高校教科「情報」シンポジウム2018秋(ジョーシン2018)

高等学校「情報科」現職教員からみる新学習指導要領

東京都立三鷹中等教育学校 能城茂雄先生

中等教育学校の来年の新入生は、高校の新学習指導要領の初年度生

本日は、高校の情報科の現職教員から学習指導要領をどのように見るかという視点から、お話しします。

 

私自身は工学部の出身で、工業の教員免許を取って、都立高校の教員になりました。大学時代は趣味で出始めの頃のインターネットを楽しんでいて、現職教員研修で情報の教員免許を取りました。しかし、情報科の教員としてのバックボーンが欲しいと思ったので、奈良先端科学技術大学院大学に2年間内地留学して、専修免許情報を取りました。留学当時はWIDEプロジェクトに大変お世話になり、好きなだけインターネットに触れるという、とても楽しい時間を過ごすことができました。

 

その後、高校の教員をしながら国際基督教大学などで情報科教育法を教えたり、縁あって教科書や資料集を書いたりして、現在は三鷹中等教育学校の教員をしています。

 

よく「中等教育学校です」と言うと、「中学校ですか」とおっしゃる方がいます。ご存知と思いますが、平成10年に学校教育法が改正されて新たにできた、中学校でも高校でもない、中等教育学校です。現在国立が4校、公立が31校、私立が18校あります。よくある私立の中高一貫校、いわゆる〇〇高校附属中学というものとは別です。中学校相当を前期課程、高校相当を後期課程と呼んでいて、学年で言えば中1から中6まであります。学校内では、高校生に当たる学年は4年生、5年生、6年生と呼んでいます。

 

中等教育学校は法令で6年間の一貫教育が定められているので、中学校と高校でかぶっている部分、具体的には、社会科の地理や日本史ではどうしてもかぶってくる内容があるので、その分標準単位数を下回って、日本史4単位必修のところが2単位でよい、といったことはあります。もちろん、届け出は必要ですが、効率的に6年一貫の教育をすることができます。

 

本校は、東京都のICTパイロット校の指定を受けて、生徒1人1台にLTE(Long Term Evolution:現在の第3世代携帯電話(3G)を進化させた通信規格)のSIMが入ったPCを渡して実証実験をしています。

 

平成28年に始まった時は前期課程3学年分の480台と、教職員80台でしたが、新入生が入るごとに160台ずつ増えて、今は1年生から5年生の約800人が、7GB×800人でシェアパックをしています。

 

さて、「新学習指導要領の変遷と生徒」という視点で見ると面白いことがわかりますので、現在の小学校6年生に着目しながらご説明します。

 

彼らが小学校に入学したのが2013年4月です。そして、彼らが高校1年生になる2022年が、新学習指導要領の1年目に当たります。

 

つまり、中等教育学校から見ると、来年2019年の新入生は、新カリキュラムの対象者ということです。3年後に学習指導要領が変わると考えると「まだまだ先」と思いがちですが、6年間の教育を考えていく必要がある私たちにとっては対応が急務のため、既に動き始めています。

 

情報がライフラインとなった世の中で生まれ育った子どもたちがやってくる

中学・高校の生徒はよく「コンピュータは嫌い」と言いますが、一方でスマートフォンは触れます。目の前のスマホがコンピュータであることを認識させるところから進めると、話がしやすくなります。

 

余談ですが、かつては、文化祭などで学校の一眼レフカメラなどを生徒に貸し出しする際には、貸出票や借用書を書かせていましたが、今はスマホと引き換えに貸し出します。なぜなら、その方法ならば確実に返却されるからです。彼らにとって、それだけスマホは毎日に不可欠なものとなっているのです。

 

さて、こちらは先ほどお話しした現在の小6生が生まれた頃、2005年のローマ法王の謁見を、一目見ようと集まった人たちの写真です。私たち大人から見ると、2005年はさほど「昔」とは言えないように思います。時代としては、Facebookはまだ誕生したばかり、YouTubeはまだベータ版風の動画サイトでした。iPhoneはまだ登場していません。

 

それが、彼らが小学校に入学した2013年になると、同じ場面がこのように変化します。誰もがデバイスを持ち、「一目見よう」ではなく、「1枚撮ろう」とかざしているのです。これから新学習指導要領で学ぶ子たちは、このような時代に生きているのです。

 

コンピュータが嫌いという現在の高校生とも、もはや違います。次の時代を担う子どもたちは、われわれ大人が思っている以上に情報機器に触れており、それが当たり前の中で生まれ育っているのです。

 

ご存知の通り、私たち小学校・中学校・高等学校の初等中等教育の学習内容は、学習指導要領によって決められ、国の法律の影響を大きく受けます。

 

これまでの中でも特に大きな変化は、2007年に戦後初めて改正された学校教育基本法で、戦後初めての改正とされています。義務教育の目標が「衣、食、住、産業」の理解と技術の習得だったのが、「衣、食、住、情報、産業」になりました。子どもたちにとっては、「電気、ガス、水道」だったのが「電気、ガス、水道、スマホ」なのです。

 

小学校では基本的な操作と情報モラルを身に付け、教科の目標達成のためにコンピュータを使う

そのような環境で育ってきた子どもたちが、新学習指導要領のもと、小学校では何を学ぶのでしょうか。

 

小学校の総則には、「情報手段に慣れ親しむ」こと、「コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作」、そして何かと話題に事欠かない「情報モラルを身に付けるように」と書いてあります。

 

では、具体的に「基本的な操作」とは何でしょうか。

 

スマホを持つ世代ですから、フリック入力のスキルは非常に高いです。先日生徒たちがインスタグラムに『いいね!』をするのを実際に見て、とても驚きました。両手でめくる、たたく。『いいね!』の気持ちが入っていないどころか、きちんと読んですらいません。本人たちいわく、「後で読むけれど、とりあえず『いいね!』することが重要」なのだそうです。

 

また、現在私は中学校の技術・家庭科も教えていますが、例えば共有フォルダーなどに作業途中のものをアップしようとした際、ZIPで圧縮するといいよという話をしても、通じないのです。このような状況を見ていても、やはり義務教育段階でキーボードによる入力、そしてファイルの保存や整理については、使用するデバイスに関わりなく、基本操作としてきちんと身に付けてきてほしいと感じていました。こういったことは、新学習指導要領の総則によると、基本的なコンピュータ操作の部分として、今後は小学校から各教科の中で基本的な操作としてできるようにと記載されています。

 

さらに、小学校段階でのプログラミング教育については、総則の中で「教科の中、様々な学習活動の中で取り組むもの」として位置付けられています。

 

小学校ではプログラミングの教育ポータル(※)があり、いろいろな小学校による実践がまとまっていますので、ぜひ一度ご覧ください。小学校から上がってくる子どもたちが、どのようなことを学んでくるのかがわかります。これまでの子どもたちとは全く異なることが、実感できるかと思います。

 ※https://miraino-manabi.jp/

 

小学校の先生方と話していて感じるのは、小学校においては教科の目標を達成することが重要であり、プログラミング教育や、プログラミング的思考を身に付けることが目的ではないということです。情報活用能力を身に付けてほしいというところは昔から変わらないものの、それを実現するためにプログラミング的思考を入れてみると、より教科の狙いが達成できるのではないかという発想があり、ここが重要だと捉えています。それを受けて、小学校段階でのプログラミング教育のあり方の定義がされているので、この新学習指導要領の解説は、一読する価値があると思います。

 

中学校技術科の根底には「ものづくり」。「社会と情報」「情報の科学」の内容のほとんどが中学校で既習に

次に、中学校における情報の位置付けについてお話しします。

 

技術・家庭科に「情報技術」という領域があります。一昔前と異なり、現在は女子も技術の授業を受けますし、男子も家庭科を受けます。

 

中学校は単位という概念がなく、「時間」で区切られていますが、中学1年時に、技術と家庭科は高校でいうところの2単位、週2時間、すなわち技術と家庭科で各週1時間が割り当てられています。中2で同じく2単位、週2時間。ところが中3は変則で、技術と家庭科のセットで週1時間です。これに対して、高校で情報Ⅰが2単位とするならば、中学の技術・家庭科は、技術と家庭のセットで5単位です。技術だけで考えると2.5単位です。

 

この2.5単位を、このスライドにあるように「A材料と加工の技術」、「B生物育成の技術」、「Cエネルギー変換の技術」「D情報の技術」と細分化します。3年間、2.5単位の中で、この四つをバランスよく行う必要があります。

 

ここで「D情報の技術」の内容を見てみると、まず生活や社会を支える情報の技術について調べる活動を通して学ぶこととして、情報の表現、記録、計算、通信、情報のデジタル化、処理の仕方、システム、情報セキュリティに関する基礎的な技術の仕組み、情報モラルの必要性、そして技術に込められた問題解決など、高校の情報の学習指導要領に出てきそうな用語が並びます。

さらに、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツをプログラミングで作る際には、基本的な仕組み、安全・適切なプログラム、デバッグ、課題解決、メディアの複合なども学ぶことになっています。

また、計測・制御のプログラミングでもデバッグが出てきます。さらに、高校の情報Ⅱにも共通しそうなものが入ってきます。

まとめとして、これからの社会の発展に情報技術のあり方をどのように考えるかという活動についても、書かれています。これは情報Ⅱの(5)にも近いかも知れません。

 

中学校の技術の教科書には、2進法や画像のデジタル化、画素数などについても全て記載されています。ただ、中学校の技術・家庭科の場合には、やはり「ものづくり」という考えが根底にあるところが、高校の情報科とは異なります。

中学校についてまとめると、多くの生徒はここまでの内容を義務教育で修了させた上で、高校の情報を受けるということです。

 

中学校の技術科には、従来から計測・制御におけるプログラミングはありましたが、若い先生方を中心に、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツプログラムが追加される事例が出てきました。

 

もちろん、昔ながらの「のこぎりを丁寧に引くやり方」なども残ってはいますが、現行の「社会と情報」「情報の科学」で扱っていた内容のほとんどが、中学校技術科で既習になることがわかります。

 

高校の共通教科「情報」では学びたいこと・具現化したいことのためにどんなツールが必要かを考え、深い学びへ

さて、高校の共通教科「情報」です。

平成29年の7月に出た中学校技術学習指導要領解説書を読んで、これを受けて高校の情報科はどうすべきかを考えました。高価なものではありませんので、皆さまもぜひ手に取って読んでみてください。PDFでももちろん見られますが、やはり冊子になったものの方が、しっかり意識が入るように思います。

 

そして1年後に出た共通教科「情報」の学習指導要領解説書を読んでみると、既に様々な場面で話されていることですが、現職教員は、情報の科学的な理解に関する指導が十分でないことに気付きます。

 

ここからは、「情報Ⅰ」「情報IIの」内容が定義されたことを受け、高校現職教員から見た情報科という視点でお話ししたいと思います。

 


 

まず「I(1)情報社会の問題解決」は、これまで技術科などでやってきたことの振り返り、いわばイントロダクションです。問題解決方法を身に付けることに主眼がおかれます。

「I(2)コミュニケーションと情報デザイン」、実はここが非常に重要なのではないかと思います。

 

プログラミングにおいてもデータサイエンスにおいても、データの活用も話題にはなりますが、今後10年間このまま話題になり続けるかというと、時代は変わるのが当たり前になってきます。そのときに、情報Ⅰで学ぶ情報デザインの考え方がしっかり身について、プログラミングにその考えが生かせる、データサイエンスに生かせる、という部分をどれだけ押さえられているかが、実は重要なのではないでしょうか。

 

「I(3)コンピュータとプログラミング」では、プログラミングを学びます。

 

ここでのキーワードは「関数の使用による構造化」ですので、いわゆるブロックプログラミングと呼ばれるものは小・中学校で終わらせておき、高校では関数の使用からの構造化ができることが求められると思います。

 

「I(4)情報通信ネットワークとデータの活用」については、この後のデータの活用のところで出てくるように見えますが、中学校でIPやTCPが出てきているので、そこはわかっている前提で進められます。

 

こちらは、小学校学習指導要領の算数の解説書の中で見つけたものです。

※クリックすると拡大します

 

今回の改訂にあたっては、情報やデータサイエンスに注目が集まったり、高校の数学でベクトルが数学Cに移行したことなどばかりが話題になったりしていますが、実は「データの活用」で、非常に注目すべき見直しがありました。

 

すなわち、「データの活用」がK12の小・中・高を通した1本の軸が通っていることです。今までは、小学校では「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」の四つで、「数量関係」の中に「資料の整理」が入っていたのですが、新しい学習指導要領では、「データの活用」が最初から入っています。その後の中学の数学でも「データの活用」が入り、高校の数Ⅰと情報との連携するようになっています。高校で情報Ⅰを2年に置いたり分割したりして縦の連携を損うのではなく、連続することが大切だと言い始めたのだなというのが、学習指導要領の解説を見て思うところです。

 

私のまとめです。情報を学ぶためには、学びたいこと、やりたいこと、具現化したいことがあって、そのためにどんなツールを使うかが大切だということです。officeソフトの使い方やPhotoshopの使い方を教え直したりすることを否定するわけではないのですが、それが目的になってはいけない。どうすれば、それが深い学びになり、どんな事例を高校や中学校ですべきかを考え、決めていく必要があると思っています。

 

[質疑応答]

Q1 高校教員:中学校の技術科と高校の情報科で連携して、カリキュラムを構築していらっしゃいますが、そういう中等教育学校のメリットというのは、他にどのようなものがあるのでしょうか。

 

能城先生:中等教育学校のメリットは、情報科単独で考えてもたくさんあります。例えば、「これは中学校でやったよね」ということを「やっていません」とは言わせないことですね(笑)。現行では、中学校には情報科の先生がいないので、情報活用能力の育成の部分は、数学や理科や技術科の先生が担っていますが、本校では私がいろいろな場面に呼ばれて、中学校1年生から情報教育を行っています。ですから、入学したての生徒にIDとパスワードの重要性やセキュリティ、モラルも指導していますし、問題が起きた時には、発達の段階に応じた指導をきちんとしています。

 

高校の情報の4月第1回の授業は、いきなり16進から始まります。2進法やデジタル化は、中3の技術の中でしっかり教えているので、中学校までにやってきたことがバラバラで、結局やっていない人に合わせて同じことを繰り返す部分がなくなるので、より深い学びができます。

 

また、音のデジタル化をするときに「音は波である」という話をしますが、これは中学校の理科でやっていることです。これも、「そんなの習ってない」と言われる前に、理科の先生に板書のノートなどを見せてもらって、「〇月にやっているよね。〇〇先生に聞いたよ」と言うと、生徒もしぶしぶ「うん」と言っています。

 

逆のことも起きます。数学科の先生が、「情報で2進法や16進法はやっている?そこで小数は扱った?足し算や掛け算は?」などと聞きに来られるので、「少数はやりました。足し算はやりましたが、掛け算は扱っていませんから、そこは数学でやってください」と連携しています。

 

 

Q2大学教員:今、大学1年生向けに、「情報リテラシー」という科目を教えていますが、セキュリティの重要性とか、ZIPファイルの扱い方といったことまで教えています。

 

今後は、そういったことは大学入学以前に学んできているものとして、大学ではもっと専門的なことを教えられるようになるのでしょうか。それとも、やはり大学でも振り返りをしなければならないのか、先生のご意見をお教えください。

 

能城先生:私は、学び直しはなくなると思っています。本当に共通テストに情報Ⅰが出て、そのために必要な知識やいろんなことを勉強するようになれば、例えば、今ZIPファイルという具体的な名前が出てきましたが、ZIPファイルとは何か、どう扱うか、ということを単に学ぶのでなく、その必要性やその意味がきちんとわかった上で大学に来ることになると思います。

 

さらに大学入試でもCBT(Computer BasedTesting)が検討されていますし、web出願がすごく増えてきています。そうなると、出願ページの注意事項に、「Internet Explorerのバージョンは〇〇以上、Firefoxなら△△、Google Chromeならバージョン××以降をお使いください、顔写真は解像度が〇〇以上の写真をアップしなさい…」と書いてありますから、その意味を理解できなかったら願書が出せずに苦労するわけですから、おのずと学んでいかなければならないわけです。

 

こういった学習が、小・中・高できちんと終わっていれば学び直しは必要なくなっていのではないかと思います。さらに、私が一教員として願うのは、今共通テストばかり話題に出ますが、もう一つの「高校生の ための学びの基礎診断」の方に情報を入れていただけたら、義務教育段階の学びがここで保証されると思います。そうすれば、基本的なことを高校で学び直しをしなくていいし、共通テストに導入されれば、同じように大学でもう一度やらなくていい。そうすると、小・中・高・大と、一気に情報教育が進むのではないか、と私は思っています。

 

 

Q3教育委員会:三鷹中等教育学校がICTパイロット校になって今年が3年目、来年が4年目ですね。スタートの年に1年生だった生徒が、来年4年生になって高校の教科情報を学ぶとき、教科情報の取り組みがどんなふうに変わっていくと考えていらっしゃるでしょうか。

 

能城先生:学校としては教科情報という観点ではなく、ICTを活用することでどのように学力が向上するか。ICTが当たり前の環境になったときに、授業はどう変わるのかということについて取り組んでいます。そのため、情報に限らず全教科でICTを取り入れています。

 

Q3教育委員会:多分、ICTというと今まではほとんどの学校がパソコン教室で使っているのが大きく変わっていくのかな、と思います。そうすると自由度も増えて、選択肢も広がっていろいろバリエーションが出てくるかな、と期待しているのですが。

 

能城先生:もちろん、他教科は普通教室で展開していますので、タブレットPC、いわゆるLTEの入ったものを使っています。事前にタブレットで「ここを学習してきてね」としている例もありますね。

 

なるほどと思ったのは理科で、よく先生が予備実験をして、生徒に実験の仕方を説明して、それから実際に実験をするというのがありますが、そうすると、説明の時間が結構かかってしまいます。そこで、予備実験の様子をビデオに撮っておいて、生徒に事前に提示をしておく。生徒は動画を見て、実験の方法も流れも分かっているので、実験自体の時間が省略できますし、これをやったらどうするんだろう、という次の学びにつながります。この理科の実践はとてもよかったと思います。

 

Q3教育委員会:情報科がどうなるか、ということにとても興味があるので、実際にやってみられたら別の機会にでもぜひ紹介してください。

 

 

Q4大学教員:中学校の技術科で、高校の情報科でやっていることと分野や項目で重なるところがありますが、中学校でやる際の深さや狙いと、高校でやる際の深さと狙いは全く違うと思います。その意味で、学びのスパイラルというか、先ほど出てきたリメディアル的なことも含めて行う必要はないでしょうか。

 

能城先生:おっしゃる通りで、例えば、デジタル化一つを取っても、中学校の中で学ぶデジタル化と、高校の学ぶデジタル化で、量的にも質的にも異なります。中学の技術は、根底にものづくりがあり、ものづくりをするために必要な情報の技術です。技術・家庭科の専門家の方は、また違ったご意見もあるとは思いますが、小学校も中学校も、情報活用能力の育成は総則に明記されていますので、情報活用能力の育成は、技術科だけに押し付けるのでなく、学校全体で取り組まなければならないと思います。

 

 

Q5大学教員:先生の学校ではICT教育のパイロット校ということで、学校を挙げて取り組んでいらっしゃっていて、そこでの実践がいろいろな学校に広がっていくと思いますが、その実現への道筋のようなものはあるのでしょうか。

 

能城先生:本校の取り組みは一人1台タブレットを持つというもので、これは本校ともう1校あるのですが、実際のところ非常に予算がかかるので、これを都立高校200校全てで行うのは無理だと見られています。

 

そこで、今年度と来年度の2か年で、生徒のスマホを使ってICT活用をするというBYOD(Bring Your Own Device)の実証実験校が、既に10校走っています。私たちの研究指定の終了と、このBYODの実証実験が二つ同時に終わるので、現在知事が言っているスマートスクール構想が具体化するのではないかと思います。

 

具体的な内容はまだ見えていませんが、これは多分、文部科学省が言っているスマートスクール構想とそれほど違わないと思います。われわれは都立学校の一つとして、まず実践事例を出して、それをいかに全都に、そして全国に示すのが使命だと思っています。

 

高校教科「情報」シンポジウム2018秋 講演より