共通テスト対策用の予想問題の作成
埼玉県高校情報研究会 研究委員
埼玉県高校情報研究会は、現在8名の研究委員で活動し、例年様々なテーマの研究を行って、それを年に1度発表するということを行っています。今年度は、昨年度公式に発表された大学共通テストを踏まえた授業内容を検討し、テストを行うという研究を進めています。そして、各委員で作成した共通テストの予想問題を研究委員会に上げて、そして報告を行うという内容となっています。
先行事例として、特に大学入試センターが、2020年11月に公表した「平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した大学入学共通テスト「情報」試作問題(検討用イメージ)」と、2021年3月に公表した「平成 30 年告示高等学校学習指導要領に対応した 令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目 サンプル問題(情報)」を踏まえた上で作成・検討を行いました。
研究の方針としては、研究員が各自出題の意図を精査し、作成した問題を研究委員会で一度揉んで、修正したものを各校で生徒に実施し、研究委委員会で検証するというものです。
出題分野は、学習指導要領の「(1)情報社会の問題と解決」「(2)コミュニケーションと情報デザイン」「(3)コンピュータとプログラミング」「(4)情報通信ネットワークとデータの活用」の4つの分野で行いました。
※問題の詳細はこちらからご覧ください
(1)情報社会の問題解決~著作権の問題はグレーゾーンにかからない作問が難しい
具体的な問題とその出題の意図、考察について述べていきます。
「(1)情報社会の問題解決」では2つの問題を作成しました。まず、予想問題1です。ここでは、多種多様な人々とのコミュニケーションがデジタル化された場合に必要な知識・配慮・工夫について考えさせることを意図しました。問題提起し、解決する流れの中で、知識や最適解を問うために、適切な会話文に埋められるキーワードを選ぶ、という形式の問題になっています。
こちらが作成した問題です。
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作問の手ごたえと、生徒の成績の考察です。
著作権はグレーゾーンにかからないような問題にするのが難しく、知識問題や、ある程度決まった形の問題しか作れないように感じました。また、著作権法の改正もたびたびあるので、直近で改正したものや改正の可能性が考えられるものは、その都度作り直す必要があり、出題しづらいかもしれません。
予想問題2は情報セキュリティの問題で、他人に推測されにくいパスワードを作成することに加え、その管理の方法や別の認証と組み合わせて、より安全に利用する方法を考えさせ、対策の意識を高めさせることを意図しました。パスワードに関する内容を会話文形式で解くという内容です。
こちらが実際の問題です。
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デジタル機器は、数年おきに媒体も変わってきます。そういったものに関して、随時問題文の入れ替えなどをする必要があると考えられます。
(2)コミュニケーションと情報デザイン~標本化・量子化・符号化の一連の流れと仕組みを理解することが重要
次に情報デザインに関する問題がこちらです。こちらは2021年3月公表の「サンプル問題」の第1問・問3の「コミュニケーションと情報デザイン」の問題の類題として作成しました。
サンプル問題の当該問題では、画像のアナログ情報をデジタル化する一連の流れを考える問題として出題されており、デジタル化のプロセスを理解するうえで非常に重要な内容となっています。
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今回作成した類題は、音のデジタル化を取り扱う問題として作成しました。単に暗記した言葉を答えさせる問題ではなく、デジタル化にあたって行われる標本化・量子化・符号化の一連の流れと仕組みを理解し、その場で考えて答えられるかを問う問題となっています。
(3)コンピュータとプログラミング~基本構造に対する知識・理解と、プログラムの流れを問う
プログラミングに関する類題がこちらです。
こちらも2022年3月公表の「サンプル問題」から、第2問「プログラミング」の問題の類題として作成しましした。
類題は、アーチェリーの得点の合計点や平均点を求めるプログラムに、連続同得点の場合は2倍されるスペシャルルールを実装する問題です。
プログラミングの基本構造に対する知識・理解と、プログラムの流れが理解できてないと解けないため、思考力を問う問題となっています。
こちらが問題と選択肢です。
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分岐命令が使われていないため、「奇数の場合はボーナス点とする」などのルールを入れて、分岐を考えさせることも考えられます。
また、この問題では何回その点数が入ったかということを配列Saihinchiで格納していますが、試行例を与えて、そのSaihinchiを計算して答える問題なども想定されます。
(4) 情報通信ネットワーク~生徒の身近な内容を問題に
情報通信ネットワークに関する類題です。実生活でネットワーク環境に触れる機会は多くありますが、その中で、通信速度の計算や、ストリーミング再生を題材にすることで、思考力・判断力・表現力を問う問題を出題することを意識して作成しました。
バッファやストリーミングの速度など、生徒が契約しているであろう通信プランなどを踏まえた上で解答する内容となっています。
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今回は、解像度を選択するところまでの出題となりましたが、例えば、モバイルデータ通信の月額契約が20GBである場合、動画コンテンツはどのくらい閲覧できるのかなど、各家庭で契約している条件等を踏まえて問題解決を図る発展的な出題も可能です。一方で、正確さを意識して作問することが求められるため、問題を精査することが必要であると感じました。
ネットワークに関する問題の2つ目は、主に無料通信アプリを意識して、情報通信ネットワークとセキュリティを扱ったものです。
セキュリティに関する内容は「社会と情報」でも扱っており、生徒にとっても身近な問題です。問題文を読みながら、実際の通信がどのように行われているかを学習できるような内容を作成しました。
そこにパスワード、通信プロトコル、ネットワーク、情報機器の脆弱性などについて考えさせる問題としました。
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一部で、用語等を知らないと解答できないものがあるため、初めて見た場合でも解けるような工夫や誘導を付け加える必要性があることがわかりました。
全般的に特にセキュリティに関する問題の正答率が低いため、この点を生徒にさらに検討させ、考えさせる必要があると思われました。さらに、生徒の通信の盗聴に関する関心が低いと考えられます。
WEBページ等がなぜ安全かなどを、口コミやレビューで判断している可能性が高いため、この点についても授業できちんと取り扱う必要があると感じました。
本年度の研究を通して、共通テストの予想問題を作成するとともに、共通テスト向けの対策授業などを検討する必要があると考えられます。
本年度以降、各校で、ここで作成した類似問題等を実施し、正答率や生徒の感想等を集めていこうと考えています。
第15回全国高等学校情報教育研究会全国大会(オンライン大会) ポスターセッションより