次期学習指導要領と教育の情報化

東北大学 大学院情報科学研究科 堀田龍也先生

2.教育の情報化の現状

様々なICT機器はどのように使われているか

ここからは教育の情報化についてお話しします。学校現場でもっともよく使われているICTは実物投影機です。下図からわかるように、子どもたちに注目してほしいもの、例えば教科書などの図を大きく拡大して見せるということでした。これは教師主導ではないか、と言われるかもしれませんが、これを見せないと子どもたちからの発言は出てこないので、子ども主導にもなり得ないわけです。

 

当然ながら、先生が大事なことを提示するというのは、1時間の授業の中で何回もあるシチュエーションです。そしてそれをできるだけ高くないコストで、どの先生でもほぼ確実にできるようにするための具体的な装置として、実物投影機があるのです。今も多くの学校で使われており、とりわけ小学校にたくさん導入されてきたという経緯があります。

 

言葉だけでは伝わりにくい年齢段階の子どもたちに対して、限られた時間で効率よく物を考えたり、興味・関心を引いたりする方法として、一斉提示としてのICT活用というのは、今までも非常に多く行われてきましたし、機材が変わっても、おそらくこれからもなくならないと思います。

 

実物投影機を使った指導の例として、ノートの書き方があります。実物投影機でノートの手元を映して、「最初は1マス空けましょう」とか「句読点はどのあたりに打ちましょう」といった細かい決まりを教えます。中学生や高校生がちゃんとノートを取れる背景には、小学校の段階で丁寧に指導されてきた結果なのです。もし中学校で、「最近の生徒はノートが全然取れない」と感じられているとしたら、それは小学校段階でのノートの取り方の指導が十分ではないということを意味しています。

 

ところが、ノートの指導というのは、学習指導要領の、どの教科のどこにも書いていません。つまり、教科の内容とは別に、人と話し合うとか、ちゃんと人の話が聞けるとか、ノートがちゃんと取れるとか、教科書がちゃんと読み取れるといった、各教科の能力を支える学習の基盤となる能力があるのです。これらと同様に、後で出てくる「情報活用能力」という言葉は、学習指導要領には学習の基盤となる能力として書かれています。つまり、必要に応じて情報を集めて何か記録しておいて、状況に応じてぱっと映して何か説明できる、といったことをICTを使ってスムーズにできる人が、教科の学習でもうまくいくだろう、ということです。ですので、情報活用能力についても、特定の教科でなくいろいろな場面を通して身に付けさせることが必要になります。

 

学校現場でよくやられているのは、実物投影機で教科書のある部分を大きく映して、そこに書き込むということですね。そうすると、教科書だけでは十分に読み取れなくても、先生が子どもたちの意見を聞きながらマーキングしていくことによって気付きが生れることになります。

 

この写真で言えば、リンゴが採れる地域とミカンが採れる地域を先生がマーキングします。その時に、違う色のペンをうまく使っているんですね。この場合は、教科書をクリアファイルのようなもので挟んで、そこに書いていました。わざわざ電子黒板を使って、書いたのはいいけどどれで消すんだっけ、ということになるよりずっと実現可能性が高い方法ですね。

 

私たちの調査でも、先生たちが一番一斉に映したいと思うのはやはり教科書でした。教科書というのは、検定までされている良質な教材ですから、その教科書に載っている図やグラフや写真や、そういうものをもとに話し合わせるのは非常に理にかなった方法です。

 

ですから、今までどおり教科書も道具として使いながら学んでいくということの重要性は、小学校でも中学校でも高校でも変わらないことだと思います。

 

ですから、教科書会社が先生用のデジタル教科書を作って、それが提示教材として全国の学校で多く使われているというのは当然のことだと思います。ただ、先生用のデジタル教科書にも、デジタル教科書が映っている電子黒板にも両方に書き込み機能が付いていて、やっているうちにどっちで書いたのかわからなくなってしまった、というように、あまり統一性がないというのが一つの課題ではあります。しかし、実物投影機で映す時でも、先生用のデジタル教科書を使うにしても、教科書に近いものをちゃんと映して教えたいという先生のニーズは変わらない。教育学的にはあまり違いはないということになります。

 

さらに、ICTで何かを映すというのは、黒板に何かを書くとか貼るといったことと並行して行われています。だからICT活用と言いますが、それはICTしか使わない授業ではなくて、ICTも活用する授業のことです。当たり前ですが、このことで考えれば、子どもたちがICTを使う場面は、子どもたちがICTも使う授業だということになります。タブレットの中に全ての機能を詰め込んで、それさえあれば全てができるような特別なタブレットやソフトでは、膨大なコストがかかってしまいます。それではなく、紙の教科書に書いてあるのであれば紙の教科書でいいし、ノートも鉛筆も使うし、そこにタブレットも使う、くらいの感じの方が、私たちの実生活とも似ていますよね。私たちはスマホやノートパソコンも使うし、紙も使います。それと同じだと思います。

 

最近は、少しずつ子どもがICTも使うようになってきました。しかし、一人でずっとタブレットに向かって何かする時よりは、皆で何かプレゼンしたりするために使うことが多い。また、タブレットで何かすごい絵を描くなんていうのはあまり期待していませんよね。子どもの能力からいったら、紙に描いたほうがうまくいきます。でも、紙に描いたものをタブレットで写真に撮って、「ここを見てほしい」というところを画面上で拡大するのはタブレットにしかできません。そういう使い分けでよいと思います。

 

タブレットが入ってきて一番使われているのは、写真機能だと思いますね。写真で大きくするとか、写真に撮って記録を残すとか、それを見せ合うとかいうのが一番多いです。それならデジカメでいいんじゃないの、という人がいます。確かにそうですが、デジカメをグループの4人、5人で見るというのは難しいので、タブレットは見やすいデジカメとして使われるようになったのです。そして、データがどんどん蓄積されていくと、それをスライドにして整理するというような二次利用がうまくいきます。それがさらに前の学習と今日の学習をつなげるポイントになったり、クラスの皆で共有しやすかったり、と可能性が広がっていきます。

 

情報活用能力というのは「情報の」活用能力であって、ICT操作能力だけではない

実物投影機の出始めの頃、「OHPでできるじゃないか。何でわざわざ入れる必要があるんだ」とおっしゃる方がいました。「確かにそうですね。でも、今OHPって、あまり売っていないですよ」と言うと、あっさり「それはそうだ」と。ですから、最初にICTを導入する時はあまり目くじら立てるのでなく、よく使われている道具の代わりに使っていくくらいのところからが一番よいのではないかと思います。

 

ただ、その時に注意しなければならないのは、情報活用能力というのは「情報の」活用能力であって、ICTだけの活用能力ではない、ということです。

 

先ほど、電子黒板が有効かどうかより、そこに何が映っているかが大事だというお話をしましたが、「何が映っているか」というのは情報です。ですから、私たちは映している装置を見ていますが、一番知りたいのは、その装置に何が映っているかという情報なのです。

 

ところが、学校で「ICTを使った授業のためにどんな機械が有効か」という議論になってしまっているのは、現実と少しずれているということですね。どんな情報がそれによって提供され、蓄積され、記録され、比較されているのかということを議論しないと、教科の学習とつながっていかないということになります。

 

ですから、タブレットを使わなくても付箋紙に情報を書いてそれをグループ分けしてみるような経験は、これからも小学校・中学校では特に重要だと思います。小学校・中学校でこういった経験を十分してきた高校生は、おそらくタブレットやパソコンを使っていろいろなことができるようになると思います。そのために、小学校や中学校では、紙もICTも両方使うことによって、どちらがどういうところで優位性があるかということに気付いていくことが大事だと思います。

 

実際、ICTをいつも使っているクラスで子どもたちのICTの使い方を見ていると、ちょっとしたタイミングで、本当にあっという間に自分のタブレットからスライドを出して、ぱぱっと映して説明できるのです。彼らにとっては、プレゼンというのはスライドを作り込んで話すものではなく、話題に合わせて自分が持っているものをみんなに見せればいいのですよね。学習の基盤となる情報活用能力というのはこういうものなんだな、と感じることがよくあります。

 

というわけで、教育の情報化ということを「情報活用能力」というキーワードにすると、まず情報活用能力が学習の基盤となる能力として求められていて、それが発揮される、あるいは身に付けやすい環境としてICTの環境がある。そして情報活用能力は、次の学習指導要領では各教科の見方・考え方を支えていて、アクティブ・ラーニングの土台になる力となっているのです。

 

では、そういう力は日本の子どもたちに本当に身に付いているのか、あるいは経験されているのでしょうか。これは2009年のOECDの調査で、中学生が1週間で国語や数学や理科を学ぶ時に、コンピュータを使って学んだ割合です。2009年当時は、OECDの平均は20数%でした。それから7年、8年経って、この値もかなり変わってきていると思います。

 

日本はどうでしょうか。日本は2009年の段階で1%しかICTを使っていない。1%と言っても、私はかなり高めに出した数字ではないかと思います。残念ながら、調査した17か国の中で、日本は圧倒的な最下位でした。

  

これには解釈が二通りあります。一つは、「そうは言っても、日本は国際規格のPISAなどの学力調査で言えば、学力が高いのだからこれでいいのだ」という意見。もう一つが、「ちょっと待て。今のところ成績はいいけれど、それは先生が上手に教えているからだ。これからは自分でICTを使って学び取ることがきちんと身に付いていかないと、次々に新しいことが出てきたり、先生なしのところでいろいろなことを問題解決したりしなければならない。そういう時代に来ている子どもたちにとっては、そのための基盤となるICTを使う力を身に付けていないのはまずいのではないか」という意見で、こちらの声の方がだんだん強くなってきています。

 

「日本の子どものコンピュータの利用率が低いのは、日本の教室にICTがあまり入っていないからだ。ICTの整備が遅れているのは問題だ」という話もありますが、文部科学省、あるいは国は、地方交付税交付金として市町村で言えば、小学校も中学校も1校当たり1年に総額560万円くらいの地方交付税交付金が割り当てられています。

 

しかし、学校は〇〇市立、つまり設置者は〇〇市です。設置者は整備も担当しますから、学校に何を入れるか、どんな設備を整えるかということは市町村が判断して決めるということになります。

 

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ICTの整備状況は自治体間格差が大問題

「うちの小学校にはタブレットが入っていない。文部科学省は何をやっているんだ」と言われても、文部科学省は困ってしまいます。ちゃんとお金は出しているのですから。つまり、ICTが入っていないと文句を言う時、市町村の担当者の無理解のために導入されていないというケースが多い。だから、自治体間格差がものすごいのです。

 

例えば、下図は東京都の各自治体の小中学校で、教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数です。文部科学省は、今年はこういう調査結果を公開しているので、自治体間の格差が一目瞭然になっています。

 

今後は、これをどうやって是正していくかということになります。文部科学省としては、次の学習指導要領ではアクティブ・ラーニングが入ってきますので、毎時間ではないとしても、アクティブ・ラーニングをする時にICTが必要な時があるでしょうと。その時に1人1台ないと困る時があるでしょうと。それがどのぐらいの頻度かは、学校段階とか教科によっていろいろ違うけども、その時に1人1台ないようでは不便だし、それが無線LANにつながっていないのでは困るよね、ということで、ICT環境の整備を進めていくことになります。

 

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下図のステップで言えばステージ3にあるようなICT環境を全ての学校に求めるという時期に来ているのに、実際にはまだ整備は十分ではありません。では、そこまでできていない自治体は、次の学習指導要領が始まったらどうするのか、ということなのです。現行の学習指導要領では、ICTは先生の指導法の工夫としての位置付けですが、2020年から目指さなければならないのは、ICT もうまく使って、学習の基盤となる情報活用能力を発揮して各教科の見方・考え方を身に付けさせていくこと自体になります。逆に言えば、これからは学習指導要領で身に付けるべきとされている資質・能力が、ICTの整備いかんによっては身に付けられない可能性もあり得るということでもあるのです。

 

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3.これからのICT整備のあり方

ICT環境の整備指針を策定し、導入をサポート

そのため、国としては学校でのICT環境の整備指針を策定するために、「学校におけるICT環境整備における有識者会議」を作って、そこで審議をしています。

 

ここではICTの教育効果は認めた上で、次の学習指導要領で求められている学習活動との関係をもとに、デバイスや学習環境の優先順位を付け、国が指針として出します。自治体はそれを見て、それまでの経緯や現在の整備状況を鑑みてどのように整備していくかを決めてくださいということです。

 

 ICT以外の教材(一部ICTも含みますが)についての教材整備指針は既にあり、それに対してどこまで達成しているかということはずっとチェックされてきています。ICT機器については、これまでも効果的であると言われてきましたし、様々な製品が紹介されてきていましたが、特に基準はなかったので、今回教育ICT環境整備のための基準をきちんと作ろうとしているのです。

 

今年7月頃には基準が発表になると思いますので、ぜひご覧いただきたいと思います。そこでは、必ずしも有効な機器が全部入るというわけではないと思います。有効ではあるがコスト的に、あるいは利用頻度的に費用対効果があるのか。また、現場の先生が有効だと認めているのであればそれなりの普及はしているだろう、ということで、現在の普及率も一つの指針の目標値になっています。そういったことを参照しながら、慎重に審議を行っているところです。

 

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デジタル教科書はどうなるか

ここまではハードについてでしたが、コンテンツで言えばデジタル教科書です。ここで言うデジタル教科書は先生用ではなくて、子ども用のものです。つまり今、紙で配っている教科書をデジタルにしてタブレットで見るということはあるのか、という議論です。そうなった場合、例えば動画はどのように検定するのとか、といったことがずっと議論されてきたのです。

 

この検定についてポイントを申しますと、まず今まで通り紙の教科書で検定をします。そして、紙の教科書で検定されたものとほぼ同じものをデジタルでも提示をしてくださいということになります。ただし、デジタル版の方まで国の予算で見ることは難しいので、当面はできるだけ安価に教科書会社が提供する、ということになりました。教科書会社はたいへんだと思います。

 

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ただし、デジタル版は検定されている紙の教科書と「ほぼ同じ」ということであって、例えば動画などは教科書ではなく、教科書の隣にある教材である、と見なしています。教材は、今までも各学校が保護者からお金を集めて買って、それを教育委員会に届けていますので、それと同じスキームで考えることにします。ただし、教材ではなく教科書の部分については、紙の教科書と同じものをデジタルでもできるだけ安価に提供することを教科書会社に義務付けます。そして、学校側が「ここの単元は全部デジタルでやります」ということになっても、教科書使用義務を果たしたと見なす、ということに2020年から法律を変えていくことになりました。

 

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一方で、特に保護者から、教科書は紙のほうが良いという意見は根強くあります。しかし、今後流通コストを考えると、教材はおそらくどんどんデジタル化していきます。子どもにすれば、教科書は一つの教科に一つしかありませんが、教材はいろいろあり、その教材がデジタル化するのに教科書が紙のままだとリンクができない。教科書もデジタルになれば、学習指導要領にコードを振ってタグ付けしておくことで、必要に応じて教科書の内容と教材がぱっとリンクするようなことができるのではないか、といったことも検討されています。

 

ですから、デジタル教科書だけの話ではないのです。タブレットが一人ひとりの子どものところに来た時に、子どもたちから見て、教科書や教材がうまくつながって学習が便利になるようにするにはどうすればいいか。ハードウエアの次には、そこまで含めた学習環境の整備をコンテンツレベルでやりましょうということなのです。

 

4.学校現場に求められること

紙の教科書とウェブサイトの読解の違いは

2015年のOECDのPISA(学習到達度調査)で、日本は読解力の成績が下がりました。これに対する文部科学省見解は、「それはコンピュータでテストをしたからだということでした。しかし、これからは入試もコンピュータでやっていこうとしているのだから、コンピュータでテストをすると点数が下がるというのはまずいのではないか、という話です。

 

これについては、中教審でもよく議論になりました。調査方式がコンピュータを用いたテストに全面移行というのは、PISAだけでなく一般のテストも、いずれは大学入試もそうなっていく。そうすると、画面に出ているものがきちんと読解できるかということが重要になるわけですね。

 

紙の読解がきちんとできる人は画面でも読解できるということは、表示デバイスが違うだけですから、大体わかります。しかし、文部科学省が行った情報活用能力調査では、子どもはあるページに出ているものを読解するのは上手であるけれども、複数ページのウェブサイトを見て総合的に判断していくこと必要な問題になると、途端に正答率が下がっています。つまり、情報を組み合わせて判断するのが苦手なのではないかということです。

 

今までは先生にコントロールされて、与えられたものの読解が多くされていました。これは基礎力として重要なことであり、悪いことではありません。しかし、実社会でネットを使っていろいろ調べて情報を得ていくことを考えると、二つ以上の情報をセットにして調べ、判断できる能力は大事ではないかと思います。

 

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また、この情報活用能力調査では、キーボード入力の低さが話題になりました。例えば小学校5年生で言えば、1分間で平均大体6文字ぐらい、12秒に1文字ぐらいしか打てない。平均でこの程度ということは、平均以下の人もいて、中にはお手上げみたいな人もいる。一方で学校、あるいはクラスによっては、皆がどんどん打っていくところもあります。これは能力の差ではなくて経験の差なのです。経験の差ということは、つまり学校でそのような学習活動を行っているかどうかというカリキュラムの差がこのような結果になったということですね。

 

情報活用能力として、例えばキーボードで言葉を入力して検索するとか、活動したことを打ち込んで記録しておくとか、そしてそれを後でスライドにするとかいったことには、キーボードの入力は不可欠です。中教審の最終答申には、それらをどのタイミングで学ばせるかについて、きちんととカリキュラム・マネジメントしないといけないと書いてあります。例えば文字入力やデータ保存については、国語のローマ字学習の時に行ってはどうかとか、総合的な学習の時間ではこういうことができるのではないか、ということが例示されています。これが次の学習指導要領に反映されて、各教科にかかってくることになります。

 

タブレットでうまくいっている授業は、教科書もノートもフル活用

タブレットを使ってうまくいっている授業では、タブレットだけでなく、教科書もノートも使っています。教科書を見ると、何回も勉強した跡があって、こういうところでタブレットがうまく機能して使われているなと思います。

 

繰り返し覚えることを一切せずに、タブレットを入れたら急に学力が付きました、などということはあり得ません。いろいろな学校を見に行ってみると、子どもたちに辞書を引いたり、繰り返して音読したりすることをきちんやらせた上でタブレットも使った時に、すごくうまく機能すると感じます。

 

学校教育法にも「基礎的な知識および技能を習得させる」と書いてあります。これは確実に習得させることが法律で決まっているということですね。そして、「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力、その他の能力をはぐくみ」と書いてある。この「これら」というのは、スライドの赤字の部分です。ですから、基礎・基本を徹底して、それを使って思考・判断・表現をしていきなさい、ということは既に法律に書かれているわけです。

 

次期学習指導要領に備えて、今行っておくべきこと

次の学習指導要領も、もちろんこの法律を受けて作られていて、思考力・判断力・表現力をきちんとはぐくむためにICTが様々に活用されることになります。そのために大事な、いわば四股を踏むような、学習のベースになるような努力の仕方や学び方といったことを、特に義務教育段階では担任の先生が、あるいは教科の先生が徹底して子どもたちに身に付けさせることを忘れてはいけないと思います。

 

次期学習指導要領の総則では、ICTのことが倍増しています。小学校のもので見ると、スライドの(1)でICTの環境をちゃんと整えろと書いてあります。つまり、これは学校でカリキュラム・マネジメントの一環でちゃんとやってくださいという意味です。(2)と(3)では学習活動も充実させろ、視聴覚教材とかも忘れるな、新聞とか統計も大事だぞ、さらに(4)では各教科の特質を忘れるなよ、ということです。

 

(5)には、コンピュータで文字を入力するなどのことは学習の基盤として必要なので、忘れずにちゃんとやってくださいということが書かれていますし、その上で(6)プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理をさせるための論理的思考力を身に付けさせることが大事ですよと書かれています。

 

さらに、各教科で言えば小学校3・4年生の国語では、引用の仕方や出典の示し方を指導しなさいとあります。これまでも引用させなさい、というのは書いてありましたが、知識として引用の仕方をちゃんと教えなさい、ということが明確に規定されました。さらに原因と結果とか、情報と情報の関係の付け方についても国語の学習指導要領に明確に書かれています。これは、ある意味画期的だと思います。

 

学習指導要領ではここまで細かく書かれているので、教科書検定もこれに合わせて行われるので、今後教科書もこれを踏まえたものになってきます。先生方もこれから各教科の指導の中に入れていくということになります。ですから、先生方には、まず学習指導要領をしっかりと読み合わせをして、この次にどうするのかというのを考えていただくというのが、告知期間である今年の一番大事な取り組みであると思います。

 

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1.次期学習指導要領の動向

 

※New Education Expo2017 東京会場講演 (2017年6月3日)