大学入試を中心とした情報分野の学力評価手法の検討シンポジウム2024
グループ4 実現性(Feasibility)
放送大学 辰己丈夫先生
グループ4は、評価手法の妥当性の検証を行います。我々はグループ1と2で作った問題や、グループ3でいろいろ試そうとしているシステムで、実際に試験を実行して妥当性を検証する、いわば実行部隊です。
メンバー3人ですが、谷先生はグループ1のヘッドですので、実質私と中野先生で進めています。
今回の模試の結果については、すでに植原先生、谷先生からお話があったので、私からは、次の模試はどうするか、ということについてお話しします。
今回の模試から浮かび上がった課題
まず、今回の模試の反省点を2つ挙げています。
高校の先生方からのご意見ですが、どのような問題かを知らないと、生徒に対して薦められない、ということがありました。また、生徒の受験状況や模試の結果を知りたい、という意見も聞こえてきました。
どんな問題かを知りたい、という件についてです。
まず、我々は「CBT/IRTの研究を実施したい」ので、問題を全部公開することはできない状況です。ですから、ここは本当に申し訳ない、と言うしかありまれせんが、先生がたのご意見ももっともです。
そこで、守秘義務保持契約(NDA)をしてくださった先生方に限って、一部の問題を閲覧可能にしました。そういった先生方は、しっかり協力してくださり、非常にありがたいです。
生徒の個別の受験状況・結果を知りたいということについては、冒頭で植原先生から説明がありましたが、研究倫理の観点から、非常に困難があります。
受験生の思想・信条や能力をそのまま計測して公開するということはできないからです。
参考にするものとしては、厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(※1)がありますが、ここでは、研究で使う場合にどういった倫理的な注意が必要か、公開してデータで使う場合に、どのような注意をしなければいけないのか、というルールが定められています。
結局、慶應義塾大学の倫理審査に通すために最終的に取った方針が、「受験者のメールアドレスを取得しない」ということでした。我々にとっては、誰かが分からなくなってしまう、というデメリットはありますが、こうすることによって、個人を特定しないで分析することが可能になりました。
ただし、メールアドレスを取得しないと方針では、例えば、「採点しました。あなたの得点のスコアはこうです」というお知らせをしたくても、受験者に直接連絡できないので、Webで公開するしかありません。そのため、受験の申し込みをする際に、「○月△日にこれを公開しますので、その日に見てくださいね」ということを、こちらから念押しして同意を取らなければなりません。
我々の方からプッシュして情報を発信できればよいのですが、その辺りが、メールアドレスを取得しなかったがために、うまくいかなかったということです。
また、高校の先生はご自分の生徒がこのEMIUの模試で何点取れたかということも、気になられるでしょう。生徒が自発的に自己申告してくれれば知ることはできますが、先生から生徒に無理やり得点を聞く、というのは不可能です。ということで、結局、生徒ひとりひとりの個別の受験結果については、現状が精一杯ということになります。
ちなみに、慶應義塾の倫理委員会には、対象、人数の募集方法、個人情報の扱い、データ保管期間、実施の方法、個人情報の扱い、データの保管期間、実施期間、実施方法、同意書、同意の撤回などの手順を申請しました。「同意の撤回」は、例えば「自分は模試を受けましたが、自分の結果は使われたくないです」と宣言されたら、そのデータを外すということです。
これについては、メールアドレスは取っていませんが、受験番号などを使って外せるようにしてあります。また、高校生は18歳未満の人もいますので、同意を取るときの注意についても配慮が必要でした。
EMIU情報模試2024-2025に向けて
ここからは、今後についてお話しします。
本日午前中に、プロジェクテトメンバーの打ち合わせを行って、次回の模試についてはこちらのスライドのように決まりました。名称は仮称です。
受験期間は、2025年2月15日土曜日から3月31日月曜日までです。方式は今回と同様に、インターネットにつながったパソコン等を利用したCBTで、TAOによる回答方式です。IRT用の問題は公開しないので、前回と同じタイプで実施します。
この模試のパンフレットも作成しました。後日、EMIUのサイト(※2)から、皆さんにお届けできるようにいたします。
また、次回の模試の実施についての依頼状も作成しました。各高校の先生方が、管理職の方に提出したり、生徒に勧めたりされる際にお使いください。
また、守秘義務契約を結んでくださった先生には、問題の一部をお見せできることを案内するパンフレットも作りました。問題をご覧になりたい方のためのご案内になっています。
※2 EMIU(大学入試を中心とした情報分野の学力評価手法の検討)プロジェクトホームページはこちら
次回の出題に関しては、プログラミングが出題されるのは確実ですが、それ以外については、ここではリークはしないでおきます。
高等学校の先生方、出版社の皆様、予備校など受験に関わる仕事をされている皆様には、今後もWebサイトの告知に注目していただき、情報拡散にご協力いただけますとありがたいです。よろしくお願いいたします。
大学入試を中心とした情報分野の学力評価手法の検討シンポジウム2024 講演