文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」   

第3回シンポジウム「2025年度 高校教科「情報」入試を考える -思考力・判断力・表現力を評価する試験問題の作問方法- 」講演 

ネットワークの仕組み

神奈川大学 永松礼夫先生

新学習指導要領で、ネットワークは学習内容だけでなく学習環境でも言及

私からは、「ネットワークの仕組み」というタイトルでお話しします。この分野は、私と文教大学の佐久間拓也先生と二人で担当しました。

 

まず、高校教科「情報」の新しい学習指導要領の記述で、「ネットワーク」という言葉を探していくと、「情報I」の4番目の「情報通信ネットワークとデータの利用」に、下図のような形で入っています。

 

また、学習指導要領の第3款「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」の「内容の取扱いにあたって配慮すること」では、「各科目の目標及び内容等に即して、コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に取り入れること。その際、必要な情報機器やネットワーク環境を整えるとともに、内容のまとまりや学習活動、学校や生徒の実態に応じて、適切なソフトウェア、開発環境、プログラミング言語、外部装置などを選択すること」と、環境整備についても言及されています。情報Iと情報IIの二つの科目を束ねて、各科目にわたる指導計画の作成と内容の取り扱いで、通信ネットワークを活用した実習を行ってくださいということです。

 

また、学習指導要領の第3款「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」の「内容の取扱いにあたって配慮すること」では、「各科目の目標及び内容等に即して、コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に取り入れること。その際、必要な情報機器やネットワーク環境を整えるとともに、内容のまとまりや学習活動、学校や生徒の実態に応じて、適切なソフトウェア、開発環境、プログラミング言語、外部装置などを選択すること」と、環境整備についても言及されています。情報Iと情報IIの二つの科目を束ねて、各科目にわたる指導計画の作成と内容の取り扱いで、通信ネットワークを活用した実習を行ってくださいということです。

 

ルーブリックでは2-1と2-2の間に境目が

続いて、ルーブリックの試案です。下図のような6段階を設定しました。何となく2の1と2の2の間ぐらいに境目ができていて、前半は知識が中心、後半が手を動かして判断をして解いていくものが中心になっています。

 

<レベル1>ネットワークに関する質問に答えられる・動きをトレースできる

最初の段階1-1は、「ネットワークの構成と、その構成要素に関する質問に答えられる」ということで、知識問題を出してみました。インターネットのプロトコルであるTCPによって提供される機能を選ぶものですが、これは情報入試研究会の第3回の模試で出題したものです。

 

1-2は、「与えられたネットワークの動きをトレースできる」ということですので、端末とルータとサーバで構成されたネットワークで動きの追跡をすることで、システムを理解しているかどうかを測ります。接続した線を書いてどこを流れているのかだけでなく、ある経路が不通になったときにはここを調べたらいいね、という知識につながってほしいわけです。

 

 

もう一つは、コネクションをつないでから通信が実際に流れるかどうかという流れや手順を押さえられているかどうかを聞くのが、このレベルかなと考えます。

 

 

<レベル2>性質・特徴・問題点を説明できる、指示された機能を持つように修正できる

レベル2-1では、「与えられたネットワークの性質、特徴、問題点を説明できる」ことを問います。例えば、通信のボトルネックはどこにあるかというようなことを問うような問題です。恣意的につながれたネットワークの構成を見て、例えばどこの線が細いから、このシステム全体はスピードが出ないといったようなことに気付いてほしいです。

 

 

レベル2-2は「与えられたネットワークを、指示された機能を持つように修正できる」ことですので、ここからは、それを具体的にどうすればちゃんとつながるのか、みたいなことを問うていくことになります。例えば、線の太さのバランスが悪いときに、どのように修正したらよいかということを考えさせる問題です。選択肢を示すような方法もありますし、全て自分で描かせる方法もあるでしょう。

 

 

<レベル3>与えられた機能を満たすネットワークを設計できる

レベル3になると、「与えられた機能を満たすネットワークの設計をできる」かどうかを見ます。ただ、高校生レベルであることを想定すると、あまり難しいことはできないと思います。こちらも以前の情報入試模試で出題した問題ですが、右の方にあるように、ブロードバンドルータ、4ポートスイッチ、LANポートがついたパソコンをつなぐというものです。この問題では、二つあるスイッチが、いわゆる芋づる式にどこのポートから入って次につながっているかがわかれば、いわゆる一筆書き問題になってしまいます。ネットワークの本当の知識を問うような問題を出題するか、コンピュータベースの試験で実施するときにこの作図をどのように出題するかという課題も、考えなければなりません。

 

 

<レベル4>与えられた機能・要求をより良く満たすネットワークを設計できる

レベル4は「与えられた機能・要求をより良く満たすネットワークを設計できる」ですから、先ほどのレベル3のネットワークに、さらにアクセスポイントと無線でつながるパソコンを追加してつなぐとしたらどうするのか、追加で購入する機器はありますか、という問題も考えられます。この場合、芋づるの1か所を切ってアクセスポイントにつなげば、そこから電波が飛ぶから買い足す必要がないというのが答えです。

 

 

もう少し実際的なネットワーク設定の課題としては、ブロードバンドルータを入れると、中から外には出ていくけれども外から中には攻めこめないとか、中のものも相互には通信できない設定だとかいった辺りを聞くこともできるでしょう。そういう意味では高校生の経験レベルに即した小規模ネットワークとはどれくらいのものなのかというのが、出題のレベルに利いてくるという感じです。

 

学習指導要領を見直すと、ネットワークの仕組み以外にも問題の発見・解決とかプロトコルの役割とか、セキュリティーについても書かれています。仕組みを理解しているかどうかという意味では、最近話題になった、無線のプロトコルに脆弱性があるから、こことここの区間は危ないけれど、SSL接続をしていれば全体では安全ですよ、といった話ということが問えればよいですが、これもなかなか難しい。学習指導要領には「小規模なネットワークを設計する活動を行う」と書かれていますが、実際どの程度のものを扱うかということで、問題のレベルが決まってくると思います。