第84回情報処理学会全国大会 イベント企画 「情報入試―共通テストと個別試験」
新学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストにおける「情報Ⅰ」について
文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室長 前田幸宣氏
令和7年度大学入学共通テストに「情報I」導入決定
私からは、令和7年度(※1)大学入学共通テスト(共通テスト)における「情報Ⅰ」の出題に関する、現在の取り組み状況について御説明します。
※1 入試の年度表示は、受験者が大学に入学する年度を示します。従って、「令和7年度大学入学共通テスト」は令和6年度の高3生及び高卒生が受験する令和7年(2025年)1月実施の共通テストを指します。
下図が令和6年度の大学入試のスケジュールです。新学習指導に対応した最初の大学入試になります。
入学志願者の保護の観点から、大学側が教科科目を変更する場合には2年程度前には予告する必要があるというルール、いわゆる「2年前ルール」があります。
そのためには大学も検討が必要ですので、そのさらに1年前には国において出題の方針を示す必要があります。ということで、令和3年7月30日に、令和7年度共通テストから「情報Ⅰ」を加えるということを、そして同年9月29日にはその「補遺」という形で、「情報Ⅰ」の旧教育課程履修者に対する経過措置などについて、補足的な通知を出しております。今回はそういったものを中心に御説明させていただきます。
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大学入学共通テストに「情報I」を課すことの背景
下図が共通テストへの「情報Ⅰ」の導入に関する考え方です。
最初の○で示されているように、高等学校においては「情報Ⅰ」は必履修科目として設けられています。政府が策定しているAI戦略でも、数理・データサイエンス・AIというのは、いわば読み書きそろばんである、として捉えられていることもあって、文理問わず全ての学生が身に付ける教養教育として、数理・データサイエンス・AIのモデルカリキュラムが策定されるとともに、その普及を促進するために、教育プログラムの認定制度も開始されたところです。
従って、国語・数学・英語と同様に、入試の過程でその能力を評価・判定していくこと、これが今後、大学において求められる時代だということが二つ目の○に示されています。
こういったことを踏まえて、新しい高等学校学習指導要領の下で学習した生徒が初めて受験をする令和7年度大学入学者選抜において、共通テストを利用して「情報」に関わる必須能力を評価・判定することができるよう、大学入学者選抜協議会における協議を経て、「情報Ⅰ」を導入することが適切である、という結論に達しました。
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令和7年度大学入学共通テストは「情報I」60分で実施
昨年7月30日に公表した、「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱の予告」の内容がこちらです。左が現行の共通テスト、右が新学習指導要領に対応したもので、「情報Ⅰ」が新しく入っています。
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こちらが「実施大綱の予告」の「補遺」ということで、9月29日に公表したもので、「情報Ⅰ」の試験時間は60分となっています。
「情報Ⅰ」は内容が高度ですが、必履修科目となっており、また試験時間については、どの科目においても現在最低でも60分となっていますので、そういったことも考慮して、新教科として60分の試験時間と決定しました。
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既卒生に対しては経過措置を実施
現行(令和3年度現在)の教育課程履修者に対する経過措置がこちらです。教科「情報」については、現在の高校1年生は「社会と情報」「情報の科学」のいずれかを選択必履修ということになっていますが、その方々が令和7年度共通テストを高校既卒者として受験する場合に、経過措置の問題を出すのか、ということについて、選抜協議会でも議論がなされました。
選抜協議会での議論の過程においては、以下の2案が示されました。
1つが、経過措置用の問題を作成し、その上で旧教育課程履修者には経過措置用の問題を課すというもの。そしてもう1つが、経過措置用の問題は作成せずに、「情報Ⅰ」を課す大学において、旧教育課程履修者が不利にならないよう配慮する、というものです。
この2つ目の「各大学において考える」という案については、例えば、現役生と既卒生の試験科目数の条件を合わせるために、既卒生には「情報I」を課さず、現役生は「情報I」を含めた科目群の中から得点の高いものを申請するという案なども示されましたが、かえって「情報Ⅰ」が「捨て科目」になる可能性もあり、共通テストに「情報」を課すことの趣旨に逆行するのではないか、といった議論もありました。
最終的には、「社会と情報」「情報の科学」に対応する経過措置問題を作成することがよいだろう、ということで選抜協議会での結論を得ています。
スライドにあるように、新課程の「情報Ⅰ」と、現行課程の「社会と情報」「情報の科学」の、目標・内容は大きく異なり、また現在の高校1年生は、共通テストの試験科目として課されるということを想定せずに履修をしています。
そういった意味から、従来の経過措置とは異なる点がありますが、以下の点を踏まえた上で、既卒者のうち、希望する者に選択可能な経過措置問題を出題することが適切であるということで、スライドの(1)から(5)が示されています。
(1)は、それぞれの科目の目標、内容に基づいて、入試センターにおいて、既卒者が選択可能な経過措置問題を作成する。また、これまで経過措置を行った他教科同様、経過措置の問題作成は1年限りの措置とします。
(2)として、得点調整については、大学入試センターにおいて専門家の意見を聞いて検討します。これは、次のスライドにもありますが、得点調整をするということは決定しています。
また、(3)として、大学入試センターは令和4年中、今年の秋を目途に経過措置を含む試作問題を公表する予定です。
(4)は、各大学が2年程度前を待たずに、可能な限り早期に大学入学共通テストにおける試験科目を決定し、ホームページ等で公表すること、としています。「情報I」の利用にあたっては、アドミッションポリシーに基づいて、どのような理由から「情報Ⅰ」を課すのか、ということを明確にするように努めるように、ということも示しています。
また(5)では、高校においては、既卒者になった場合には新たに「情報」の経過措置問題が出題されることについて、生徒の周知に努めるということが示されています。共通テストでは、この(1)から(5)を踏まえた上で、問題を策定するということになります。
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得点調整も実施
最後に、こちらが令和7年度の共通テストの得点調整対象科目です。いろいろな科目で経過措置がありますが、それぞれについて、条件によっては得点調整を行うことになっており、「情報」についても、「旧情報(仮)」と「情報Ⅰ」の間で得点調整を行う、ということになります。
現在の得点調整では、1万人以上の受験者があり、かつ、20点以上の開きがあって、それが科目の作りによって生じているものであることが認められれば、得点調整対象科目になります。こういった現在の方法も踏まえながら、大学入試センターにおいてどのような方法で得点調整をするかということを今後決定していく、という段取りになっています。
令和4年1月28日に、国立大学協会で、「大学入学共通テストは6教科8科目を原則とする」という出題方針が決定、報道されていますので、各大学においても、2年前予告のルールの範囲の中で出題科目について、今後明らかにされていくのだろうと思います。
冒頭に申し上げたように、国としては、「情報Ⅰ」は現代の読み書きそろばんとして捉えられるような、大変重要な教科科目という認識でおります。各大学において、アドミッションポリシーに基づいた設定がされることを期待しております。
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