デジタル教材をどう使う? 教科別に意見交換
「デジタル教材でe授業」~授業力向上を目指して~
大阪私学教育情報化研究会第1回大会
全体会
「各教科の実践はどんなもの?」質疑応答と意見交換会の共有
各教科の分科会で出た話題と、全体会での発表を紹介します。
【数学】
[東海大学附属仰星高校の実践事例の発表]
・iPadは今年中1の全クラス、中2で 1クラスで使用している。教員は約90%が所有。Air PlayでiPadの画面を拡大表示して使っている。ほぼ全教室でiPadを使える環境にある。生徒にiPad使わせることで、スピード感のあるインタラクティブなやりとりが可能になっている。
・Appleの教員サイト「iTunes U」を活用している。その中の「Explain Everything」は動画を簡単に作ることができるので、教科書の画像を取り込み、余白に解き方を書き込んでいく過程を撮影して、問題の解き方の動画を作ることができる。
さらに、それをiTunes Uに載せて、必要な生徒に権限を与えて見せることで、理解が弱い点の補習ができる。動画を1本を1時間程度で作ることができ、特別な撮影機材等も必要ない。
・若手の教員に、授業での活用事例を他の教員とシェアするための「iPad通信」を作ってもらい、教員同士で共有している。
[分科会のディスカッション]
・教科書については、英語のように教科書自体にいろいろな機能を求めるのではなく、板書の手間を省略するために使うことが多い。グラフなどは、アプリの性能がよいので、教科書に機能を求めていない。教員用のデジタル教科書は使い甲斐があるが、生徒用は費用対効果の点でも、あまりメリットはないと思う。
(一方、デジタル機材については、「生徒が書いていることを先生の手元で一括して見る or 一斉にホワイトボードに投影する」という機能は、参加した先生全員が「使っている(ぜひ使いたい)」と言っていた)
・単元によって、デジタルで説明した方がよいところとそうでないところがある。例えば、ベクトル方程式はデジタルの方がわかりやすい。ただし、全て動画などで見てわかってしまうのではなく、最終的には頭の中で組み立てて考えられるように導くことが必要だと思う。
【国語】
・デジタル教材の最大のネックは、現代文の著作権。現代文のコンテンツが欲しいとあちこちに言っているが、著作権がネックであらゆる試みが止まっている。どこからも出てこない。現代文コンテンツがとにかく不足している。コンテンツは古文・漢文が先行するしかなく国語科内での取組差異が拡大している。
・古文の本文投影は、圧倒的にデジタルが早くて効率がよい。しかし学年によって生徒の要求レベルが違い、高2は高1での使い方では満足しない。もっと上に行きたがるし、授業スピードも速くなる。判読もいちいち止まらず一気にいく。それに対してまだデジタル教科書の機能は画一的だ。先生方から様々な機能の要望が出てくると思うが、基本機能・共通機能としての「映す、書き込む、保存する」を徹底してもらいたい。
・従来型の授業の全てをデジタルに担わせるわけではない。著作権と直接ぶつからない、思考のアウトプットや成果物の蓄積、学んで作ってみた履歴といった領域をデジタルに蓄積する方向も考えてみた方がよい。
・国語での実践例はまだ少ないので、実践例の交換の場がほしい。
【英語】
・英語科は、教科の中でICT化が最も進み、タブレットや電子黒板の導入も進んでいる。デジタル教科書を使うと、授業がスムーズに進み時間が大幅に短縮できる、生徒が前を向いて声を出すようになるなど、望ましい効果が表れている。
一方で、生徒に授業の中でどのような目的で何をさせるかという授業設計や、進度をどのように調整するかが課題。
・ICT教育の推進は、個人ではなくチームで動くことが大事。研修や研究会に出席したら、その人が学校にフィードバックしてシェアできる機会が必要。グーグル内に意見交換をできるフォーラムを作ることも考えている。
・デジタル教材に頼り切りになるのでなく、生徒の「つかみ」や気分転換に使うと効果的。PPTのフラッシュカードやクイズで、視覚的な情報と引きつけてめりはりをつけることもできる。
・英語科は教科書もいちばん進歩していて使い易いが、教科書によってによってレベルの違いを感じる。
・市販の教材と、目の前のクラスの状況の齟齬をどうするか、という問題もある。
・先生の自作の教材は、できるだけ共有するのがよいと思う。
【理科】
・デジタル教科書の利用としてよく使っているのは、紙ベースの教科書の図録・資料集の拡大提示。また、危険な実験や結果がうまく出ない実験の時に動画で見せることも多い。その意味で、実験の 動画がもっとあるとよい。
→実験動画やアニメーションは自作しているが、かなり時間がかかる。
・共通認識として、高校理科のデジタル教科書はまだまだ充実していないと感じている。会社によって操作性に差がある。全てデジタルにする必要はない。特に、本文は紙の教材でもよい。理科に必要なものは画像や動画など資料集のようなもの、あるいは各分野導入部分の基本理論の動画。導入が理解できれば問題演習もスムーズになると思う。
・現状のデジタル教科書は、ICTのC(=communication)が足りず、一方的。双方向の協同学習、体験をもっと重視したい。その意味で、解答がすぐ出るのでなく、段階的に出るようにしてほしい。
・デジタルデバイスを活用することで、個人演習・グループ演習の時間を多めに取ることができるようになった。その結果教員の解説時間は減ったが、生徒の理解力は増していると感じる。
【社会】
・デジタル教科書はあまり普及していない。資料集・素材集という形であれば使いたいと思うが、現状のデジタル教科書の内容では面白味がない。生徒に興味を持たせるための奇抜な工夫がほしい。知識教科で一斉式の授業スタイルが多いため、ICTのCommunicationの部分を取り入れていくためには、授業デザインの見直しが必要だと思う。
→[教科書会社から]資料集に関して言えば、権利関係のハードルが高い。特に、寺社関係が保有
する著作物は、著作権処理が非常に難しいと思う。
・文化庁の「国指定文化財等データベース」もよい。文化財の写真が載っている。
http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index_pc.asp
・ゲームを活用すると理解が進む。
日本証券業協会の「株式学習ゲーム」=バブルの説明がしやすい
http://www.jsda.or.jp/manabu/curriculum/game.html
国税庁の「税金カニ博士のゲームDE TAX」
https://www.nta.go.jp/osaka/shiraberu/gakushu/detax.htm
・ 生徒は情報活用能力が低く,グラフや表の読み取り方が非常に苦手なので、グラフをスライドにしてアニメーションなどで説明すると理解が進む。
・教員はこの国・地域の隣には何があって、というのを頭で想像しながら説明しているが,生徒は今見ている地図(エリア)の隣がどうなってるとかを想像できないので、スライドさせてつなげて見せると理解しやすい。
・Google Earth、Google マップ、Googleストリートビューは非常に有効。現地をイメージさせることができる。地形画像等も有効。
【情報・技術家庭】
・学校によってタブレット等の導入状況は様々。一人1台持つようになったところは、これからいろいろできそうだが、一方で一部分だけ導入というところもある。例えば、1クラス12台のタブレットをどのように使い回すか。
・自前のタブレットであればデータはタブレット本体に保存すればよいが、回して使う場合、特にグループに1台という形で使う際には、データの管理が難しい。デバイス本体に残すのは問題が大きいが、クラウドを使うのは、学校の環境では難しい。
・プレゼンに関して言えば、タブレットでは資料を作るのに文字を打つのは難しい。しかし、生徒のしゃべりは上手になったと感じる。
・どんな力をつけたいかを改めて見直すことが必要。紙とペンの時代にできていた力が低下するのはよくないと思う。ネットトラブルの対策も必要。
・ICTの導入にあたっては、とにかく教職員の理解を得ていくことが大事。まず大人が使ってみて感動することが重要だと思う。