公開シンポジウム「情報教育の参照基準」
情報教育の参照基準作成に際して情報処理学会の果たした役割
國學院大學
/情報処理学会情報処理教育委員会幹事・一般情報教育委員会副委員長
高橋尚子先生
私は情報処理学会で、情報処理教育委員会の幹事と一般情報教育委員会の副委員長をしています。一般情報教育委員会というのは、共通教育(教養教育)で情報教育をどのように行っていくかや内容を検討しています。ここでは、その二つの組織をご紹介します。
複数の委員会で構成される「情報処理教育委員会」
情報処理教育委員会は、1989年に文部省(現 : 文部科学省)の委託を受けて、大学等における情報処理教育のための調査研究のために立ち上がりました。1991年には、大学等における「情報処理教育カリキュラム調査委員会」と、なりました。その後、1998年に情報処理学会の常設委員会として「情報処理教育委員会」が設立されました。
※情報処理教育委員会
https://www.ipsj.or.jp/annai/committee/education/index.html
情報処理教育委員会には、現在、情報システム教育(IS)、一般情報教育(GE)、高専教育(KE)、初等・中等教育(PS)、情報入試(JN)、教員免許更新講習(TD)、情報科の標準カリキュラムを検討するJ17、エンジニアのカリキュラムを審査するアクレディテーション(AC)、そして、技術士(PE)という八つの委員会があり、あらゆる分野に対して対象者別、段階別、技術分野別、目的別の活動を行い、情報を共有しています。
これらの委員会に加えて、数年ごとにいくつかのワーキンググループができ、それぞれのトピックやイベントを検討するということを行っています。そして、他の学術分野の参照基準を参考にしながら、情報教育の参照基準をどのように作ったらよいかということを様々に検討してきました。
「大学入学者選抜改革推進委託事業」の中で検討された参照基準
2016年9月から今年の3月まで約2年半にわたる、文科省の「大学入学者選抜改革推進委託事業」では、大阪大学が主幹となり、東京大学・情報処理学会が連携機関として、情報科の大学入試をどうするかということについて検討してきました。評価手法や入試問題について約30回にわたって会合を持ちました。その中で情報教育の参照基準についても何度か話し合いました。
大学入試というのは高校から大学へ連携する部分なので、私たちが勝手に何かを考えるわけにはいきません。そのため、情報教育の参照基準は大変重要で、次の段階に進むとき連携部分でどのような形で能力を判定すればよいかということを検討してきました。
特に、学力の三要素「知識・技能」「思考力・表現力・判断力」「主体的に学習に取り組む態度」のうち「思考力・表現力・判断力」を情報科の試験で、つまり情報学的なアプローチで、どのような問題を出題し、どのような方法で実施すればよいのかということは重要な課題でした。
このように情報教育の参照基準は、一元的に作ったものではなく、いろいろな目的の人たちが、いろいろな視点、レベルで形作ってきたものであることを踏まえて、各先生方のご発表の内容をお聞きいただければと思います。
公開シンポジウム「情報教育の参照基準」(主催:日本学術会議情報学委員会情報学教育分科会)
2019年5月18日(土) 東京大学山上会館