研究
情報科における「観点別学習状況の評価」の評価方法
~eポートフォリオを活用し、『何が・どのように役立つか』が実感できる授業を
東京学芸大学 森本康彦先生
生徒の学習成果をいかに評価するかは、教科学習の大きな課題です。特に、情報科で育成される能力は、ペーパーテストなどの客観テストでは測定することは難しく、また最も重要な実践力を測ることができないという問題を抱えています。情報科の授業の特性や環境を生かして、生徒の学習状況について体系的に情報や証拠を収集検証する「アセスメント」を授業の中に効果的に埋め込み、生徒の理解や能力に合わせた授業活動と、継続的・効果的な観点別学習活動評価を行う方法について、東京学芸大学の森本先生にお話しいただきました。
eポートフォリオが授業を変える
観点別学習状況の評価では、それぞれの単元の目標に沿って「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」などの観点で評価を行いますが、特に情報科では、この評価はアセスメントそのものであり、学習と切り離して行うべきではありません。
多面的にアセスメントするために、学習の記録・成果・作品などを一定の観点から集めたファイルによるポートフォリオを用います。ペーパーテストとは異なり、学習活動のプロセスを通した継続的な成果物や学習履歴のデータすべてが使われるのです。ここに、情報科ならではの特徴が生かされます。
情報科の学習の記録や成果、作品はすべて電子化されているため、生徒の学習活動がそのつど記録され、教育目標に向かってどの程度達成されているかがデータで把握できます。これがeポートフォリオです。教師は、このeポートフォリオを分析することで、生徒に合わせて足りない部分を補ったり、強い部分をさらに伸ばしたりするように、活動や教材を工夫することが可能になります。
情報科でこそ可能な、「21世紀型スキル」の育成
教師が自分で教えたことを、テストで評価するという従来のやり方では、情報科の授業はつまらなくなるだけです。
ICT環境が整備されてくれば、極端に言えば、知識を教えるのは教師自身でなくてもいい。うまい講義を映像で見せればよいのですから。それでは、教師の役割は何かと言えば、それがアセスメントです。
そのために、評価項目のルーブリックをきちんと作り、eポートフォリオを駆使して、個々の生徒に応じた授業設計を行う。一人で正解を出すのではなく、グループで試行錯誤させたり、相互評価させたりするアクティブラーニング型の授業も、情報科の問題解決学習なら毎回可能です。生徒は、授業活動を通して課題発見・解決のプロセスや多様な意見の受容など、まさに21世紀型スキルを発揮する場面ができるのです。教師は、授業支援のファシリテーターとして、生徒は自分に何が身につき、それがどのように役立つのかを体得させるのが肝要です。それによって、生徒や保護者に対する説明責任を果たすことができるのと同時に、授業の質の向上にも役立つことになるのです。
※本記事は、日本情報科教育学会第6回全国大会(2013年6月29日・30日、東海大学 高輪キャンパスにて)でのポスター発表でお話しされた内容です。