令和2年度神奈川県高等学校教科研究会情報部会 研究大会より

導入テスト 正答・結果報告

神奈川県立住吉高校 山田恭弘先生

私からは、神奈川県情報部会が、毎年共通教科「情報」をはじめて履修する生徒を対象に行っている導入テストについて、今年度の実施結果をご報告します。

 

まず、導入テストについての概要です。対象は、今申しましたように、共通教科「情報」を初めて履修する学年。出題範囲は、中学校での学習内容と高校入学時知っておいてもらいたい内容を踏まえて、「情報の基礎」「情報と社会」「情報通信ネットワーク」「マルチメディアと計測制御」です。

 

出題形態は4択問題で、問題は50問、各2点の配点となっています。試験時間は40分です。今年度は臨時休校などの影響により、例年より集計数が少なくなっていますが、昨年度の集計結果と比較しながら報告したいと思います。

 


 

正答率が50%以下の問題には意外なものも

まず昨年に引き続き、正答率が50%以下の問題です。左の五つがそれに該当します。

 

USBの周辺機器との接続について述べている文を選択する問題は、正答率が43.8%、文書作成ソフトの画面で「余白」「ヘッダー」などの名称に関する問題が同じく43.8%でした。

 

表計算ソフトで、設定された計算式に従った時に表示される数字を答える問題の正解率が34.3%、ハイパーリンクの正しい説明を選ぶ問題が49.1%でした。

 


 

中でも著作権法の理解での問題では、違反行為か、違反行為ではないかの正しい組み合わせの正答率が33.8%、3分の2の生徒が理解できていませんでした。この問題に関しては、日々の行動の中で著作権を意識する上で重要なポイントになりますので、昨年に引き続いてこの問題の正答率が低いということは注目すべきと思います。

 

次に、昨年の誤答率が正答率より高く、今年も依然正答率が50%以下の問題が、「ドメイン名の理解」「光の三原色の理解」「アクチュエータの用語理解」の三つです。

 

今年は三つとも正答率が誤答率を上回りましたが、それでもまだ半分の生徒は正答できていません。特にアクチュエータの役割は中学校で学習する内容になっていますので、中学校技術科で扱う内容の理解の定着が不十分という点も背景にあるのかもしれません。

 


今年、新たに正答率が50%以下になった問題もありました。

 

「有害情報をブロックする方法」「計測制御の流れ」「身の回りのICチップ」の三つです。

 


 

有害情報をブロックする方法も、計測制御も、中学校での学習内容になりますので、その理解が十分ではなかったということになりましょう。ICチップの問題は、交通系ICカードについてよく知らないのか、あるいは「あてはまらないものを選ぶ」という設問を「あてはまるもの」と読み間違えてしまったかは定かではありませんが、意外な結果になりました。

 

ローマ字入力、拡張子は今年も誤答が正答を上回る

続いて、昨年に引き続いて正答率よりも誤答率が高い問題がこちらです。

 

「コンピュータの構成」はソフトウェアやハードウェアなどの働きの理解に関するものですが、正答率が25%に対して、最も多かった誤答の選択率が44.7%でした。

 

ローマ字入力の正しいタイピングを選ぶ問題が、正答率32.8%に対して同じく41.6%でした。

 


 

情報モラルとして最も正しい行為を選ぶ問題では、正答率が15.7%に対して、最多の誤答選択率が53.4%と過半数となっています。ここで注目したいのが、リンクやマナーモード、あとはデジタル万引きといったような行為について正しい理解ができていないことです。

 

インターネットでのネットワーク機器の役割も、正答率27.9%に対して誤答率が60.1%。電子メールでは、「TO」と「BCC」の理解が逆になっている生徒が多かった、というのも注目すべきかと思います。

 

最後の拡張子については、昨年のこの大会でも指摘されていましたが、今年もできていませんでした。

 

さらに、今年新たに正答率よりも誤答率が高くなった問題というものがありましたが、ここでも拡張子に関する問題ができていませんでした。拡張子の用語理解に関する問題が、正答率29,1%に対して誤答率42.2%。また、HTMLの理解についても、わずかながら誤答率の方が高くなりました。

 


 

インターネットの特徴理解は昨年より理解度アップ

昨年よりも正答率が上がった問題もあります。「コンピュータの五大機能」「光学式ドライブ」「インターネットの特徴」などについては、昨年は正答率50パーセント以下でしたが、今年は少しですが改善が見られました。

 


 

特に「インターネットの特徴」については、インターネットという目に見えないものの特徴を生徒が理解しているかどうか、ということが作問時の懸念としてありましたが、今年は正答率が90.1%となり、懸念を払拭する結果となりました。

 

ここまで、正答率が低いものや誤答が多いものを取り上げてきましたが、生徒が正しく理解している問題も多くあります。

 

例えば、「コンピュータでできること」では、人間の代わりにプログラムを考えて自動で実行するということは適当ではないということは理解できているようです。また、キーボードのshiftキーについてもよくできていました。私もこれについては授業で少し丁寧めに説明していますが、生徒達はわりにわかっていたのですね。

 

 

「情報の取り扱い」はエボラ出血熱を題材にしたものですが、いろいろな情報に影響されずに判断ができるかを見る問題でした。また、「情報セキュリティ対策」は、セキュリティの安全性を高めるIDやパスワードの設定で、これについてもよくできています。

 

「サイバー犯罪」、書き込んだ内容が位置情報から個人を特定される可能性があるといったものです。Webサイト上での料金請求、SNSと個人情報といった辺りも、生徒の理解というが進んでいることがわかります。著作権についても理解が上がってきています。

 

正答が微妙な問題というのも幾つかあります。こういった問題は、情報科として継続して身に付けさせていく必要があります。次期学習指導要領の実施に向けて重要になってくるところもあるかと思います。

 


 

目に見えることの理解は上がっても、目に見えないことには弱い

全体として、生徒にとって身近なことや目に見えることについては知識の定着が見られ、経験から考えられたり予測したりする問題の正答率が高かったと思います。

 

 

一方で、用語やハードウェア、ツール、コンピュータ内部の処理のような、目に見えないもの・見づらいものに対しての理解が乏しいことがわかります。

 

昨年度の傾向からそれほど大きな変化がなく、中学校の内容についても理解度は様々であること、情報モラルの面でも正しい行動ができてないということも、今回の導入テストからわかったと言えます。す。