オンラインイベント 教科『情報』授業のあり方を考える ~共通テスト試作問題をうけて~
プロローグ 2025年度入試の最新情報
河合塾教育研究開発本部 本部長 富沢弘和
私からは、これまでに公表されている、共通テストの情報や大学の活用状況についてご報告いたします。
教科「情報」と大学入試をめぐる動き
これまでの教科「情報」と大学入試をめぐる動きをまとめました。
共通テストに関しては、赤字で示しているとおり、2020年11月に「試作問題(検討用イメージ)」が公表されました。
その後、2021年7月に正式に「情報」の出題が決まり、2022年1月には国立大学協会(以下、国大協)が「情報」必須の方向で扱うという基本方針を示しました。そして2022年11月、本日のイベントのテーマにもある「試作問題」とともに、問題の方向性や配点等が公表されました。これにより、共通テスト「情報」の出題に関する概要は、おおよそつかめる状況になってきました。
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試作問題は、2020年11月の「試作問題(検討用イメージ)」を含め、大学入試センターから3回公表されています。
2022年11月の「試作問題『情報』」では、旧課程生用の試作問題『旧情報(仮)』の問題も作成されました。また、これまでは試験時間、配点が設定された形式では公表されていませんでしたが、2022年11月の「試作問題」では、初めて配点が設定され、本試験を想定した大問構成で作成されています。
なお、2021年3月のサンプル問題、2022年11月の「試作問題」につきましては、河合塾が問題分析を行った結果をホームページ(※)で公開していますので、ぜひご参照ください。
※https://www.kawai-juku.ac.jp/exam-info/research/
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2025年度大学入学共通テストの概要
さて、あらためて、新課程初年度の共通テストについて確認します。
教科「情報」だけではなく、いずれの教科も新課程の科目に置き換わりますので、数学や地理歴史・公民では、出題科目が変更されます。さらに、数学②、国語では、試験時間が10分延長し、国語は大問が追加されます。そして「情報」の追加もありますので、受験生の視点から見ると、負担増を感じる変更がいくつか予定されています。「情報」と関連するトピックとしては、数学②で情報関係基礎の出題がなくなります。
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初年度に限って、旧課程履修者への経過措置が取られます。
「情報」については、旧課程生用の科目として、『旧情報(仮)』が出題されます。旧課程生は『情報I』も選択可能で、試験会場でいずれかの科目を選択します。
『旧情報(仮)』では、「社会と情報」と「情報の科学」のどちらを履修していても対応できるように、それぞれの科目の固有の領域については選択問題での出題となります。選択問題は、履修している科目に関係なく選択が可能です。「試作問題」では第2問と第3問、それから第5問と第6問といった大問2問分が、選択問題という扱いでした。
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ちなみに「試作問題」では、『情報I』と『旧情報(仮)』で、太枠の部分の問題がそれぞれ共通の問題として出題されました。共通部分は、『情報I』の65点分に相当します。本試験でも、共通の問題が一定量出題される見込みです。
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国立大学では「情報」必須の傾向
ここからは、各大学の新課程入試での出題科目の公表状況について確認します。
河合塾の調べでは、1月下旬時点で、174大学が部分的な公表を含め新課程入試での出題科目を公表しています。国立大学、次いで公立大学の公表が先行しており、国立大学では9割近くの大学が公表済みです。一方、私立大学の公表は1割弱にとどまっています。
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共通テスト「情報」の利用方法ですが、冒頭でも触れましたとおり、国立大学については、国大協が2022年1月に、国立大学の一般選抜では、現行の共通テストは5教科7科目を課すことを基本としていますが、2025年度入試からは、「情報」を加えた6教科8科目を基本とする、という方針を示しました。
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現時点での公表状況では、国立大学は、国大協の基本方針にのっとり、「情報」を必須とする大学がほとんどです。ただし、一部の大学では、選択科目として利用する大学もあります。また、大学内の一部の募集区分での選択科目としての利用や、あるいは入試科目として課さない、というケースもあります。
スライドに示している数値は、利用方法を公表している大学数を母数とし、その中に占める大学数の割合です。例えば、「必須科目として利用」では、「情報」の利用を必須としている学科が大学内で1学科でも該当していれば、カウントしています。要は、1学科でも「情報」を必須として利用する大学は94%に上るということです。
右の公立大学では、大学によって対応が分かれており、必須として利用する大学以上に、選択科目として利用する大学の割合が高くなっています。大学によっては「情報」を利用しないという大学も一定数あります。
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なお、国立大学の一部では、必須としながらも点数化しない、あるいは配点比率を下げるという大学もあります。
左上の北海道大学では、受験は出願資格として必要とするものの、点数化はせず、合否判定の成績同点者の順位決定の際にのみ利用するという形を取りました。徳島大学も同様で、点数化するのは2027年度入試からとしています。「情報」の試験科目導入にあたっては、スモールスタートの形を取る大学も散見されています。
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スライドでは、共通テスト「情報」の利用方法を国立大学、公立大学、そして私立大学と、3つに分けてまとめました。
先ほど申し上げたとおり、国立大学は原則必須ですので、国立大志望者は基本的に受験が求められます。そうなると、共通テスト「情報」の受験者数は20万人を超える規模になっていくと考えています。一方、公立大学は、必須科目か選択科目にするかどうかは、大学によって状況が分かれています。私立大学は、利用する場合は他教科との選択が基本となる見込みです。
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2025年度個別入試で「情報」を新たに出題する大学も
次に、個別入試での出題の状況を見ていきます。
まず、現在行われている2023年度入試において、「情報」を出題している大学は14大学にとどまります。加えて、出題大学でも、受験を必須として出題する大学は、現在はありません。こうした状況からも、現状では「情報」が入試で出題されているという印象は薄いのではないかと思います。
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では、こうした状況が、新課程入試以降どのようになっていくのかですが、共通テストで出題がされますので、個別入試での出題が大幅に増えていく可能性は低いと考えています。
ただ、共通テストの内容では物足りないと感じる大学、例えば情報系学部などで、プログラミング能力を深く問いたい、といった明確な意図がある場合は出題が想定されます。総合型・推薦型選抜も、基本的には一般選抜と同様と考えています。
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こちらは既に2025年度入試で、「情報」の出題を公表している大学です。
電気通信大学では、一般選抜の前期日程で、選択科目として「情報」を出題すると公表しています。また、総合型・学校推薦型選抜では、CBTを利用した「情報」の出題が予定されています。
広島市立大学では、一般選抜の後期日程で「情報」を必須科目として出題します。共通テストでも「情報」を課しますので、結果的に900点満点中500点が「情報I」の内容となります。
慶應義塾大学では、現在も、総合政策学部・環境情報学部の2学部で「情報」が出題されていますので、新課程以降も「情報」の出題を継続するという形です。また、出題科目には「情報Ⅱ」まで含むと公表されています。
その他にも、スライドの右下にまとめたいくつかの大学で、新たに出題が予定されています。
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新課程への移行に伴い、高校生の「情報」への取り組みも変化していくと思われます。「情報」に関するスキルを強みとする受験生も今後増えていくでしょう。それに合わせて大学入試での「情報」の出題状況も変わっていくと考えています。
オンラインイベント「 教科『情報』授業のあり方を考える ~共通テスト試作問題をうけて~」講演より