FIT2021 (第20回情報科学技術フォーラム)公開シンポジウム
新学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テスト(令和6年度実施分)の出題教科・科目について
文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室長 前田幸宣氏
大学入学共通テストにおける「情報」出題に関する議論の流れ
私からは、令和6年度に実施する、新学習指導要領下の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)での、「情報」の現在における取り扱いについて説明いたします。
こちらが、これまでの政府における「情報Ⅰ」の出題に関する閣議決定等です。ご覧のように、平成30年6月の「未来投資戦略2018」で、共通テストにおいて「国語、数学、英語のような基礎的な科目として、必履修科目『情報Ⅰ』(コンピューターの仕組み、プログラミング等)を追加する」ということが提言されています。
また、同じ「未来投資戦略」の中では、「共通テストにおいて、コンピューター上で実施する試験(CBT)などの試験実施方法等について検討を進める」ともされてます。
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令和元年には、統合イノベーション戦略推進会議で、「共通テストで『情報Ⅰ』を2024年度から出題することについて、CBT活用を含めた検討」がなされ、本年6月の「成長戦略フォローアップ」では、「共通テストにおいて『情報』を2024年度から出題することについて検討を行い、2021年度中に結論を得るとともに、将来的なCBT活用の在り方について検討を進める」ことが閣議決定されました。
「大学入試のあり方に関する検討会議」の検討経緯
こちらは、「大学入試のあり方に関する検討会議」の検討経緯です。本検討会議では、英語4技能や記述式出題のあり方の検討を中心とした会議ですが、「2.検討事項」の(4)に「その他大学入試の望ましい在り方(ウィズコロナ、ポストコロナ時代の大学入試)」とあり、ここで新学習指導要領下における共通テストの取り扱いについて議論されました。
このため、この(4)が今回のシンポジウムのテーマと関連するところとなります。
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こちらは検討会議のメンバーの先生方です。国公立大学、私立大学、そして高校の先生方にも団体代表委員ということで参加していただきました。もちろん、大学入試センターもオブザーバーとして参加しております。
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こちらはあり方検討会議から本年7月8日に提言された内容を一部抜粋したものです。
1つ目の●は、新課程への対応、共通テストの科目構成の見直しに関することです。高等学校学習指導要領の改訂による「情報Ⅰ」の新設等に伴う出題教科科目の見直しについては、本年3月24日付で、大学、高等学校、関係団体等からの意見聴取の結果を踏まえた上で、大学入試センターとしての一定の結論が公表されました。
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本検討会議においても、「大学入学共通テストのセーフティネットとしての役割を重視し、科目の簡素化を進めるべき」、「新たに必履修科目となる『情報Ⅰ』を出題すべき」等、大学入試センターと軌を一にする意見が出されました(→2つ目の●)。
3つ目の●では、「大学入試センターが公表した一定の結論において、共通テストはPBT(紙ベースでの試験)で行う」とされています。また、「情報」については「問題の発見・解決に向けて、情報技術を活用する力を見る出題を工夫すること」が期待されています。さらに、「今後「情報」の出題が決まった場合には、各大学のアドミッションポリシーに基づいた活用が推進されることが期待される」とされてます。
令和7年1月に実施する共通テストは、CBTではなくPBTで実施するとされていますが、これまで大学入試センターでは、平成29年度から、とりわけ「情報」について、CBTを活用した共通テストの活用の可能性について、調査・研究を進めてきました。
一定の試験を実施するにあたってのデバイスや成果物の策定には至っておりますが、共通テストは注目度の高い選抜試験ですので、準備として相当きちんとした試行調査も必要です。さらに、当日のトラブルで実施できないということがあってはならない試験ですので、まずは、これまでセンター試験で培ってきた調査研究の成果を、個別大学入試の中でCBTを活用している大学への委託という形で、大学入試センターの協力を得ながら、調査研究を進めていきたいと思っております。
このスライドの一番下の●に、大学入試センターおよびこの検討会議の提言を踏まえて、令和3年夏に予告を通知する必要があるとされておりました。これが7月30日に発表された「大学入学共通テスト実施大綱の予告」です。
下図が令和6年度実施の大学入試に向けたスケジュールです。令和6年度の9月から3月の青い枠が、新学習指導要領に対応した最初の大学入試です。
大学には「2年前予告ルール」、つまり最初の入試の2年前に、個別学力検査および共通テストで何の試験科目を課すかということを予告する、というものがあります。そのためには、さらにその1年前に、大学に対して何が共通テストに入るのか、ということが知らされておく必要がありますので、先般7月30日に「大学入学共通テスト実施大綱の予告」の通知を発出させていただいたところです。
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大学入学者選抜協議会を設置
この予告の通知を作るにあたって、「大学入学者選抜協議会」を設置しました。以前は「大学入学者選抜方法の改善に関する協議」という名前の会議体で年に1~2回関係団体の方にお集まりいただいて、来年度の大学入学者選抜実施要項や、共通テスト実施大綱の策定等を行ってまいりましたが、今後、「中長期的かつ継続的な対応が必要になる事項」についての協議も行うということで、この協議会を設置いたしました。
この「中長期的かつ継続対応が必要となる事項」の具体的な内容には色々ございますが、例えば、前述の「あり方検討会議」からは、共通テストの基礎的な学力診断の可能性、あるいは現在1月に実施している共通テストは、毎年雪によるトラブルなどの発生に加えて、昨今のコロナ禍もございますので、12月に前倒しできないかといったことも、検討事項として議論してもらいたいという提言をいただいています。
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この協議会にご参加いただいているのが、こちらの皆様です。
今回、有識者や関係団体から推薦された委員のほか、入試における感染症対策を検討するに当たり、医療関係の3名の専門家の先生方にもご参画いただいております。
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令和7年度共通テストに「情報Ⅰ」を出題することを決定
こちらが、7月30日にお示しした「令和7年度大学入学共通テスト実施大綱の予告」および「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」の内容です。
3つ目の段落の中ほどに、大学共通テスト実施大綱において定める出題教科科目を、協議の結果、別紙1および別紙2の通りにすることとしたとあります。
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さらに、一番下には共通テストの出題科目の試験時間、それから現行の教育課程を履修した入学志願者に対する経過措置について触れられています。
試験時間とは、この「情報Ⅰ」も含めた各科目の試験時間をそれぞれ何分にするのかということ、そして経過措置とは、現行の教育課程を履修した入学志願者、すなわち浪人生への対応として、現行の教育課程に対応した経過措置問題を作るのか・作らないのかといったことについては、別途この選抜協議会で議論していただくことになります。これらの協議の結果、コンセンサスを得られれば、今秋を目途にお示ししたい※と思っております。
下図が今回の共通テスト実施大綱の予告の概要です。令和7年度の共通テストからは、6教科30科目から7教科21科目となり、「簿記・会計」「情報関係基礎」については出題せず、「情報Ⅰ」を新たに加え、試験形態は引き続き、紙ベースで試験を行うこととします。
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※「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱の予告(補遺)」(令和3年9月29日付け3文科高第701号)を大学・高校関係者に通知し、新たに出題する「情報Ⅰ」については、試験時間を60分、また、現行の教育課程履修者に対応した経過措置問題を出題することとした。
https://www.mext.go.jp/content/20210929-mxt_daigakuc02-000005144_1.pdf
FIT2021 公開シンポジウム講演より