慶應義塾大学・総合政策学部/環境情報学部の「情報」入試に向けた学習法はこれだ!

2018年度のSFC情報入試はこれまでになく難しかったですね。本稿では入試のための効果的な学習方法について、考えてみたいと思います。

【学習の進め方】

1. まずは教科書を読む

 

情報で大学受験をしようと思ったら、まずは教科書レベルの内容を抑えておく必要があります。情報の授業は2単位と少ない割に、教科書は内容が盛りだくさんです。おそらく授業で扱っていない分野や学習項目もあるでしょうから、情報という教科がどのような分野で構成されているかという全体の枠組みを知り、それらをすべて網羅した学習をしておきましょう。

 

また、現状で情報科は「社会と情報」「情報の科学」の2科目から1科目を選択して履修することになっていますから、通常は片方の教科書しか手元にないはずです。教科書の内容にも偏りがあるわけですから、もう片方の教科書(または同レベルの書籍等)も入手しておくとよいでしょう。特に、SFC入試はアルゴリズムやプログラミングが重視されていますが「社会と情報」を履修した人はそれらの学習体験がないかも知れません。

 

教科書の巻末には著作権法などが資料として添えられていますから、これらも一通り目を通しておくとよいでしょう。ただし、教科書は内容が最新ではない可能性があります。例えば法律であれば改正によって条文が変わっているかも知れません。そのことを念頭に置いて活用しましょう。

 

2. 副教材や入門書で補う

 

教科書を補う意味でも、+αとなる教材が必要です。例えば、「最新情報トピックス2018(日経BP社)」などは内容に偏りがなく、また、最新情報で構成されていますから、安心して学習できる教材です。

 

基本的な内容が全体的に理解できるようになったら、応用・発展的な内容へと踏み込んでいきましょう。大学の教養教育で用いられているような情報の入門書(例えば、「情報 第2版: 東京大学教養学部テキスト(東京大学出版会)」)や情報処理技術者試験である基本情報技術者試験の入門テキスト(例えば「平成30年度 イメージ&クレバー方式でよくわかる栢木先生の基本情報技術者教室(技術評論社)」)などが効果的です。

 

3. 最新情報にアンテナを張る

 

情報では新しく出てきた用語や概念が必ず出題されます。そのため、常に最新情報にアンテナを張る姿勢を持つことが必要です。新聞、ニュースなどの最新情報には注意し、はじめて聞く用語などはノートに記録したり、パソコンにまとめたりしながら理解を深めていくといいでしょう。その際、「コト(https://kotobank.jp/)」などの検索エンジンの活用は効果的です。それらは、単に用語の意味を知るだけでなく、関連用語を表示してくれますから、一つの用語をきっかけに、知識を広げていくことができるでしょう。また、よくわかるIT用語集(http://it-yougo.com/all-list/)など用語集の一覧を見て、自分の理解していない用語をチェックするのもよいでしょう。

 

情報関連の用語は、アルファベットだけだったり、短縮された言葉の組合せであったりすることが多いです。これらを機械的に暗記することは大変です。必ず元の意味(特に英単語は)を同時に理解するようにしましょう。意味がわかれば問題の中で、類推することができるのです。例えば「フィンテック」という言葉がありますが、これは金融(finance)と技術(technology)を合わせた造語です。このことがわかっていれば、意味を選びなさいという問題の中で、正解が絞れてくるのです。2018年度の環境情報学部でも「フレーミング」という言葉が出ているのですが、言葉を調べる際に、framing(枠組み)とflaming(燃え上がる)の2つのつづり(意味)があることを抑えておけば、正しく活用できるでしょう。

 

また、SFC入試では各省庁などが出す白書からも多くの出題があります。これまでも情報通信白書、情報セキュリティ白書などから出題されていましたが、2018年も情報通信白書と消費者白書から出題されました。これらは首相官邸のWebページにまとめてPDFで公開されています(※)から、必ずチェックしましょう(※ https://www.kantei.go.jp/jp/hakusyo/index.htm)。

 

これら白書の多くはページ数が多く、すべてを読むことは現実的ではありません。そこで、白書の情報に関係する箇所だけを抜き出して読んだり、目次に書いてある用語を抑えたりするだけでも効果があります。実際、総合政策学部に出題された「シェアリングエコノミー」などは29年の消費者白書の目次で頻出していました。

 

4. アルゴリズムとプログラミング

 

用語は最新のものが出題されるのに対して、アルゴリズムやプログラミングの問題は、いわゆる古典と呼ばれるものが題材となっています。これらを学ぶための書籍は、アルゴリズムだけを学ぶもの(例えば「アルゴリズムパズル-プログラマのための数学パズル入門(オライリージャパン)」)や、アルゴリズムとプログラミングと同時に学ぶもの(例えば「[改訂新版]C言語による標準アルゴリズム事典(技術評論社)」)など種類も豊富です。

 

まずは「定石」と言われる問題を解きながら、アルゴリズム的な思考を深めていきましょう。解けないからないからと言ってすぐに答えを見るのではなく、じっくりと考えていくことが必要です。もしも上記の本の問題を半分でも自力で解くことができたら、もう受験勉強する必要はない程度に実力が備わったと考えていいでしょう。

 

毎年そうですが、今年も問題を解くカギは、両学部とも変数と配列とを適切に定義することでした。問題文と穴のあいたプログラムから変数と配列を定義をすることは難しいのですが、これが正しくできれば、以下の問の答えが見えてきます。逆に誤った定義をすると、それ以降の問は全滅します。特に、今年の総合政策学部の問題(迷路を探索するアルゴリズム)では、集合を変数として定義する必要がありました。この考え方は多くの受験生を悩ませたのではないでしょうか。また、カウンタ変数と配列に格納されたデータとを適切に対応させるにも、深い思考が必要でした。これらを試験時間内にできるようにするには、かなりのプログラミング経験が必要であったのではないかと思います。

 

受験対策としてプログラミングをする必要があるかどうかは、意見が分かれるところかも知れません。実際の試験ではプログラミングができるわけでなく(=試行錯誤ができない)、すべて自分の頭で考える必要があるからです。ただし、プログラミング経験はできるだけたくさん積んでおきたいものです。

 

(間辺広樹/神奈川県立柏陽高校)

 

【オススメの参考書・問題集】

情報関連の様々な経験・知見を得ている学習者と、情報関連の知見などが浅い学習者では学習法が異なるため、学習者を何パターンかに分類し、オススメの参考書・問題集の学習法を紹介します。なお、教科書「社会と情報」「情報の科学」の両方を揃えることが容易でない場合も踏まえ、教科書を基本としながらもその上のレベルの教材を学習することでカバーできるようにしました。

 

1.情報関連の様々な経験・知見を得ている学習者

 プログラミング経験・データベース利用経験がある高校生

 

これらに該当する生徒はプログラミング、またはデータベース、あるいはその両方に関しての問題が出題された場合正解する可能性が高いため、むしろ法務をはじめとして情報処理試験の計算問題や知的財産権などの知識問題で得点を落とさないような学習からはじめるとよいでしょう。

 

2.情報関連の様々な経験・知見が普通レベルの学習者

 法律関連問題を得意とする学生・あるいは数学が得意な高校生

 

法律関連問題を得意とする学生はあまり見られないが、数学が得意な高校生は、プログラミングやデータベースの利用経験がなくとも、計算問題や知識問題を確実に得点源としたいため、法務・データベース・プログラミングなどの情報関連基礎から学習したいところです。なお、(下記に挙げたリストのうち)レベル1の教科書「社会と情報」「情報の科学」は読書感覚で2、3回繰り返すだけで、次のレベル2の「ITパスポート試験教科書(付属問題集)」から学習を始めてみてください。

 

3.高校の情報について

 

計算問題おすすめ参考書であり、法務・データベース・プログラミングなどの情報関連基礎のおすすめ参考書である、レベル1の教科書「社会と情報」「情報の科学」をじっくり理解するところからスタートしてください。「情報の科学」の方が、「社会と情報」よりも学習範囲が広いため、「情報の科学」を学習するのがおすすめですが、「社会と情報」を選択している高校の方が多いため、「情報の科学」の教科書が入手できないか高校の先生などに尋ねてください。「社会と情報」の教科書しか手に入らない場合、「社会と情報」の教科書の内容を完璧にしてレベル2の学習をすることでカバーしましょう。また数学の復習が最終的に情報入試攻略に大いに役立つため数学の勉強は怠らないようにしましょう。

 

 

◆計算問題おすすめ参考書

 

2の補数表現をはじめとして高校の数学では学習しない情報の数式計算を勉強する必要があります。以下の問題集をお勧めします。

レベル1教科書「社会と情報」「情報の科学」

レベル2『情報処理試験の計算問題ドリル』坂下夕里

レベル3『情報処理試験の計算問題がちゃんと解ける本』坂下夕里

 

◆数学おすすめ参考書

 

基本的に高校生自身が使用している参考書を使用して良いのですが、分野特化することにより得点を安定して得たいなどがある場合には、分野特化問題集をお勧めします。

レベル1 河合出版『場合の数と確率』

レベル2 河合出版『データの分析』あるいは河合出版『数列』

レベル3 河合出版『確率分布と統計的な推測』

 

◆法務・データベース・プログラミングなどの情報関連基礎

 

レベル1 教科書「社会と情報」「情報の科学」

レベル2 ITパスポート試験教科書(付属問題集)

レベル3 基本情報技術者教科書(付属問題集)

レベル2・3に関しては、様々な参考書があるため自分の学習に合う教科書問題集等を選択しましょう。

 

◆追記:以下も活用しましょう。

*つい最近始まった、情報セキュリティマネジメント試験の参考書問題集

*センター試験「情報関係基礎」の問題(インターネットなどから入手)

*情報入試に関するプレ問題・過去問などの問題など

 

 (小野真太郎/慶應義塾大学)