New Education Expo2019
となりの高校、ICT活用どうしてる?
〜アクティブ・ラーニング、ポートフォリオ(高大接続)、探究等の各場面〜
関西学院千里国際中等部・高等部 米田謙三先生
今日のテーマの「となりの高校、ICT活用どうしてる」、これは私が名付け親です。ICT活用にどんな事例があるかということを皆さんに知っていただくためには、現場の先生から発信するのが一番よいと思っています。このNew Education Expoでは、東京・大阪の会場の恒例のセミナーとして、毎年、非常に多くのの方にご参加いただいています。今日も皆さんのお土産になるような部分がいろいろあると思います。
高大接続は、今大きく動いている
今回のテーマのポートフォリオ(高大接続)、アクティブ・ラーニング、探究というのは、それぞれ一つでもかなり大きく、重いものです。今日は、その中でもできるだけ実践の中でいろんなヒントになるところを中心にお話しします。そして、このセミナーは終わってからが大事です。終わってから、ぜひ私達とつながっていただいて、一緒に実践を進めていきましょう。まさに今、ICTだからこそ、遠く離れた方とでもつながることが可能です。余裕があれば、近くの席の方と意見交換をしていただいても面白いと思います。よろしくお願いいたします。
私は今、関西学院千里国際中高等部におります。今は、社会科がメインの教員をしています。もともとは英語と情報を教えていました。本校は、2年前から完全にBYOD(Bring Your Own Devices)として、1人1台端末は何を持ち込んでもよいし、何を載せてもよいことにしました。学校設立当初から定まった中間・期末試験期間はありません。学期完結の単位制となっていて、生徒たちがそれぞれ時間割を決めています。制服はありません。校則も5リスペクトということ以外はほとんどありません。
今、学校では、社会科と総合探究科という科目を担当しています。全国的にも、特に今年は探究型のセミナーをしてほしいという希望が多くて、いろいろな地域の教育委員会などからお話をいただいて実施させていただいています。
さて本題です。高大接続という点では、入試にもいろいろな動きがあります。つい先日、大学入試センターは2020年から始まる大学入学共通テストの英語で、リスニングとリーディングの配点をそれぞれ100点、計200点とすることを発表しました。現在のセンター試験は、筆記200点、リスニング50点の計250点ですので、これは一つ、画期的なことになるような予感がします。それから、教科情報が共通テストに入るという話もあります。まさに今、過渡期というのがこの辺りかというところです。
ポイントはグローバル化・ICT・少子高齢化。求められるのは校内の指導の体系化
これらを1枚の絵にまとめたのが下図です。ポイントのキーワードとしては、グローバル化とICTと少子高齢化です。これが日本に押し寄せてくるとき、教育に期待されることの変化っていうのが、教育観や教育の内容、教育のスタイルです。そこに大学改革や入試改革がからんできます。こういったことが、おのずと小中高校の変革につながってくるということになります。
一方、現場で今一番求められているのが、上図の右側の「校内の指導の体系化」というところです。特に中高一貫校の場合は3か年ではなく6か年ですし、私学などで小学校があるところは小中高、さらに大学まで視野に入れた指導ストーリーを、今どの学校でも考えている。いわば持続的、サスティナブルな体系化です。今はやりのSDGsですよね。
そういうことになると、よく使われる授業スタイルがPBL(Project Based Learning)です。ただ、私自身は、Project Basedというのはある意味危険だと考えている部分があります。実はプロジェクトというのは、非常に難しい。ハードルが高いのです。そのプロジェクトをどう設定するかというのがポイントで、何をもってプロジェクトとするのかを考える必要があります。Problem Based Learningの、いわゆる問題解決・課題解決とどのように結びつけていくかということになると、キーはカリキュラム・マネジメントです。その辺りについては、このあといろいろな先生のお話の中に、ポイントになる部分があると思います。
現場の先生が感じている課題は何か
下図は、Classiを使っている全国の中学校・高校の先生から上がってきた課題です。皆さんと共有しておくとよいかと思いましたので、ここで紹介します。
上から順に行くと、まず主体的・対話的で深い学びからの授業改善。次の学習指導要領でも、「主体的で対話的で深い学びの視点からの授業改善」というのがキーになります。「深い学び」というのが特に難しいですね。
そして、指導のところに出てくるのがPDCAサイクルです。また、先ほどもお話ししたように、高校の場合は、新しい大学入試というのはどうしても指導のキーになるので、その大学入試に授業をどうつなげるかがポイントになります。大学の3ポリシー(アドミッション・カリキュラム・ディプロマ)というのは、「この観点でどのような学生を取って、どのように育てるか」という表明ですので、そこにつなげていくのがAO入試です。AO入試では、その大学の3ポリシーに合ったポートフォリオを出す必要がありますが、そこのポートフォリオという部分で今やっているのが、JAPAN e-Portfolio、JePです。
一方で英語は、入試が大きく変わります。私はもともと、入試でこういった4技能を測っていかなければならないと考えていましたので、やっとだなという感がありますが、英語については、後ほどお話しされる布村先生からお話ししていただけると思います。英語科ではない方も、きっと参考になりますので、ぜひ見ていただきたいと思います。
そしてポートフォリオについては、近藤先生や鹿又先生から実践例をお話しいただきます。ポートフォリオを書くといっても、まず生徒が文章が書けない。100字を超えたらもうダメ、何を書けばいいのかわからない、という話を聞くことがあります。ポートフォリオの課題というのは、そういうところも含みますよね。そして、今日の全体のテーマである、ICTをどう活用していくかという点では、先ほどお伝えしたようなカリキュラム・マネジメントの視点が入っているのかどうかがの落としどころになります。授業の中で、今度の学習指導要領で大幅に拡大された思考力・判断力・表現力をどのように育てるか。これが、大きくいうと探究型の学習実践っていうところにもつながっていきます。これをもっと突き詰めていくと、教科横断型になります。ご存じの先生も多いと思いますが、理数探究ということになると、理科と数学の枠を越えなればいけない。歴史探究は、日本史・世界史を越えなければいけませんし、国語にも古典探究がありますよね。このように、「探究」がキーワードになっていきます。総合的な学習の時間も、「総合的な探究の時間」になるので、その探究の部分をどのように持っていくのか。それが、最終的にそれぞれの学校でどのような子どもたちを育てていきたいか、ということにつながっていくイメージだと思います。
ソフトやシステムはツール。それをどう運用するかが問題
また今日はいろいろなソフトやシステムが出てきますが、それらは皆ツールのひとつです。その中には、授業・教務だけでなく、校務支援ソフトもあります。教育委員会さんでは、その自治体単位で一括で入れられると思いますが、入れたものをどう活用していくか、というお話もこのあと先生方からしていただけると思いますので、ぜひ参考にしてください。うちは○○が入っていないからできない、ということでなく、入っているシステムをどう使って、どうつないでいくかというお話だと思ってください。
さてこちらを見てください。私がアクティブ・ラーニングについてお話しする時の最初のキーワードは、ヒマワリです。まさにヒマワリの花は、アクティブ・ラーニングの原点です。授業中、寝ないで顔をしっかり上げている。起きていること、つまりは生きていることですよね。しっかり皆さんもぜひ本日はアクティブに聞いていただければと思います。それでは、先生方よろしくお願いいたします。