能かということは、今後の課題ということになると思います。

 

※情報処理学会第79回全国大会/文部科学省大学入学者選抜改革推進受託事業シンポジウム講演より