文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」   

第3回シンポジウム「2025年度 高校教科「情報」入試を考える -思考力・判断力・表現力を評価する試験問題の作問方法- 」講演 

情報システムとデータベース

神戸市立科学技術高校 中野由章先生

情報システムとデータベースは別々にルーブリックを作る

情報Iの学習指導要領には、「(4)情報通信ネットワークとデータの活用」のところで、情報システムとデータベースについて、このスライドのように記述されています。

 

もちろん、情報システムはデータベースの上で動いており、切り離せない存在ですが、ルーブリックとしてはこれを分けて考えた方がよいように思います。

 

 

下図は情報システムとデータベースのルーブリックです。これらを別々に見てみます。

 

 

まず情報システムについては、レベル1-1「与えられた情報システムに関する質問に答えられる」かどうかから始まり、レベル1-2が「与えられた情報システムの利用法の説明」、レベル2「与えられた情報システムの利便性と問題点の説明」、レベル3「示された目標に応じた、情報システムの改善案の提案」、そしてレベル4「示された課題に対して目標の設定を含めた情報システムのデザイン」とレベルが上がっていきます。

 

 

データベースが下図です。レベル1-1が「与えられたデータベースに関する質問に答えられる」、1-2が「与えられたデータベースにどのように問い合わせたらよいか答えられる」、レベル2-1が「与えられたデータベースの利点と問題点を説明できる」、2-2では「与えられたデータベースの問題点を修正できる」。そして、レベル3になると「示された課題に対してデータベースを作成できる」、レベル4では「示された課題に対して、目標の設定を含めてデータベースをデザインできる」ということになっています。

 

 

データベースのレベル別作題例

作題の具体例を見ていきましょう。あるデータベースにおいて、選択、射影、結合という機能をどのように利用するか、そしてそれぞれについて意味を問うという問題です。

 

 

これに対してレベル1-1、1-2では、例えば顧客データの選択項目で、「性別 男」と入れたらどんな結果が出るのかといったことや、逆に別の結果が欲しかったらどのように問い合わせれば良いかに答えられることが求められます。

 

レベル2-1は、テーブルを分割せず、一つの大きなテーブルを用意した際の利点と問題点を指摘するという課題です。

 

 

レベル2-2は、それができた上で問題点改善のためにテーブルを再設計できるかを問うという問題です。

 

 

では、レベル3「データベースを作成できる」とはどのような問題を与えたらよいでしょうか。

例題では、先生から具体的に必要な機能を明示された上で、データベースを作ってほしいと言われたときに、どんな項目でどんなテーブルを作ればいいかの設計ができることを問うています。

 

 

さらにレベル4の「データベースをデザインできる」では、リクエストしてくる人の曖昧な要望を聞き出した上で、要件定義を行って問題解決の方法を提案し、必要なデータベースをデザインするというものになるかと考えます。ここが最もレベルの高いところです。

 

 

情報システムのレベル別作題例

さて、では情報システムの場合はどうなるでしょうか。

 

例えば、レベル2-1のシステムの利用方法の説明に関する問題ですが、ここでは学校の購買でパン予約購入システムを構築することにしたという設定で、そのシステムの利用の流れについて記述しなさい、というものです。このレベルであれば、自由記述よりも、指定の項目を正しい順に並べ変えるといった出題が想定されます。

 

 

レベル3の「情報システムの改善案を提案できる」というのは、あるシステムについてより利便性が高まると考えられるサービスを選択し、それをどのように活用するとよいのか説明しなさい、というような出題が考えられます。

 

こちらの問題は、スマホに内蔵されているGPSを活用することでより利便性が高まるサービスを選び、どのように活用するのかを書くというものです。

 

 

さらに、「示された目標に応じた改善」ということを問う問題としては、スマホから利用できる観光地問い合わせシステムを、観光地推薦システムに改良する場合にどのようなサービスが提供できるかを書かせるというものが考えられます。

 

全体を通して言えることですが、記述は採点がかなり大変になることが予想されます。

 

文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」  

第3回シンポジウム「2025年度 高校教科「情報」入試を考える -思考力・判断力・表現力を評価する試験問題の作問方法- 」講演より