第9回 情報科教員を目指す学生さんに向けてのガイダンス会 2020
「情報科教員を目指す学生さんに向けてのガイダンス会」は、情報処理学会「会員の力を社会につなげる」研究グループ(SSR)が、情報の先生になりたい大学生・大学院生と、高校現場の先生方とが直接交流し、応援するために毎年10月の第1日曜日に開催されています。
今年はオンライン開催で、全国から約50人が参加しました。
「学校現場の情報環境はどのような状態なのだろう」「授業のために必要なスキルは何ですか」「『情報I』は内容も量も盛りだくさんだけど、2単位で本当にできるのでしょうか」…
学生さん達からの質問に、高校現場のベテランの先生方、情報処理学会の先生方、国立教育政策研究所の鹿野利春先生が答えてくださいました。
今回は、先生方による座談会をレポートします。学生さんだけでなく、現在教壇に立っていらっしゃる先生も、ぜひご参考になさってください。
[第9回 情報科教員を目指す学生さんに向けてのガイダンス会 2020]
主催:情報処理学会 「会員の力を社会につなげる」研究グループ(SSR)
運営担当:情報処理学会 情報処理教育委員会
情報処理学会 「会員の力を社会につなげる」研究グループ(SSR)
後援:東京電機大学
[座談会]
モデレータ
田崎丈晴先生(東京都立富士高等学校附属中学校)
パネリスト
鹿野利春先生(国立教育政策研究所)
小原格先生(東京都立町田高等学校)
春日井優先生(埼玉県立川越南高等学校)
■私立と公立の学校ではどのような違いがありますか。私立・公立というより、学校によって異なるのでしょうか。転勤や部活の指導など、気になるのですが。
田崎先生:
私は、最初に同じ学校法人の中で複数の高校がある私学に2年勤務しました。私立学校は転勤がないと思っていたのですが、その2年間で、1年ごとに別の学校に勤めました。
また、私立学校は建学の精神に基づいて教育をします。ですから、私立学校で教えたいという人は、建学の精神や教育目標を詳しく調べてください。そこに共感できるかどうかということは非常に大事なポイントであると思います。
部活動について言えば、私が勤務した私立学校は、部活動は専門の指導員もいる学校でしたので、私が部活動指導に携わったことはありませんでした。公立学校に移ってからは、授業も部活動も経験しました。このような経験から、私立と公立の違いを感じました。また、キャリアを積んで校長になることを目指せるかどうかについても調べていただければ、私立と公立の違いはあるかもしれません。
■教員になるにあたって、非常勤にしようか、常勤の方がよいのか迷っています。先生方の 経験から、どちらがよいと思われますか。
田崎先生:
私は卒業後すぐ、情報科専任で採用されました。個人的な理由なのですが、奨学金の免除もかかっていたので、非常勤で経験を積んでからという選択肢は考えていませんでした。また、専任の募集があるかどうか、というのはタイミングによりますので、専任の募集があれば積極的に受けたほうが良いのではないかと思います。
■採用試験対策にはどんなことをするとよいのでしょうか。情報科教員の募集が少なく、 最近の採用試験の傾向などもわからないので、教えていただけるとありがたいです。
春日井先生:
首都圏で言えば、東京都は採用試験の過去問題がネットで公開されてます(※1)。神奈川県は、県政情報センターで閲覧できますし(※2)、埼玉県・千葉県もネットには明記されていませんが、閲覧やコピーは可能です。
ですから、いわゆる本屋さんで売ってる過去問集のようなものはありませんが、自分の足で稼げば、いくらでも手に入れられると思います。詳しい解説はないかもしれませんが、それを自分で作れるぐらいの力は持っておいたほうがよいと思います。
※1 令和2年度東京都公立学校教員採用候補者選考(3年度採用)問題・正答・配点
※2 神奈川県公立学校教員採用候補者選考試験 過去の試験問題の公開について過去の試験問題の公開について
田崎先生:
私は、採用試験の専門教養は、まず学習指導要領をよく読んで、学習指導要領に記載されている内容を実際に授業にしながら勉強しました。また、勤務していた学校で配られてた研修資料で、教育法規などに関わるものがあれば、参考にしました。
小原先生:
採用試験とは少し離れますが、鹿野先生は、もともと理科の先生ですよね。現在は調査官というお立場で、いろいろな教科科目のことを勉強されていると思います。その中で、理科というもと教科からご覧になって、一見関係なさそうに見えても、実はこんなところが情報科の指導に役立つということはありますか。
学生さんの中には、情報科の教員になるためには数学の教員免許も持ってないといけないのかと、心配される人もいるとも思いますので、そういったご経験からのお話をお伺いしたいと思います。
鹿野先生:
私はもともと教えるということをしたくて教員になったので、実は教科は何でもよかったのです。大学ではひたすら量子力学をやっていたのですが、高校の理科の授業には、実はほとんど立たないということで、勉強し直しました。
それから、教員になってからは、学校で教える以外に、例えば財団法人に2年間出向した時には、文化ホールの管理と文化行政もやらなければなりませんでした。その意味で、目の前にあるものに対して全力で取り組み、そして、周りの人といろいろ協力していくということが仕事の基本スタンスでした。
ただ、情報科を教えるにあたって、量子力学は勉強しておいてよかったと思いました。原理的なことが全てわかりますし、量子コンピューターや量子暗号の話も理解できます。大学時代には、原子炉や統計物理学といった辺りも勉強したので、今、統計やシミュレーションといったことに注目が集まっていますが、そういったこともわかります。皆さんも、今は一見関係ないことがたくさんあると思いますが、それでもいろいろ経験しておくのがよいと思います。
専門以外では、仏教の経典やキリスト教の聖書も読みました。この辺りのバックグラウンドがあると、外国の方とお話しするときに、特に彼らの宗教的背景がわかります。そういった、全く関係ないように見えることも実は大切で、目の前のものに一生懸命取り組むことを続けていくときに、いろいろな蓄積ができていくのだと思っています。
■情報科の先生と他教科の先生との関わり方について教えてください。新しい学習指導要領では、「教科横断」が一つのキーワードですが、他の教科とどのようなコラボレーションをされていますか。
小原先生:
コラボレーションは非常に大事です。学校の中で、情報科の教員は、スペシャリストではありますが、やはり学校という組織の一員です。他の先生と協調しなから、生活指導とか進路指導といった分掌を担っていくわけですから、まずは、そこをしっかりやることが重要です。
私の場合で言えば、情報科を担当しているのは、ある意味とても幸せなことだと思います。ネガティブに取れば、ICTに関する多くの仕事を一手に担当する、ということもありますが、私は逆に、それが他の先生方とのコミュニケーションのすごくいいきっかけになっていると思います。実際、私のところには、PCのサポートセンターのようにいろいろな先生が質問に来られます。そういった質問については、ボランティアの精神とともにお答えすることにしています。
もちろん、「それはあなたの仕事じゃないでしょう」と言われるかもしれませんが、他の先生方と仲よくするきっかけにもなります。一緒に仕事をするのであれば、やはり楽しくしたいですよね。それだけの知識をもっているのだから、自分ができることを出し惜しみしないで、みんなのために役立ててもらう。その代わり、自分も当然100%ではないから、いろんなところで困ることもあります。そういうときに、助けていただくこともあるわけで、お互いさまじゃないかなと思います。特に今回のコロナ禍
ではそれを感じました。
ですから、コラボレーションと言えるかどうかとなると、なかなか難しいですが、お願いされることをコミュニケーションのきっかけとして、いろいろな教科・科目で行われることを直にお聞きして対応していくことは、すごく大事なことだという気がします。
春日井先生:
今、小原先生から分掌の仕事のことをお話しされたので、私からは教科間の連携についてお話ししようと思います。
学生さんからの質問で、「数学をどれぐらいやっておけばよいか」というものがありましたが、情報科と数学科は内容で関わるところがあるので、「数学の授業で○○という内容をやったかどうか」というのを生徒に確認したり、数学の先生に「△△はいつ頃扱いますか」と聞いたりすることはこまめにしています。
今、私の授業では「モデル化とシミュレーションで」で乱数を扱っているのですが、数学でどんなことを・どの程度までやっているかを知っておくと、生徒がどんなことをしそうかというのは、何となくイメージがつくかなと思っています。
あとは、GISを使ってみたいと思っています。本校の社会科では、地理を1年生に置いていていますが、GISについてはあまり扱っていないようなので、情報科で取り入れたら面白いのかなと思っています。自分の教科で何をやるかというときに、他の教科の先生から情報を集めておくことが当然必要になってきますから、先ほど小原先生がおっしゃったように、いろいろな先生とコミュニケーションを取ると、得るものが多いかなと思います。
職員室の中で、他の教科の先生と、どんな授業をやっているかということを意見交換していると、そうか、その手があったか、という感じで、お互いにうまく乗っかり合うことに発展する場合が多いですよ。
小原先生:
内容的なものも、他の先生と話すきっかけになります。数学であれば、2進数や統計は、もうコラボレーションというより、「情報と数学のどっちが先にやるか」という話は、絶対にしておかないといけない。散布図や相関の辺りは「数学I」でも情報でも入ってくるので、「ここは情報で先にやってくれるとうれしい」「じゃあ、情報でここまでやるから、数学ではこんなふうにしてもらえるといいね」などと話し合ううちに、おもしろい授業のアイデアが出てくることがあります。
■文科省の教員研修用教材を見ると、「情報Ⅰ」でもなかなか盛りだくさんです。高校生は従来の教科に加えてこれらを学ぶわけですが、平均的な高校生が十分に消化吸収できそうでしょうか。
鹿野先生:
「情報I」についていえば、例えばプログラミングに結構時間がかかるのではないかという話があります。ただ、今回のプログラミングでは、コードを全部打ち込むわけではありません。この教員研修用教材でも、そのプログラミングのリストは付けてあって、それを変更して、内容を確認して、理解して使っていくという形です。
ですから、例えば一つずつマニュアルを読みながら打ち込んでいくとなれば、相当の時間がかかると思いますが、あらかじめ準備されたものを一番効率のいいやり方で使うというのであれば、それほどの時間はかからない。
具体的に、指導主事の先生を対象に、半日でプログラミングの初歩からモデル化とシミュレーションまでやってみたところ、まったく初めての人も含めて、ほぼ全員ができた、ということがあるので、そんなに心配はしていません。
ただ、その教え方とか内容、進め方とかについて、先生方自身は研究をする必要があります。いわゆる「やってみろ」というスパルタ式で写経のようにやらせると、ものすごく時間がかかって負担も大きいので、どうしたら効率よく、楽しく学ばせることができかということを考えていただきたいと思います。
春日井先生:
確かに、鹿野先生がおっしゃるように、何かプログラムを書くときに全くゼロベースで書くというよりは、「ネットにこんなライブラリがあるよ」「サンプルプログラムを自分なりにカスタマイズをして動かしてごらん」といったやり方がよいのかなと思います。
ただ、情報入試がどうなるかというのがちょっと怖いですね。入試科目になったとき、その出題形式や内容を見て、再度考え直さなければと思っています。
小原先生:
確かに、入試の影響は大きいと思います。それでも、生徒達を見ていて思うのですが、子ども達の学ぶ力や教え合う力はすごいです。一方で、当たり前ですが、つまらないことはやりたくない。だから、例えば問題解決を授業でやるのであれば、「自分がこういうことをやってみたい」というものを見つけて、それを好きに作っていくようにできればいい。やらされ感満載というのは避けたい、と思っています。
だから、すごく乱暴な言い方かもしれませが、例えばプログラミングであれば、いろいろ教える内容はありますが、ツールとして揃えておけばいい。大事なのは、教え込もうとするのでなく、それを上手に使いながら問題を解決できるような仕掛けを教員が作っていくということ。小・中学校は、ある程度教え込むことも必要かもしれませんが、高校は「実践的」というキーワードがあるように、それを使うことで、難しいけどすごく楽しい、おもしろいと言ってもらえるのが理想だと思います。
最近はプログラミングを当たり前のようにやってきている生徒が増えています。やはり小・中学校ですごく進んでいるのを感じますね。これで、新しい学習指導要領でしっかりやってきた人が入ってきたら、「そんなこと、小・中学校でやったよ」と言われないようにしないといけない。今はそちらのほうがちょっと心配です。
田崎先生:
先生として、何を引き受けて、生徒たちに何を任せるのかも、時間配分の中で工夫や見極めが必要になりますね。
小原先生:
生徒同士で教え合いをさせるのは、非常に有効であるし、楽しいと思います。もちろん時間は必要ですが、そういうことを上手にさせる中で学んでいけばいい。教員が全て教えなければならないと考えない方がいいのかなと思っています。
■情報機器に対する教育委員会の対応は、今後、柔軟になるのでしょうか。先日、小学校でのプログラミング教育ボランティアに参加したのですが、デスクトップ版のScratchのインストールが教育委員会から許可が下りないところがありました。先生方の都道府県の学校ではいかがでしょうか。
春日井先生:
Scratchの関係では、私の県では教育センターでScratchの阿部和広先生を招いての教員研修を何年か続けて行ったので、多分、大丈夫ではないかと思います。デスクトップ版のインストールの許可まではわかりませんが、これまでにどんな研修やシンポジウムを行ったか、ということである程度推測はできますね。
ソフトのインストールについては、昨年度私の学校でコンピューターの更新がありました。この仕様書が出ている頃に、ちょうど文科省から「情報Ⅰ」の教員用研修教材が出ていて、そこでPythonが結構扱われているというお話を、県庁の指導主事で調達のご担当の先生に相談したら、全県のコンピューターの仕様書に、Pythonをインストールすることを盛り込んでいただけました。担当の方のご理解をいただくというのが大きいような気がします。
小原先生:
ネットワーク自体にいくつか系統があって、基本的には、各自治体が用意しているネットワークを使うのですが、それぞれの自治体でセキュリティーポリシーがあって、新しいソフトをインストールするには、それに従う形になります。
私の学校がある自治体の場合は、例えばGoogleCromeはダメと言われていましたが、GoogleCromeの上で行うOffice365が入ってきたりといった形で、行政の方も緩やかに変わってきたりしてはいます。
もちろん、学習指導要領を遂行する上で必要なものについては、私たちもいろいろなチャンネルを通じて、「こういうことがあるからこれを使いたい」と発信するよう努めています。そうすると、行政は大体において理解を示してくれるケースが多いです。
ただ、行政も組織なのでルールが重要です。セキュリティーポリシーを変えるというのは、簡単なことではないと思うので、その辺りはルールを守った上で、行政の方に何とかしていただけたらありがたいと思います。
A先生(首都圏公立高校教員):
私の県では、高校のコンピューター教室のフリーのソフトについては、業者に頼めば入れてもらえる可能性が大きいです。本校もScratchはデスクトップではなく、古い版を入れています。
ただ、小中学校の場合は、市町村によってUSBが使える・使えないとか、インストールができる・できないといったいろいろな状況が変わってくるので、勤務地によってかなり差があるということは聞いています。
鹿野先生:
文部科学省では、「教育情報セキュリティーポリシーに関するガイドライン」(※)で、教育情報セキュリティポリシーの考え方及び内容について解説しています。これに従って、一般的な事務の業務とは異なった、学校の実情に合わせたセキュリティーポリシーを決めてそれを適用するところが増えてきています。逆に、今後1人1台端末を持つことになったときに、それを持っていないと授業は回らなくなりますので、今後、改善されていくだろうという希望を持っています。
田崎先生:
「『情報科の免許だけで採用がありそうかどうか』という質問に対して、『自治体による』というお答えでしたが、実例や見込みなどをご教示いただけませんでしょうか」という質問が来ています。こちらは、情報処理学会の中野由章先生が従来からまとめてくださっている「高校「情報」教員採用試験状況」(※)をご覧いただくとよいと思います。これを見ると、意外に情報科の免許だけでよい、という自治体が多いですね。
中野由章先生(神戸市立科学技術高校/情報処理学会初等中等教育委員会委員長):
おっしゃるように、今までは情報科以外の教員免許、いわゆる副免許を求められるところが一般的で、大阪府のように情報科の免許だけよくて、かつ、かなりまとまった数の採用をしてる自治体は本当に特異的でした。それが、2022年度から「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」になり、大学入学共通テストで情報も出題される方向で検討されるということを受けて、ここ2年で急激に情報科の免許だけでよいという流れになってきていると思います。
一方、実はつい先日、「副免許を求めていたときは、情報科以外の教科も担当できるので、柔軟に配置しやすいため、そこそこの数を採用していたのが、情報科免許だけでよいということになって、かえって採用数が絞られたのではないか」という指摘を受けました。これは、退職者数の関係もあるとは思いますが、かえってよくない状況になっているのではないかと危惧しています。それでも、必要な教員が未だにいわゆる免許外教科担任であったり、兼任であったりする教育現場が多く、それが解消されていない状況です。その状況については、いろいろ訴えたり、働き掛けたりする必要があると思います。
中山泰一先生(電気通信大学/情報処理学会教育担当理事):
免許外教科担任については、鹿野先生たちが調査されたこともありますが、4年ほど前の段階で、全国に約5000人の情報科の先生がいらっしゃる中で、情報科だけを教えている人が20%の約1000人、情報科以外も教えている人が大体4000人いる状態でした。
その4000人のうち、2500人は情報科の教員免許を持っていて、情報科と他教科とを兼務されているのですが、残りの約1500人、全体の約3割は、そもそも情報科の免許を持たない免許外教科担任であったと記憶しています。
ただ、これから「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」が始まり、大学入学共通テストに情報が出題されるようになってくると、より高度な専門性と受験指導が必要になり、免許外教科担任ということでは厳しくなってくると思います。
また、先ほど中野先生がおっしゃった、各県の教員採用状況ですが、現在47都道府県のうち44の都道府県で情報科の教員採用がされています。ですから、今後は情報の専門性の高い人が採用されていくという方向に行くのではないかと期待しております。
■来年から小学校の教員になる者です。小学校ではまだ、プログラミングの学習について詳しい先生がたは多くないと思います。その中で、情報科の免許を持つ小学校の教員にはどのような役割が必要でしょうか。また、中学校や高校の情報科・技術科の先生から見て、小学校では最低限どれほどの知識・技能を、子どもたちに身に付けてきてほしいと思いますか。
鹿野先生:
小学校では、プログラミングは「教科等の中で体験」ということで出しています。体験ということは、小学校全体に対して、「ここまでの知識、技能を付けてください」という要求ではありません。現状としては、小学校では、プログラミングだけを評価することはありません。体験するということですから、何か間違った命令をしたら間違った動きするとか、正しく命令するとうまく動くといった、いろいろなことを組み合わせて、いろいろなことができるということを、体験の中で学んでいくことを期待しています。
それを中学校では、技術や知識としてしっかりと学んでいくという積み上げになっています。例えば、小学校では「順次」「繰り返し」「分岐」でフローチャートを書かせるような、がりがりしたことをやることにはなっていません。学校によっては、その辺りをやらせてみるところがあっても、別にそれは止めないと。
繰り返しになりますが、基本的に教科等の学びを深めるために、体験としてやっていくというのが小学校のプログラミング、プログラミング的な思考を身に付けましょう、というところです。
春日井先生:
1年ほど前に、今年度から使っている小学校の教科書の展示会で、全社の算数と理科、国語の教科書を見てきました。ざっくり見た感じですが、算数で定番として載ってるのは、5年生で多角形を描く授業と、6年生の理科で、エネルギーの辺りの話として、センサーとLEDをつないでLEDを光らせるのにプログラミングを使う、というものです。そのほかは、教科書会社によって、できるだけプログラミングに触れる機会を増やそうと、いろいろな工夫がなされてました。
小原先生:
私は、これはすごくいい質問だと思います。高校の免許を持つ先生が、小学校、中学校で教えるというのは、すばらしいことです。中学校や小学校の先生方とお話しすることがありますが、自分たちがやっていることが、中学校や高校でどのように発展していくのかが見えないとわかりにくい、どういった授業につながるか知りたいという声を聞きます。
高校の免許を持つ先生が小学校の学習活動の具体的な内容を元に、それが中学校・高校のこんな学びや活動につながっていきますよ、と小学校の先生にお話しできるだけでも、すごく説得力を持つと思います。ですから、ぜひ、小学校でプログラミングを指導する中心メンバーのお一人になっていただけたらよいと思います。
田崎先生:
「先週、教育実習に行ってきました。そこでの情報の授業は、PowerPoint、Excelなどを教えていたのですが、今後これらのツールは、教えることはないということでしょうか」という質問が来ています。
まず、学習指導要領を基に考えますと、アプリケーションの操作方法を教えることが目的ではありませんので、ツールの使い方を教えるというのは、何のためにどのツールを使うのか、ということで、大事なのは学習内容だと思いますが。この辺り、先生方はどのように思われますか。
小原先生:
今の高校の生徒たちは、意外にWord、Excel、PowerPointが使えないので、何らかの形で指導していく必要はあると思います。ただ、今まさにおっしゃったとおりで、それが目的ではありません。これらのツールは手段であって、それを使って何ができるかが大事です。
私がPowerPointを教えるのは、70回の授業の中でおおよそ20分ほどです。Wordに至っては5分程度です。全ての機能の、全ての使い方をマスターさせることが目的ではないので、その程度触れておけば、あとは使いながら、わからない所は教え会いながら、生徒は基本的な使い方を身に付けていきます。
例えばExcelであれば、「モデル化とシミュレーション」のシミュレーションに使うこともありますし、あるいはデータ分析のツールの一つとして使うこともあります。もちろんプログラミングで使うこともあります。いろいろな問題解決の中でデータを持ってくるときには、CSVやExcel形式のものもありますから、それを処理するには、当然Excelの知識が必要です。そういったものに対するイメージを持つためには、最低限の使い方や機能は知っておく必要がありますが、それが主になってはいけない。それに尽きるという気はします。