情報処理学会第80回全国大会
次期学習指導要領ではプログラミングが必修、思考力・判断力・表現力を評価する情報入試・・・転機を迎える情報科教育が目指すもの
情報系の最大の学会 情報処理学会の第80回全国大会が、3月13日~15日の3日間、東京・西早稲田の早稲田大学理工学部で開催されました。
今回の大会テーマは「みんなの情報処理教育」。2年後の2020年から小学校でのプログラミング教育がスタートし、中学・高校でもプログラミングが手厚く必修化されます。かつては情報分野の技術者や学生のみを対象としていた「情報処理教育」は、専門の枠を超えてまさに「みんな」が対象となり、またそこで培われる「情報活用能力」は,言語能力や問題発見・解決能力等とともにグローバル化や情報化、技術革新など激しく変化する社会を生き抜くための必須の力とされています。
小中高での情報教育の変化は、当然大学での情報教育、さらに学問分野としての情報学のあり方を変えていくことになります。
文部科学省は、次期学習指導要領のもとで学んだ生徒が大学入試を迎える2025年に向けて、新たな大学入試を開発する「大学入学者選抜改革推進委託事業」を進めています。大阪大学と東京大学・情報処理学会は、この事業の「情報科」分野を受託し、「情報科」入試における評価手法やCBT(Computer-Based Testing)のシステム化、さらにAIやビッグデータなど情報技術を駆使した問題評価や作問検討などに取り組んでいます。
今回の全国大会では、初日の特別講演で、国立教育政策研究所教育課程研究センターの鹿野利春氏が「小中高で育む情報活用能力」について小中高の具体的な対応、環境整備、問題点などについて話されました。
また、イベント企画の「文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業『情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発』(2)」では、このプロジェクトの進捗と昨年行われた大学1年生に対する試行試験の結果分析、今後の展望などが紹介されました。また、今回のパネルディスカッションでは、「情報入試のすゝめ」と題して、入試制度改革の議論の現場の生々しいやりとりや、長年大学入試科目として君臨する数学の入試の問題点など、非常に興味深い話題が提供されました。
鹿野利春氏 (国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官)
■イベント企画
文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業
「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」(2)
司会:角田博保先生(情報処理学会 情報入試委員会 委員長)
萩原兼一先生(大阪大学 情報科学研究科)
鹿野利春氏(国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官)
◇報告(1):「思考力・判断力・表現力を評価する枠組みとルーブリック」
萩谷昌己先生(東京大学 情報理工学系研究科)
◇報告(2):「模擬試験の実施と結果分析/本格的CBTシステム」
角谷良彦先生 (東京大学 情報理工学系研究科)
◇パネル討論:「情報入試のすゝめ」
パネル司会:筧 捷彦先生(早稲田大学 名誉教授)
パネリスト:
安西祐一郎先生(慶應義塾大学 名誉教授/独立行政法人日本学術振興会 理事長)
長岡亮介先生(前明治大学 理工学部 特任教授/NPO法人 TECUM 代表)
佐々木修先生(全国高等学校情報教育研究会 副会長/神奈川県立二宮高等学校 校長)