New Education Expo2022
協働学習ツール「EDDiE」を使ったワークショップ
複数の文章の比較表を作ることで、情報の内容や質を文章中の「証拠」を軸に矛盾の理由を考える
ワークショップは、3人ずつのグループで行われました。
Google Chromeに置かれた各グループのEDDiEの分析スペースにアクセスし、簡単な操作練習をしてから、「低炭水化物ダイエット」「地中海ダイエット」などダイエットについて書かれたブログ等の3本の文章を約5分で読み、その後グループ内で話し合いながら、3本の文章とそれらの矛盾点について話し合います。
EDDiEの画面には「情報源」「参考にしている情報源」「主張」「証拠の詳細」など、その文章で述べられている内容についての着目点が準備されているので、それぞれの文章について「主張」や「証拠」を付箋の形のテキストボックスに記入していきます。そして、ほぼ同じ主張や証拠を同じ色のテキストボックスとしてカテゴリー分けします。
※クリックすると拡大します
分析の中で、「情報源」・「参考にしている情報源」と「主張」の内容の間にどの程度の関連があるか、「証拠」が「主張」をどの程度直接照明ができるかを考えて、それぞれのテキストボックスをつなぐ矢印の太さで関連度を表示します。「情報源」や「証拠」が「主張」と矛盾する場合は、矢印を点線で表示します。このように文章中に書かれていることを視覚化することで、「主張」が「情報源」や「証拠」にどのように裏付けられているかを俯瞰することができます。
さらに、各テキストの「主張」を裏付ける「情報源」や「証拠」の全体的なクォリティ(質)を楕円のマークの大きさや色で評価します。例えば、横長に大きい楕円は、参考とする「情報源」や「証拠」の数が多く、楕円が小さい場合はそれが少ないことになります。
また、情報源や証拠の質は楕円の色で表示します。黄色から緑のグラデーションで、緑が最も質が高い、ということになります。
これらの作業から、3つの文章がなぜ矛盾しているかを話し合い、それをふまえて矛盾を解消するためにはどうしたらよいかを考えます。
このように、複数の文章の比較表を作ることで、情報の内容や質を文章中に示された「証拠」を軸に矛盾の理由を協働学習の形で考えることができます。矛盾の理由を考えるのはなかなか難しいので、理由の候補となるタグも準備され、テキストボックスを作成するときに閲覧・選択・配置することができます。これによって、矛盾の理由をさらに精緻化する議論が可能になり、文章に書かれた内容を十分に踏まえ、統合した結論が導けるようになります。
ツールを操作する中で出てきた分析の観点を知ることが、矛盾の理由を考えるための素地作りになるよう設計されています。
「科学的な証拠の把握」のための基準を身に付けるために
今回のワークショップで使われたダイエットに関する文章は、高校生・大学生の授業向けに作られたものであるため、ある程度生理学的な知識の裏付けを必要とする内容もあり、初見としてはなかなか手ごわいものでした。しかし、EDDiEのシステムそのものは操作性もシンプルでグラフィックの要素も取り入れられており、また個別学習と協働学習の組み合わせも容易であるため、比較する文章のレベルを変えることで、より幅広い学年で取り入れることができるのではないかと思われました。
特に、大石先生のお話にもあったように、コロナ禍以降、生の徒たちの協働学習には「密」を避ける、という厄介な条件が加わっています。その意味でも、オンラインの協働学習として優れたツールであると思います。
インターネット上の情報はまさに玉石混交であり、その中から正しく・有益な情報を選択するためには、Computer Scienceの知識だけでは不十分です。情報学がInformatic Scienceであるからこそ必要な情報リテラシーのあり方を学ぶことができたワークショップでした。